*柴日記*
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#2 [向日葵]
雨が降っていた。

もうすぐ秋の気配を感じながら帰宅した私は、まるで捨て犬みたいに縮こまって、悲しそうにうつ向いてる彼と出会ったのです。









*柴日記*

⏰:08/03/18 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#3 [向日葵]
「お母さぁぁん!人拾ったぁぁ!!」

「え、ちょ、アンタそんな犬拾ったみたいなテンションで!」

優雅に紅茶をすすっていたお母さんは私の叫びにびっくりした。

私はずぶ濡れの彼を家にいれて、タオルを貸してやった。

「ハイ。拭いて。風邪ひいちゃうから。」

私の言葉なんか聞いてないのか、綺麗な茶色い髪から滴る雫もそのままに、彼はぼんやりしていた。

お母さんが風呂を沸かしてあげると言って、風呂場へ向かった後、私は彼を拭いてあげる。

⏰:08/03/18 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#4 [向日葵]
そこで私はハッとする。

伸びている髪の毛の隙間から覗いた瞳は、グレーだった。

外人……さん……?
もしかして日本語通じないとかかな……。

「わ……ワットユアネーム?」

カタコトな英語で話かければ少し反応したのか、こちらを見た。

「分かるから……日本語。」

ぽつりとだけど、確かにそう言った。

「良かった!あ、私は神田 越(カンダ エツ)。この家の長女。貴方は?」

⏰:08/03/18 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#5 [向日葵]
さっきまで私に向けていた魅力的な瞳を僅かにそらして、またポツリと呟いた。

「勝手に……呼べばいい……」

何でだろう。

でも何故か分かる事は、彼はとても傷ついてるように見えると言う事。

何故そんな悲しい目をしているんだろう……。

「どうして……うちの前にいたの?」

「……疲れた。どこにも行く場所なくて、さまよって……休んでただけ……。」

⏰:08/03/18 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#6 [向日葵]
行く場所がない?
つまり家出って事なのかな。

そう思いながら、今日初めてあった人をあれこれ詮索するのはよくないと思い、私は何も聞かなかった。

「じゃあ……とりあえず貴方は柴(シバ)ね。犬みたいにうちの前にいたから!」

特に反応する訳でなく、柴は黙ったまま私に拭かれた。

―――――――……

「行くとこないっていうなら、まぁいてもいいよ。」

お母さんは寛大すぎる程寛大で、お母さんだけど男気溢れる人だ。

⏰:08/03/18 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#7 [向日葵]
柴がお風呂に入ってる間、さっき彼から聞いた事をお母さんに言ったところ、さっきのような返事が帰ってきた。

「今更家族が1人増えようが5人増えようがどうでもいいよ」

「5人て……。そうなったら大家族だよお母さん」

「あぁ!おねーちゃん!」

後ろから声がするので振り向いてみれば、三女で4歳の苺(イチゴ)と、長男で10歳の空(ソラ)がそこにいた。

苺はトテトテと走ってきて私の足に抱きついた。

⏰:08/03/18 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#8 [向日葵]
「おかえりなさぁい!あのね、いちご今日おうたおぼえたんだよー!」

「そうなんだぁ。またお姉ちゃんに聞かせてね。」

苺は「うん!」と元気よく言って、お母さんの膝によじ上った。

「越姉!俺今日野球でホームラン打ったよ!」

「空はさすがだねー!この調子で頑張りなよ!」

空はニカッと笑う。
それにつられて私も笑うと、玄関の方から叫び声が聞こえた。

「うわぁぁ!!」

⏰:08/03/18 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#9 [向日葵]
「あ、さくらおねえちゃんだ!」

桜とは、次女で14歳。
おそらく部活から帰って来たのだろう。

それはいい。

多分……柴がいたな。

玄関へつけば、風呂上がりで、さっきと変わらず頭びちょびちょの柴と、見知らぬ柴に驚いた桜がいた。

「え!?ちょ、お姉ちゃんこの人誰!?」

「柴。ちょっと柴。ちゃんと頭拭かなきゃダメでしょうが。」

すると柴は頭にタオルを乗っけて、私に頭を差し出してきた。

⏰:08/03/18 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#10 [向日葵]
拭けと言ってるらしい。

