*柴日記*
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#180 [向日葵]
ゴールテープを切った柴に、どよめきが起こる。
そして女の子達が静かに騒ぎだす。

「わー……あたし今恋に落ちた」

「私も……」

「ってか、目が追っちゃう……」

なんだか、いてもたってもいられなくなった私は、苺を抱き上げて柴がいるだろう場所に向かう事にした。

「越?どこ行くのー?」

「ちょ、ちょっと!」

退場門の場所について、柴を探す。

⏰:08/04/07 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
「あ……」

細身で長身の柴を発見した。

縛っているのが嫌なのか、髪ゴムを外しているところだった。

「しばちゃんっ!」

無邪気に苺が柴を呼ぶ。
苺に気付いた柴は、軽く汗を流しながらこちらを向いた。

その時、何故か胸がドクンと高鳴った。

柴は元の機嫌に戻ったのか、いつもの柔らかな雰囲気でこちらに近づいてくる。
さっきの柴じゃない。
分かってるけど、何故かまだ胸がドキドキしていた。

⏰:08/04/07 02:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
側にくると、にこりと微笑んで、私の手から苺を抱き上げた。

「越、見た?俺どうだった?」

嬉しそうに言うから、いつもみたいに気軽に「カッコ良かったよ!」と言うのが恥ずかしくて言えなかった。

な、何でー……っ!?

「?越、どうかした?」

「へ?いや、な、何でも……っ?」

「顔赤くない?日焼けのせい?」

と、片手で苺を抱くと、空いてる手で私の頬に触れた。
おかしな反応をしてしまったのは、私だった。

「おぅわぁぁぁ!!」

⏰:08/04/07 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
びっくりした柴はすぐに手を引っ込めて、キョトンと私を見る。
苺も瞬きを繰り返していた。

何だ……今の……。
触れられた瞬間、キューッてした……っ!

「え、越、どうかした?」

おずおず聞いてくる柴を見れば、その灰色の瞳に余計心を乱されそうな気がして、1歩1歩足を後退させていた。

「あ……、あの……私席戻らなきゃ……!」

「越!?」

⏰:08/04/07 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
顔が暑い。
それは湿気のせいでも、温度のせいでもない。
全て柴のせい。

でも何で?

早足で、高鳴ったままの鼓動を聞く。
「何で」と思う度、どんどんドクドクと早まる。

両手で顔を覆う。

早くおさまってー……っ!!

「わ!越、どうしたの」

「お顔、真っ赤ですよ……」

⏰:08/04/07 13:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
席に帰ると、一番に顔の色の事を言われた。
多分2人共、この暑さのせいと勘違いしているだろう。

だから私はその勘違いを利用する事にした。

「や、温暖化ヒドイよね!」

高速で手をパタパタして団扇代わりに顔を扇ぐ。

大丈夫、家に帰ればすぐに元通りになる筈だよ。

そう言い聞かす。

「ねぇ越、あのカッコイイお兄さんなんて名前?」

美嘉が話かけてきたので、なんとか平静を装って答える。

⏰:08/04/07 13:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
「柴って言って、さっきも言ったみたいにうちで居候してるの」

「私……どこかであの方見た事あるんですが……。名字はなんとおっしゃいますか……?」

椿の言葉に気づいたけれど、そういえば私は柴の本当の名前を知らない。

会った時に「好きに呼べば」と言われたから、そのまま私が付けた“柴”で今日まで通ってきたけど。

「聞いたけど……忘れちゃった。今は柴ってずっと呼んでるから」

「そうですか……」

⏰:08/04/07 13:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
今でこそ、心を開いて、笑ったり甘えたりしてくれるようになったけど、初めの方は心身共にボロボロと言った感じだったし。

本人も、あまり深い所までは追求しないで欲しそうだったから、柴の家族とか、周りの環境とかは柴が話した事以外は知らない。

柴も話さない。

「名字……かぁ……」

本当の柴を、私はまだまだ知らないんだなぁー……。

と思えば、またさっきの柴を思い出して、顔が暑くなっていった。

⏰:08/04/07 13:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
********************

