*柴日記*
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#598 [向日葵]
だからそういうのも嫌だって言うのが分からないか、このタコは……。

「あたしなんかといても何も学べやしない。とっとと消える事をお勧めしてやるよ」

ハンドルを握り、自転車を勧めようとすると、神田一朗はかごを持ってそれを阻止する。

思っていたよりも力が強かったから、裕子は驚く。

「おいっ!殴られてぇのかっ!いい加減にしろっ!!」

「学ぶ事を前提として付き合う友達なんかどこにもいないよ。僕は一緒にいたいと思う人しかいない」

真剣な言葉に、祐子は戸惑う。

⏰:08/09/16 01:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#599 [向日葵]
「だったら聞く。なんでお前はあたしと一緒にいようとする」

ほとんど睨むようにして、祐子は神田一朗を見つめる。

どこからか冷たい風が吹いてきて、祐子のウェーブがかった髪の毛を揺らす。

最後にフワリと吹いてから風が止んだ時、一朗は微笑んだ。

「……好きだからかも」

祐子は神田一朗が一瞬何を言ったか分からず固まる。
そして意味を理解すれば、これが叫ばずにはいられない。

「はぁぁぁぁぁっ!?」

口があんぐりと開く。
本当に信じられなかった。

⏰:08/09/16 01:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#600 [向日葵]
しばらく口を開けたまま固まった祐子は、「ありえない」と頭を振り、自転車を進ませた。

それに神田一朗はついてくる。

「森下さん、どうしたの?」

「お前は宇宙人か。あたしを好き?馬鹿もやすみやすみ言え。それと寝言は寝てから言え」

「馬鹿な事でもないし、寝言でもないよ。本気の気持ち」

それがおかしい。

「そんな事言ってないで、大好きな本でも読みあさってろよ」

「僕は本気だっ!」

いきなり大声を出されたので、びっくりした祐子は足を地面につけながらよろける。

⏰:08/09/16 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
神田一朗の方を見れば、なかなか信じてくれない祐子に少々腹をたててるようだった。
しかし、祐子からしてみればあまり怒っている風には見えず、どちらかと言えば拗ねてるように見える。

祐子は彼の額に指を弾いて当てる。
急に攻撃された彼は小さく「痛っ」と言って額に手を当てる。

「何考えてるか分かんねぇけど、冷静に考えてみれば分かる。お前は普通の人間。あたしは問題児。どう見られるか分かるだろ。分かったなら、二度と話かけるな」

それだけ言うと、祐子は自転車を走らせる。

もう、神田一朗は追って来なかった。

⏰:08/09/16 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ただいまー」

帰ってくればいい香りが祐子の鼻をくすぐる。

そしてフリフリなエプロンを着ておたまを持った祐子の母が祐子を迎える。

「おかえり祐子ちゃぁんっ!今日は祐子ちゃんがだぁい好きなハンバーグよっ」

「あのさママ……いつも思うけどそのエプロンどうなの……」

すると母は可愛らしく頬を膨らませる。

「んもうっ。ママじゃなくて翠(ミドリ)ちゃんって呼んでって言ってるじゃなぁいっ!」

⏰:08/09/16 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
母が嫌いな訳ではない。
むしろ好きだし、尊敬するが、この少々ぶりっこが入った母の血が自分の体のどこを通っているか不思議で仕方ない祐子だ。

「早く着替えてらっしゃい。あ、そういうば今日喧嘩しなかったのね。良かったわ、これ以上女の子に傷がついたら翠悲しいんだからぁっ」

そういえば、神田一朗もそんな事を言ってたなと思い出す。
彼の事を思い出せば、帰りの事も思い出す。

「ママ……じゃない。翠ちゃん。今日あたし告白されちまったよ」

「え!本当に!?やっだぁ早くその子連れて来てぇっ!翠会いたいわぁっ!」

⏰:08/09/16 01:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
「やだな翠ちゃん。連れて来るわけないっしょ。それ以前に、本気じゃなさそうだもん」

「また祐子ちゃんはぁっ!そんなの分からないでしょぉっ!?」

少し怒ったように、上目遣いで祐子を睨む。
神田一朗もこんな目してたっけ……。
やっぱり、本気じゃなさそう……。

きっと自分のような問題児が珍しいのだろうと思いながら、祐子は自分の部屋へと向かっていく。

「あ、今日、圭ちゃん遅くなるんだって!先にご飯食べちゃいましょー」

圭ちゃんとは、祐子の父、圭司(ケイジ)の事。

⏰:08/09/16 01:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
あんな筋肉ムキムキな父が果たして圭ちゃんと呼ばれていいのだろうかと祐子は遠い目をした。

着替えが済んだ祐子は下へ向かいテーブルに並べられた夕飯に目を光らす。

「たっくさん食べてね。翠、いーっぱい作ったから」

「うん。いただきまっす!」

空腹は最大の調味料。
体の芯まで味が染み渡っていく。

満足気な顔でご飯を頬張る祐子を見て、翠は微笑む。
そして正面に座る。

「で、祐子ちゃん、その子どんな子?」

「その子?」

「んもうっ、しらばっくれちゃって。好きって言ってくれた子よぅっ」

どんな子……。

神田一朗の事を思い浮かべる。

⏰:08/09/18 02:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
ふにゃふにゃしててアハハと笑いながら頭をポリポリかいてる姿が目に浮かぶ。

「……なよっちくて、変人……。いや、宇宙人……?」

「まぁ宇宙人だなんてっ。祐子ちゃんにとっては珍しく気になっちゃってるのねっ」

「え、何言ってるの」

あの宇宙人を何故気にしなくちゃならないと祐子は眉間にシワを寄せる。

出来れば関わりたくないタイプなのに気になるだなんてとんでもない。

「……ママ」

「“翠ちゃん”っ」

⏰:08/09/18 02:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
どっちでもいいだろうに……。

「翠ちゃん達はいつ知り合ったの?」

訊けば翠は頬をポッと赤く染めてモジモジしだした。

「16歳の時、圭ちゃんがね、女の子に囲まれてる翠を助けてくれたの」

翠は指を組んでキラキラした目で宙を見つめた。
その時の父を思い浮かべ、もう1度恋に落ちるかのように。

「スーパーマンだって思ったわ!だって赤いマントが見えたものっ!」

幻覚だと言いたいのをぐっとこらえる。

「今と変わらず大きな体で必死に庇ってくれる姿に、翠は運命を感じたのっ」

⏰:08/09/18 02:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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