桜の叫びにかけつけた苺と空も、驚いていた。

「わ!誰!?」

「いちごのおにいちゃん?」

いっぺんに説明しなくちゃならないようだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

小さな苺もいると言う事で、分かりやすく丁寧に話した所、最初こそ驚いたものの、皆次第に納得していった。

「分かったよお姉ちゃん」

「俺も」

「いちごもー!」

⏰:08/03/18 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#11 [向日葵]
皆が了解したと言う事で、私は柴が使う部屋へと案内した。

丁度1つ余っているので、そこにする事にする。

階段を上がって、空いてる部屋へと案内。
柴は黙々とついてくる。

ドアを開けると、何もない空間が広がっている。

「じゃあここね。布団はまた持ってくるから。」

「……てない。」

「は?」

柴は入口に止まったまま、窓を見つめて何か呟いた。

⏰:08/03/18 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#12 [向日葵]
柴よりも先に部屋に入ってた私は、柴に寄っていってもう1回何を言ったか尋ねた。

「何?」

「似てない……誰1人として、兄弟も、親子も……。」

「……そっか」

私はにこっとして、質問に答える。

「皆、施設からこの家に来たから。似てなくて当然なんだよ」

私は皆、桜も空も苺も……皆施設から今のお母さんの所へ引き取られた。

⏰:08/03/18 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#13 [向日葵]
お母さんは、子供が欲しいけど出来なくて、ずっと悲しんでいた。
そんな時、私達を見つけてくれた。

血の繋がりなんてないけど、愛情一杯に育ててくれた。

私は5歳の時、両親から捨てられた。

それでも今のお母さんが大事に育ててくれたおかげで、今は何も寂しくもないし、怖くもない。

「本当の兄弟じゃなくても、皆大切よ。」

柴は静かに私を見つめ返す。
灰色の瞳でじっと見つめられるば、少しドキドキした。

⏰:08/03/18 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#14 [向日葵]
「いいな」

「え?」

と突然、柴が被さってきた。
急なので、バランスを崩した私の体は、柴と共に倒れる。

ドスンと派手な音を立てると、私はムクリと起き上がった。

「あいったたたた。ちょっと柴!何すん」

「スー……スー……」

え、寝ちゃった?

確認するまでもなく、ピクリとも動かず柴は寝息を立てる。

⏰:08/03/18 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#15 [向日葵]
何か……謎めいた人だなぁ……。

歳は20ちょっとくらい。
長身、どちらかといえば美形。
そして灰色の瞳。

一体どこの人なんだろうか。

結果として膝枕をしなくちゃならない羽目になった私は、柴の寝顔を見ながらぼんやりと色々考えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

眠りがもとから浅いのか、1時間経つと柴は目を覚ました。

覚えてないのか、半目で辺りを見渡す。

そんな仕草に、私は笑ってしまった。

⏰:08/03/18 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#16 [向日葵]
「本当犬みたい!柴って名前あってたみたいね」

柴は少し首を傾げてから、座って頭をポリポリかいた。

私のビジョンからは、子犬が後ろ足で頭をかいてるように見える。

「お腹空いてない?喉は渇いてない?」

柴は頭をかくのを止めて、また私をじっと見つめる。
見つめながら、眉間のしわを深くした。

何か、私悪い事言ったっけ……?

「馬鹿らしい……。」

⏰:08/03/18 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#17 [向日葵]
は……?