「おねえちゃんどうしたんだろうね」

越が去ってしまった後、お母さん達の元に帰って行く中、柴に抱かれている苺が聞いた。

柴も分からない。

顔が赤かったので熱でもあるのかと、顔に触れた途端変な声を出された。

少し柴はショックを受けてたりもした。

さっきまで柴は越(と言うから立川)に対して不機嫌をあらわにしていたから、それに呆れられてしまったのかましれないと思っていた。

⏰:08/04/07 13:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
「でも……」

と柴は考え直す。

呆れていたと言うより、越は驚いていた。
何故驚かれたんだろう。

いつも朝後ろから抱きついても慣れたように接するあの越が、ただ頬に、しかも真っ正面から触れただけで驚くなんて。

考えていると、視界に苺が入ってきて、眉間に小さな手が触れる。

「しばちゃんさっきからムーッてなってる。えつおねえちゃんのこと?」

苦笑いしながら柴は1つ頷く。

⏰:08/04/07 14:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
苺は柴の眉間を擦りながらにこりと笑う。

「しばちゃん、えつおねえちゃんがだいすきなんだね!いちごもおねえちゃんだいすき!」

苺の無邪気な笑顔に、柴はくすりと笑った。

笑いながら、苺の“好き”と自分の“好き”は違うんだけどなーとか思いながら。

それでも、何だか苺に慰められた気分になり、柴の越に対する難しい考えが緩和された。

「あ、あの!」

声をかけらるたので、柴と苺は顔を合わせてから後ろに視線をやった。

そこには越と同い年くらいの女の子が2人いて、何か言いたげにこちらを見つめていた。

柴は「何?」と言う風に首を傾げると、1人の女の子が驚く事を行った。

⏰:08/04/08 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
「一目惚れしました!付き合って下さい……っ!」

柴は瞬きを繰り返した。

一目惚れ?
今?早すぎない?
いやそれが一目惚れか。

「しばちゃん、ヒトメボレってなぁに?」

意味が分かってない苺は柴に聞く。

それを今この子の前でしては可哀想と思い、苺の質問はスルーした。

「……えっと、ごめんけど好きな子いるから……」

女の子は目を見開くと、涙を溜めてうつ向いた。

⏰:08/04/08 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
「そうですか……すいません突然……」

それだけ言って、付き添いであろうもう1人の女の子と共に去って行ってしまった。

「しばちゃぁん、ヒトメボレってなぁーにー?」

襟元をグイグイ引っ張りながらしつこく聞いてくる苺に「ハイハイ」と答えてから、柴は苺に分かりやすく説明しながら歩いて行った。

******************

「うわぁぁ……っ!」

体育祭の歓声や、応援合戦の騒ぎの中、違う音を聞いた私はふとそちらに振り向いた。

⏰:08/04/08 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
そこには顔を両手で覆った女の子と、なだめているような女の子がいた。
どうやら片方の人は泣いてるみたいだ。

どうかしたのかな……。

「あ、男子スウェーデンだよ!」

美嘉の声に、その子達からは視線を外し、グラウンドに向ける。

男子が入場して来た途端、女の子達の黄色い声が。
何故なら立川君がいるからだ。
今だけクラス別なんて忘れてるみたい。

「立川くーん!」

「頑張ってー!!」

⏰:08/04/08 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
「すごい人気ですね……」

椿が呟く。

確かに。
上級生から下級生、そして同級生。
これだけ女の子から人気があるにも関わらず、男子からも慕われている。

神だね。
立川君はきっと神だよ。

「いや菩薩様……?」

「ボサツ?」

私の呟きを聞いた美嘉が片眉を寄せて聞き返す。

「や、何でも」

⏰:08/04/08 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
スウェーデンは惜しくも2位だった。
それでも立川君がいるので特に文句を言う人もいなく、爽やかに労いの言葉を皆かけていた。

「神田さん」

立川君に呼ばれたので、目で応じると、手招きしてちょっと離れた所まで連れていかれた。

なんだろうと立川君を見つめると、立川君は私の足を見つめてから口を開いた。

「次、学年種目、止めておいた方がよくないですか?」

どうやら午前中に負った怪我を心配してくれてるみたいだ。

⏰:08/04/08 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
多分ここへ連れて来たのも、私が皆の目を気にしているから気を遣ってくれたのだろう。

