*柴日記*
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#568 [向日葵]
フッと気を失ったのを見て、顔をあげれば、あと1人いたのを忘れていた。
しかし明らかにビビっている。
1歩近づけばビクリとし、しかし歯を噛み締めるとかかってきたので、素早く身を屈めた祐子は立ち上がるスピードに任せて顎目掛けて拳を向ける。
痛さによろめいて口元を抑えた手の隙間から、血が滴り落ちている。
口の中を激しく切ったのだろう。
祐子は地面に倒れている1人の女子の腰辺りを踏みながら冷酷に笑った。
「リベンジいつでも受けてやるよ。ただ偉そうな事言う前に、腕を磨いておくんだな」
:08/09/09 01:48
:SO906i
:☆☆☆
#569 [向日葵]
最後に一蹴りして、祐子は去って行った。
祐子は本当は喧嘩なんてするつもりは無い。
自由に自分らしく生きていけば、反発する人がいて、それにのっかるように、面白がるように攻撃してくる人がいるのだ。
そしてやがて人数が増え、周りは敵ばかり。
いつ何が起こるか分からないから、祖父がやっている合気道教室に通い、兄が趣味でやっているボクシングを教えてもらい、とどめに父がやっている柔道の道場で修行を積んだ。
あとは自己流で色々な技を編み出せば、最強祐子の出来上がりと言う訳だった。
:08/09/09 01:53
:SO906i
:☆☆☆
#570 [向日葵]
しかし敵がいなくなればいなくなる程、彼女に近づく人間もいなくなっていった。
今度は噂の一人歩きや陰口がつきまとう。
自分らしく生きていく一方で、彼女は人とも孤独とも闘い続けていた。
教室に入れば、やはりと言うかもう誰もおらず、差し込むオレンジ色の夕日がただただ眩しかった。
私はなんの為に生まれてきたのだろう……。
何故こうでしか、生きれないんだろう……。
考えればキリがない事は分かっているので、鞄を持つと足早に教室を去った。
:08/09/09 01:57
:SO906i
:☆☆☆
#571 [向日葵]
下駄箱で靴を替えて、歩き出そうとした時だった。
「うわぁぁぁっ!」
頼りない叫び声と共に色々な落ちる音が聞こえる。
祐子は既視感を覚えてそろりと音がした方を向く。
するとやっぱりと言うか、鞄を投げ出し、ファスナーがちゃんと閉まっていなかったのか、中身が四方八方に散らばっている。
そしてその鞄の主は、ありえない格好で転んでいた。
奇跡としかいいようがない頭に上靴が片方乗っている姿は、可笑しさを通り越して呆れた。
「おい……」
とりあえず声をかける。
:08/09/09 02:03
:SO906i
:☆☆☆
#572 [向日葵]
青年は起き上がると辺りを見回し、吹っ飛んでいた眼鏡をかけると、祐子の方を見た。
やっぱり……。
今日本をぶちまけていた青年だ。
青年はへらぁっと笑った。
「あぁどうも。また会ったね」
「どんくさいにも程があるだろお前」
頭に乗っていた上靴を取って顔の前に出す。
「色々考え事してたら足が滑っちゃって」
アハハハと笑うこののんびりさはどこからやって来るのだと裕子は目を半目にする。
:08/09/09 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#573 [向日葵]
青年はよいしょと立ち上がろうとして固まる。
「……どうした?」
「足が痛くて立てないみたいなんだぁ」
またアハハハと笑う。
……コイツある意味すげぇ……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちゃんと乗ったか?」
「アハハ、ごめんね迷惑かけてー」
まったくだ……。
立てない青年を放っておく訳にもいかないので、祐子は青年をおぶる。
:08/09/09 02:10
:SO906i
:☆☆☆
#574 [向日葵]
「力持ちだねー」なんてのんきに背後で喋るものだから祐子はイラッとした。
なんであたしがこんな目に合わなくちゃならないんだっ!!
ふと、前に突きだしている彼の手を見れば、綺麗な白い、けれどしっかりした手だった。
祐子の手は、毎日生傷が絶えない。
残ってしまうだろう傷痕だってある。
こんなどんくさい奴と、自分と、一体何がどう違うか、祐子には分からなかった。
保健室に着いたはいいが、中には誰もいなかった。
置いてあるホワイトボードには“職員室にいます”と記されている。
:08/09/09 02:16
:SO906i
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#575 [向日葵]
待っていてもいつ帰ってくるかなんて分からない。
ならばさっさと手当てをして帰ろう。
「座れ」
素直に座った彼の近くにある救急セットから湿布と包帯を取り出す。
靴下を脱がせば彼の足首は見事に腫れていた。
「くじいたみたいだな。とりあえず後で病院行けよ」
「病院はやだなー。僕薬が嫌いなんだよねー」
知るか。
「にしても手慣れてるね」
「まぁな」
「どうして?」
「関係ねぇだろーが。おら、終わったぞ。あたしチャリだから家まで送ってやるよ」
:08/09/09 02:20
:SO906i
:☆☆☆
#576 [向日葵]
またおぶろうと思って屈もうすると青年は祐子の手を引いて、目の前の空いているもう1つの椅子に座らせた。
「オイなんだよ。さっさと帰っぞ!」
「まだ君の手当てが終わってないよ」
「はぁ?怪我なんざしてねぇよ」
「痛くないの、これ」
ふわりと彼の手が、彼女の手に触れる。
それが、さっき見た、綺麗で微かに羨ましく思った手だと思えば、祐子は払いのける。
「い、痛くなんかないっつーの……っ!」
顔が無駄に熱い。
:08/09/09 02:25
:SO906i
:☆☆☆
#577 [向日葵]
なんだコレ!!
しかし構わず彼はまた触れ、目の前で微笑む。
眼鏡の奥の柔らかい印象のたれ目が細められる。
「でも君、女の子だから。傷残っちゃ困るでしょ?」
「は……っ!?お、お、女の子ぉっ!?」
声が微かに裏返る。
ローラー付きの椅子を利用して、ザッと後ずさる祐子。
「寒い事、い言ってんじゃねぇぞ!そう言えば黙って手当て出来ると思ってんのか!」
「そうじゃないよ。一般論述べただけ」
:08/09/09 02:29
:SO906i
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