*柴日記*
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#120 [向日葵]
こんなだから、私がしっかりしないから、今日みたいな事があるんだ……。

ため息をついて、少しぼんやりした後、戸締まりをして帰る支度を始めた。

自転車の鍵を片手に校舎を後にして、いつものように家路を急いだ。

暗い気分を自転車で走ってる間に消し去ろうと決意して、顔を上げると、校門に誰かいた。

その誰かも、こちらに気付いた。

「やっど出てきた」

「柴……っ!今まで待ってたの!?」

長時間待っていただろう柴だけれど、別に気にした風もなく私に近づく。

⏰:08/03/31 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#121 [向日葵]
そんな柴を見て、今日の出来事を思い出せば、柴に嫌な思いをさせた事で罪悪感いっぱいになった。

「柴……今日は、ごめんね……」

「ううん。越が謝る事なんてないよ。それに、嬉しかった」

「え……」

柴はにっこり笑うと、私の頭に手を乗せてくしゃくしゃ撫でてくれた。

灰色の瞳が、夕焼けのオレンジと混ざって変わった、だけどいつも以上に温かな色になっている事に気づく。

⏰:08/03/31 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#122 [向日葵]
「越が俺の為に怒ってくれて、嬉しかった。だって今までの生活は、俺の為に怒ってくれる人なんていなかったから……」

「柴……」

「ありがとう、越」

自転車を手放して、柴の胸に抱きついた。

支えて持っていた自転車が、大きな音を立てて地面に倒れる。
でもそんな事気にならなかった。

家族じゃなかった柴に、少しでも私の家族の事を分かってもらって、それで幸せになってくれたなら私も嬉しい。

⏰:08/03/31 02:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#123 [向日葵]
少しでも、自分が力になれた事が嬉しい。

とても、抱きつきたくなったのだ……。

柴は少し驚いたけど、肩を優しく抱いてくれた。

それから2ケツをして帰った。
もちろん柴がこいでくれた。

「越」

「ん?」

「越のキレた顔って怖いね」

「うるさいっ!」

なぁんて言葉を楽しく交しながら、大好きな家族が待つ家へと帰って行った。

⏰:08/03/31 02:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#124 [向日葵]
>>120

※訂正

×やっど出てきた
○やっと出てきた

⏰:08/03/31 02:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#125 [向日葵]
―*3日目*―

越姉って本当に鈍感。
小4の俺でも分かるのに、いつになったら柴の気持ち分かるんだろうなー。

(神田家・長男・空談)






今日は待ちに待った体育祭!クラス別の色のハチマキを頭に巻いて、靴紐をしっかり結んだ所で開始のアナウンス、そして空砲。

オレンジの絵が描かれたクラス旗を掲げて、皆で行進。

⏰:08/04/01 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#126 [向日葵]
日焼け止めを塗らなければならない程の太陽。
でもそれすらも胸をワクワクさせる。

プログラムのラジオ体操から始めまれば、それから先は戦いの始まりだ。

「あー!体がウズウズするー!」

誰よりもこの日を待ち望んでいた美嘉は、両拳を上げて叫ぶ。
側では日傘をさした椿が微笑んでいた。

まずは1年生からの種目なので、首にタオルを巻いて作ったポンポン、その他応援グッズを持って準備万端。

⏰:08/04/01 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#127 [向日葵]
体育祭は縦割り、つまり1年、2年、3年のB組が1つのチームとなっている為、応援はかかせない。

「ハイ、皆声出して行くよー!」

私が声を上げると、皆も「オー!!」と元気よく返してくれた。

そういえば、と、保護者が集まっている場所を見る。

お母さん達が見に来るとか言ってたけど、いつ来るのかは聞いてない。

柴も多分来るだろうけど……。

私は空を見上げた。

⏰:08/04/01 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#128 [向日葵]
病弱そうな柴は、この直射日光に堪えれるのだろうか……と不安になる。
ずっと外にいたら溶けてしまいそうな気さえする。