「赤の他人家にあげるなんてどういう神経してんだか……第一そんなに親切にして何なの?媚売ってんの?」

最後の言葉を言い終わると同時に、私は柴の両方の頬をつねってやった。
そして間近で怒った顔をする。

「2度と、私の家族の悪口言わないで。」

媚なんて売った事はない。

困っているなら助けてあげたい。
そんな、ただ優しい心をそんな風に言うなんて許さない。

⏰:08/03/18 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#18 [向日葵]
「少なくとも、私はこの家族を誇りに思ってる。本当の家族であろうがなかろうが関係ない。本当の皆の心を見ずに、悪く言うのは止めて。」

そうして、私は頬から手を離す。
依然、まだ顔も気持ちも怒ったままだ。

柴はつねられた頬をさすりながら、ぼんやりと足元を見ていた。

少し……言いすぎた?
でも柴が悪いのよ。
私の家族を……あんな風に……。

「うらやましい……。」

柴がまたポツリと言う。

⏰:08/03/18 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#19 [向日葵]
私は眉を寄せて柴を見る。

柴はまたさっきのように悲しい目をしていた。

灰色の瞳に憂いの色が混ざる。

「悪く言ってごめん……」

あれ、意外と素直。

「でもお人好し」

でもやっぱり毒舌。

「いいの。誰かにとってはお人好しでも、誰かにとっては救いになってるかもしれないでしょ?」

柴は珍しい物のように私をじっと見つめる。

そんなにおかしい事言ったかな。

⏰:08/03/18 18:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#20 [向日葵]
カタと音がしたので振り向くと、そこに苺が覗いていた。

苺は恐る恐る部屋に入って来て、柴の近くで止まった。

最初は上から下まで何度も観察して、その内ににこぉっ笑った。

「しばおにいちゃん。いちごおにいちゃんとあそびたいな。」

柴は軽く目を見張ると、少し表情を柔らかくしたのが分かった。
目元も笑みを含んでいる。

苺も柴を気に入ったのか、生意気に膝の上に乗ってる。

⏰:08/03/18 18:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#21 [向日葵]
「兄弟いたの?」

「弟がね。」

柴は苺の頭を撫でながら言う。
苺のおかげで柴の警戒していた空気が緩和されてる。

だから私もなんなく喋る事が出来た。

「何歳くらい?」

「この子と同じくらい。」

「“このこ”じゃないよ。いちごだよ!」

苺の主張に、思わず笑ってしまう。

⏰:08/03/18 19:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#22 [向日葵]
「苺ー!ちょっとおいでー!」

桜の呼ぶ声に、元気よく「はーい!」と答えて苺は言ってしまった。

まるで空気を和らげに来ただけみたいな苺に、私は胸が温かくなった。

「あの子はいつからこの家の子?」

柴から喋り出したので、私は少し驚いた。

「苺は赤ちゃんの時から。でも本当の家族じゃない事はもう知ってるよ。」

柴は苺が行ってしまったドアを見つめる。
あんな小さな子に、そんな酷な事をとでも思ってるんだろうか。

⏰:08/03/18 19:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#23 [向日葵]
「俺もこの家に拾われたかった……」

「柴……?」

さっきもそうだった。

「いいな」とか「羨ましい」とか、どうして他の家庭を羨んでばかりいるんだろう。

そしてそういう時、いつも寂しくて悲しい顔をするのだろう。

「いいんだよ?ここにいても……」

柴の手に触れると、柴は少しピクリと震える。

柴の手は、さっきお風呂に入った筈なのにもう冷たくなっていた。

⏰:08/03/18 19:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#24 [向日葵]
「いたい……。ずっと……」

柴は膝を抱えてうつ向く。

一体この人には何があったんだろう。
心に、どれだけの傷をおっているんだろう……。

言葉の端々に、彼の心の叫びが聞こえる気がした。

「オイ越姉!イチャついてる場合じゃねぇぞ!」

今度は空がやって来た。

何でみんないっぺんに来ないかな。

「馬鹿。そんな訳ないでしょ。」

⏰:08/03/18 19:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#25 [向日葵]
「早くしないと母さんが焼きそばの上に目玉焼き乗っけてやんないって言ってたぞー」

私は空を軽くあしらって先へ行かせた。
先に立ち上がって柴の腕を引っ張って立たせてやると、柴が何かボソリと言った。

別に何言っても構わないからもう少しハキハキ喋って欲しいと思う……。

「何?」

「焼きそば……?」

「ウンそうだけど」

「何それ……」

⏰:08/03/21 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#26 [向日葵]
ハイ……?