「大丈夫!もう痛くないから!」

にこっと笑って、「ホラ!」と怪我した方の足を思いきり地面を踏むようにすれば、さすがにやり過ぎたか、痛みを忘れていた傷が復活してじわぁーと頭まで伝わってきた。

笑っていた顔が少し引きつる。

そんな私を、不安そうにして無言で立川君は見つめる。

それに答えるように何度も足を踏みならす。

⏰:08/04/08 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
あ……なんか今明らかに傷が開いた音したぞ……。

「た、立川君心配症だよ。ホント大丈夫だから!」

それ以上見られたりすれば、痛いのがバレてしまいそうなので、逃げるように立川君の元から駆け出した。

頑張らなきゃいけないのに弱音吐いてる場合じゃないと自分に言いきかせ、奮いたたせる。

「……そんな神田さんだから、僕は心配症にもなっちゃうんですよ」

そう言った立川君の呟きは、痛みをかき消そうとしている私の耳に届く事は無かった。

⏰:08/04/11 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と言う訳で、2年生学年種目綱引きトーナメントが始まった。

本当は予選をやってからなんだけど、昨日の予行でそれは済んでしまったのでいきなりトーナメントから入ったのだ。

とは言うものの、私達のチームは負けているので今からは3位決定戦。
これに負けたらB組の得点は無しになる。

だから皆は「せめて3位を!」と闘志を燃やしていた。

皆盛り上がっている時、私は落ち着かなかった。
足が気になって仕方なかったからだ。

⏰:08/04/11 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
あんなに激しく踏み鳴らさなかったら良かったと今更ながら後悔していた。

足をモジモジさせていながら周りに視線をやると、立川君がこっちを見ている事に気づきギクリとした。

内心鳴りもしない口笛を吹いてる気分で、足がどうもない事を装い美嘉に話しかけた。

「もう少しで体育祭終わっちゃうね」

「寂しいよー……美嘉の祭がぁぁ……」

せっかく綱引き頑張ろうと盛り上がっていた美嘉を落ちこませてしまった私はオロオロした。

⏰:08/04/11 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
「ら、来年もあるし、今は今で楽しもうよ!ね?」

「違う……違うの越!!それだけじゃない!体育祭終わったらまた勉強の日々!あの校舎全体が活気に満ちてる雰囲気が無くなるのが嫌なの!」

美嘉の熱弁に若干引きながらも、その気持ちはよく分かった。

走り回ったり、旗を作ったり、どうやって応援するか考えたり……。
そんな楽しみが無くなれば、学校は元の静けさを取り戻していく。

それが手に取るように分かるから、体育祭が終わるだけが寂しいんじゃないと美嘉は言うのだ。

⏰:08/04/11 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#201 [向日葵]
そんな美嘉に、私はなんだか元気を貰った。

足を気にしてる場合じゃない。
良い思い出を作る為には多少のアクシデントだってつきものだ。

傷が開こうが、そこからばい菌が入ろうが、そんなの知ったこっちゃないのだ。

「ぃよし!皆円陣組もう!」

私が呼び掛けると、皆集まって来てくれた。

1つの大きな輪が出来る。
「学年種目、これが最後なので、悔いの残らないように力発揮しましょー!」

⏰:08/04/11 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#202 [向日葵]
「お――っ!!」

騒いでから、選手入場のアナウンス。
しっかり決まった順に並び、私達は綱が横たわっている場所へ駆けて行った。

先生が「用意!」と言えば、皆綱を持ち、笛が鳴るのを今か今かと神経を集中させた。

そして高らかに笛の音が鳴れば、一斉に力一杯綱を引いた。
力が1つになるよう、「オーエス!」と皆で声を出す。

段々と、綱がこちらに来るのが分かる。
B組優勢のようだ。

⏰:08/04/11 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#203 [向日葵]
お願い……っ!