「越、どうかした?」

袖を捲って、日焼けなんか関係ないと言う風な美嘉が空を見上げたまま固まった私に問いてきた。

「ううん、なんでも」

パァン!と乾いた音が響いたかと思えば、リレーが始まった。

周りは一気に騒がしくなって、グラウンドの熱気は更に高まっていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

うー……緊張してきたなー……。

⏰:08/04/01 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#129 [向日葵]
いくつかの種目を終え、2年生のリレーが始まろうとしていた。

実は私、3番目にリレーを走る事になっていた。

頭の中で、何度も走るシミュレーションを繰り返す。

足がちゃんと動いてくれるか心配だなぁ……。

「えっつ!体ガチガチ!」

アンカーの美嘉が肩をポンと叩いてきた。

「越足早いんだから何も心配ないでしょ?」

「美嘉には負けるけどね」

⏰:08/04/01 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#130 [向日葵]
でもウジウジしてはいられないと、自分の顔をパンッ!と叩いて一喝し、深呼吸する。

<選手、入場!>

アナウンスが流れたので、私達は走り出した。

場所に着けば、第1走者の準備が始まる。
汗が一筋顎へと流れる……。

銃声が鳴り響けば、一斉に走り出した。
今は2位キープ。

手を握り合わせて頑張れと祈る。

しかし2走者目に事件が。

転んでしまったのだ。

⏰:08/04/01 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#131 [向日葵]
次の走者の私は焦った。

今は9クラス中6位。
巻き返せるか心配だ。

走る位置についても、他のクラスの子達はドンドン行ってしまった。

「越ちゃん……っ!ごめんね!!」

転んだ子が私にバトンを渡した。
緊張が体を硬直させる。

……その時。

「おねーちゃぁん!頑張ってぇ!」

ん?苺?

走りながら、探せば、お母さんに抱き上げられた苺、桜、空、柴がいた。

⏰:08/04/01 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#132 [向日葵]
「お姉ちゃんいけー!」

「越姉!しっかり!」

皆恥ずかしいくらい叫ぶ中、柴は静かに、だけど面白そうに笑っていた。

ありがとう皆……お姉ちゃん、頑張ります!!

一気にやる気が出た私は、先に走る人をめがけて走り出した。

1人、2人、3人……4人……!

5人目抜けそうな所で、次の子にバトンを渡した。

息が上手く出来なくて苦しい。

⏰:08/04/01 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#133 [向日葵]
「越ナイスファイトー!」

「ま、前の人と……あまり差が無かったのが救いだったよ……」

襟元を持ってパタパタ仰ぐ。
ドッと汗が出てきて、何度も袖で拭いた。

しばらくして、美嘉にバトンが渡った。

しかしさすが美嘉。

1位との距離をグングン縮めて、ラストは逆転勝利。

ゴールテープを切ったと同時に、美嘉の「よっしゃー!」と言う声が聞こえた。

⏰:08/04/01 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#134 [向日葵]
席に帰れば、皆からの祝福が待っていた。

「おかえりー!」

「お疲れ!超すごかったよ!」

「ってか神田早すぎっ。何人抜くのかと思ったっつーの!」

「アハハ、ありがとう!」

タオルで汗を拭きながら、蒸発していった水分を補う為お茶を飲む。

だけど……自分でも驚いた。あんなに走れたんだ私……。

「越、美嘉炭酸飲みたいから自販機行くけど行かない?」

⏰:08/04/01 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#135 [向日葵]
「あ、行く行く」

体育祭、と言っても、皆が皆やる気な訳じゃない。

自販機に行くまでに、木陰でサボったりしている人を何人も見かけた。

でまこんな人達に限って、負けたら人一倍文句言うんだよなー……とか思いながら、サイダーのボタンをポチッと押す。

「おねーちゃぁん!」

膝に衝撃。
思わず膝カックン状態になったせいで、サイダーが入ったカップを落としそうになってしまった。

振り向けば、足元に苺がいた。

⏰:08/04/01 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#136 [向日葵]
「い、苺ぉー……」

「おねえちゃんはやかった!すごいすごぉい!」

太陽から守る為に被ってる麦藁帽子の下で苺はニヒッと笑う。

その後ろから空、桜、柴、お母さんがやって来た。

神田家勢ぞろいに、美嘉は「すげー」と面白そうに呟く。

サイダーを一気飲みすると、喉がシュワシュワして痛かった。

「お姉ちゃん早すぎ!見てて気持ちよかったけど」

「越姉って見掛けによらず足早いよなー」

⏰:08/04/03 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#137 [向日葵]
少し生意気な口を聞く空の口を軽くひねってから柴を見た。

柴は空の言った事に納得してる様子。

私ってそんなに足遅く見える……?

「いやーお母さんも若い頃は早かったよ。逃げるのに関しては」

逃げるのって……お母さん何にから逃げてたの……?

それについて何か言いかける柴の開けかけた口を頭と顎を持って急いで閉めた。

「あのね柴、苺とかいるんだからあんまり教育上悪い発言しないでちょうだいっ」

⏰:08/04/03 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#138 [向日葵]
こそっと柴に耳打ちすると、視線だけを動かして不服そうに私を睨んだ。
顎を持っていた私の手をはがすと、一応気を使ったのか、私と同じように声を小さくした。

「でもどう見たって祐子さんはヤンキー上がりでしょ……」

茶色の髪、少し薄目の眉毛、口はいつもくわえタバコ(今は学校だから吸ってないけど)、お酒大好き人間。

確かに見た目とか、中身とかはそんな感じだけど、お母さんの詳しい事はあんまり聞いた事がない。

お母さんは見た目こそ派手だけど、ノリがいいしサバサバしてるからあまり恨まれたりする事はない。

⏰:08/04/03 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#139 [向日葵]
私は柴の両頬を軽くつねった。

「柴の言い方はあんまり良い風には聞こえないよ。謝りなさい」

「……ごめん……」

やっぱり不服そうな顔をするから、少しその顔に笑ってしまった。

「越は本当、家族が好きだね」

「もちろん!自慢だもんっ!」

「……俺は?」

拗ねた口調で言うから、私は柴の頭をくしゃくしゃ撫でてやって、微笑む。

⏰:08/04/03 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#140 [向日葵]
「柴も家族じゃん!」

すると美嘉が呼んだので、私は「また後で」と言ってから私は席に帰って行った。

******************

変わってこちらは越が去った後の神田一家。

皆も元の場所に帰ろうと歩いていた。

「残念ね、柴」

柴の隣で桜が面白くてたまらないと言った風に呟く。その呟きが柴の耳にしっかり入ると、柴は眉を寄せ、口を尖らせて桜を睨む。

桜はその視線に気づき、にまぁと笑う。

⏰:08/04/03 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#141 [向日葵]
「さっきお姉ちゃんに、「好き」って言ってもらいたかったんでしょっ。」

「無理無理。越姉はにっぶいんだから。S級に」

何故分かったんだ、なんてのは愚問だから聞かない。
それにしたって柴は桜は愚か10歳である空にまで気持ちがバレてしまっているのだ。
その事実に、少し苦い思いをした。

「柴、お姉ちゃんはね、迫らなきゃきって気付かないよ。柴の気持ちだけでなく、自分の気持ちにだって疎そうだもん」

越はしっかりしてそうでホワホワしていると、家族は称する。

⏰:08/04/03 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#142 [向日葵]
しっかりしている面ではどちらかと言えば桜の方が上なのだ。