そう願った時、ピストルの音が2回鳴り、皆で地面に倒れこんだ。

「やったー!」

誰かの叫び声にハッとし、喜びが込み上げて来て飛びはねる。
近くにいた美嘉やクラスメイトの子とハイタッチしあった。

でも綱引きは2回ある。
喜びは次に勝った時こそ本物になる。

場所変えをして、同じように笛の音を待った。

そして鳴った瞬間、また一気に引く。

⏰:08/04/11 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#204 [向日葵]
歯を食い縛って最後の力を振り絞る。
疲れているのはお互い様なので勝負は互角になってしまった。

長時間の引き合い。

腕が千切れてしまうのではと思った。

その時、グッと少しこちらに綱が動いた。

手応えを感じたか、それから足を後ろに動かしながら綱を引く。
最後に「オーエス!」と力んだ瞬間、勝利のピストルの音を聞いた。

「やったぁぁぁ!!」

今度は皆抱き合った。
腕がダルイし手はヒリヒリしているけどそんな事どうでも良かった。

⏰:08/04/11 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#205 [向日葵]
席に帰っても興奮はおさまらず、遂にはイスの上に立ってタオルを振り回す人までいた。

「あぁー良かったよぉぉ……っ!」

伸びをしながら言う美嘉に、椿がにこりと微笑む。

私も喜んだ。
……さっきまでは……。

「ん?越、顔青いけどどうかした?」

「え?青い?そんな事ないよ……っ」

実は席に戻って来た時、足の事をすっかり忘れていた私は油断していていきなり訪れた痛みに疲れを感じていた。

⏰:08/04/11 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#206 [向日葵]
やっと全部終わった安堵感も手伝ってか、立ち上がる事すら億劫に思った。

本当はジュースでも買いにいきたいのに……。

「……わ、越!」

「え……うわぁっ!」

疲れて地面を見つめていた私の視界は、突然空と柴に変わる。

「し、柴!ちょっと何してんの!」

「いいから来て」

どうやら私はお姫様抱っこされてるみたい。

……ってそんな呑気な事考えてる場合じゃない。

⏰:08/04/11 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#207 [向日葵]
頭の中がぐるぐるとおかしくなりそうだった。

「柴!今は学校行事中!」

疲れや足の痛みなんてなんのその。私は柴に叫び続ける。

周りの視線が痛い程私に集まるのが分かった。

一方の柴は、うるさい私を無視して黙々と丁寧にどこかへ運んで行く。

ヤケになって降りようとすると、肩を掴んでいる柴の手が力を増した。

「じっとしてっ」

まるで子供扱い。
仕方なく渋々大人しくした。

⏰:08/04/11 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#208 [向日葵]
しばらく歩いて、中庭の日陰にあるベンチに座らされた。
幸い人はあまりいないので注目を浴びることはない。

そんな私の心配をよそに、柴は勝手に私の靴を脱がす。
驚いて、足をベンチの上に急いで上げた。

「な、何してるの!」

「足痛いんでしょ」

そうだけど……。

炎天下で最早足の中はサウナ状態。
当然と言うか、絶対にと言うか、足が蒸れて臭いと思う!

⏰:08/04/13 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#209 [向日葵]
それなのに勝手に靴を脱がすだなんて……!

「いい!柴に見てもらわなくても自分で保健室とか行けるから!」

強く拒否すると、柴は悲しそうに目を細めた。
日光と風に揺れる葉の陰の具合いで、灰色の瞳がいつもより綺麗に見える。

「俺は心配しちゃダメ?」

「え?」

「同じクラスのあの男にはよくて、俺は越の心配するのはダメなの?」

私の靴を持っていた柴は、ゆっくりとそれを地面に置いてうなだれた。

⏰:08/04/13 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#210 [向日葵]
そんな柴を見て、どうしようとオロオロしてしまう。

私はただ心配かけたくないだけで、誰に心配してもらってもいいとかそんなの考えてない。

でも今の私の態度は、確実に柴を傷つけてしまったみたいだ。

「……柴……、あの」

と言いかけた時だった。

「あ、さっきのお兄さん!」

3人程の女の子が、柴を指差していた。
見たところ1つ下の子達みたいだ。

⏰:08/04/13 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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