小さな石を見つけた柴は足で転がして行く。

「そりゃもどかしい時はあるけど……迫っちゃったら100%越の行動はおかしくなると思う」

そりゃあれだけの鈍感だから気付いた時にはロボットかってくらいギクシャクしてそうだし、顔は真っ赤っかになるそうだし……。

そんな光景が安易に目に浮かぶ。

「だから……仕方ない……」

⏰:08/04/03 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#143 [向日葵]
>>142

※訂正

×なるそうだし
○なりそうだし

⏰:08/04/03 02:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#144 [向日葵]
「でもいざって時は襲うぐらいの勢いでいきそう、柴なら」

それには「心外だ」と言うようにため息を吐く。

「あのな柴、あんまりうかうかしてたら他の奴に横取りされちまうぞ」

10歳のくせにえらくませてるから、対等に喋ってしまう。

そして柴は密かに「何故励まされてるんだろう……」と思っていた。

柴は校舎を見上げる。

自分も確かにこんな校舎に通っていた。
こんなに古びてはいないけれど、それは確かに学舎だった筈と柴は回想にふけり始めていた。

⏰:08/04/03 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#145 [向日葵]
>>141

※訂正

×きって気付かない
○きっと気付かない

⏰:08/04/03 10:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#146 [向日葵]
立派な白亜の校舎だった。
校門にはいつも送迎の車が何台も並んでいた。
車の種類もそれぞれに。

清楚な恰好をした女の子達。振る舞いは紳士のように優雅な男の子達。
毎日男女関係なく喋っていては、笑いの堪えないその建物の中。

柴は「いや……」と小さく頭を振る。

あれは建物なんて立派なものなんかじゃない。
あれは、ただの箱だ。

自分の家の地位や財産の自慢ばかりしている奴らが詰まっている、何も生まれやしないただの箱。

⏰:08/04/04 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#147 [向日葵]
笑う顔の下に、沢山の陰謀が隠されているのを知ってる柴は、その輪の中には入らず、いつも外から蔑んだ目で人々を見ていた。

そしていつも疑問に思っていた。

――何を生き甲斐としているのだろうと……。

「しばちゃん……」

呼ばれたので回想から帰ってくれば、苺が心配そうに柴を見つめていた。

自分のより遥かに大きい柴の手を、弱々しくギュッと両手で握りしめ、虚ろな柴の顔を覗き込む。

そんな苺に、柴は頬をゆるめた。

⏰:08/04/04 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#148 [向日葵]
「何もないよ、苺」

そう言いながら苺を抱き上げる。

自分は今、求めていたものの中にある。

しかし柴はある女性の名前を心の中で呟いた。
早代の事だ。

自分のせいで、酷い目にあっていた早代。
あの後、彼女がどうなってしまったかは出ていった柴は知らない。

幸せであって欲しいと願う。

ただ、あの家で暮らして、幸せを感じるかなんて、柴には分からなかった。

⏰:08/04/04 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#149 [向日葵]
―――――――……

お昼前の恒例種目。

それは応援合戦。
もとい、集団創作ダンス。

一番良かった応援には賞状がもらえる。
なのでどのクラスも気合い充分。
始まる前は円陣を組んだりとモチベーションを高めているクラスもいた。

もちろん、私達B組もその中の1つ。

「おっしゃーB組ぃ!いくぞぉぉ!!」

「オォ――――ッッ!!」

⏰:08/04/04 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#150 [向日葵]
威勢のいい掛け声に答える声は尚デカイ。
グラウンド中に響いて、余韻を残しながら消えていく。

曲がかかれば中央に出ていって踊る。

私達は先生の年齢層を考えて、ソーラン節を踊る事になってる。

なので只今の恰好、制服のスカート、素足、体操服の上にオレンジ色のハッピ、頭にはお祭り用のハチマキ。ちなみにクラス色のハチマキは手に結んでちょっとしたリボンみたいになってる。

「越、似合うねーっ」

袖を捲っていると、美嘉が言った。

⏰:08/04/04 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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