ま、まさか焼きそば知らない……?
うっそだぁぁ!

と思いながらリビングへ連れて行き、即席で作った柴の席に座らせた。

いい香りを漂わせながら目の前に置かれた焼きそばを、柴はしげしげと眺める。

「いっただっきまーす!」

皆で行儀良く挨拶してから、ご飯を食べ始める。……と思われたが、皆初焼きそば(らしい)柴がそれを食べるかをじっと見つめていた。

⏰:08/03/21 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#27 [向日葵]
一方、マイペースを貫いてる柴は、焼きそばをよく観察した後、お箸を取って一口口に入れた。

一瞬止まってから、柴はまた一口、もう一口と、次々に食べだした。

どうやら美味しかったらしい。

それにホッとした私達も同じように食べ始めた。

「そーそー。アンタ細っちぃんだから、しっかり食べなよ。」

お母さんはにひっと笑って、柴の頭をぐりぐり撫でまわした。

別に気にした風もなく、柴は黙々と食べてくれたので、私も落ち着いて食べる事が出来た。

⏰:08/03/21 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#28 [向日葵]
*****************

柴は笑いに包まれる中、ぼんやりと昨日までの自分を振り返っていた。

安々と手に入った家族の温もり。
ただその温もりはいつか幻や夢のようにあっという間に消えてはしないだろうか。

早代(サヨ)の時みたいに……。

[出ていけ!お前などもういらない!]

激怒した父親の叫び。

離れたくなんて、なかったのに……。

ずっと、一緒にいたかった……。

******************

お箸が床に落ちる音がした。
その方を向けば、柴が箸を落とした状態のまま固まっていた。

⏰:08/03/21 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#29 [向日葵]
そして彼からは滴が流れ落ちていた。

「柴……っ!?」

「しばちゃん?」

苺が不思議そうに柴に問いかける。
このままだと皆に気をつかわせてしまう。

私は静かに柴を引っ張って行き、廊下に出る。

柴は灰色の瞳を潤ませながら細め、その目から涙を流し続ける。

それからは望みを失っているかのようにも感じとれた。

「柴……?」

⏰:08/03/21 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#30 [向日葵]
静かに私がつけた彼の名を呼ぶ。
彼は濡れた目で軽く応じた。

「俺は……家を追い出されたんだ……」

私は目を見開く。
握ったままの彼の手を、少し強く握った。

「俺は物心ついた頃から、愛情とか、そんなもの受けた事は無かった……。」

冷たい空洞の中にいるように、空っぽだった。そう柴は呟いた。

彼はポツリポツリと言葉を紡ぐ。

自分の素性をあまり話しはしなかったけれど、とにかく彼は“1人ぼっち”だったのだ。

そんな中、両親は離婚。
しかし彼は悲しいなんて感情は何も感じなかったと言う。
だって自分は、そんな感情を感じるほど何も与えてはもらわなかったから。

⏰:08/03/21 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#31 [向日葵]
そして、再婚。

「それが早代だった」

「早代?」

「俺と8つ歳の離れた優しい人。初めて俺に愛情を注いでくれた人……」

すると突然、柴は黙ってしまった。

先を促しては話ずらいだろうから、私は辛抱強く続きを待った。

しばらくして、柴はまた話始めた。

「あろうことか……俺は早代に恋愛感情を持つようになった。母親としてじゃなく、気持ちを、心を、もっとって欲しがるようになった……」

次に喋った時の彼の口調は、とても重かった。

⏰:08/03/21 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#32 [向日葵]
「関係を……持ってしまったんだ……」

「関係……?」

イマイチ分からなかった私は聞き返した。

柴は辛そうに細める目を閉じて、か細く言う。

「体……の事……肉体関係って……やつだよ。」

頭をきつく殴られた感覚がした。
だから彼は追い出されたのだ。

「出て行く時、早代が酷い目にあってる声が聞こえた……。俺の……せいで……っ!」

⏰:08/03/21 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#33 [向日葵]
柴は私に手を握られたまま床に座りこんだ。

私は今にも壊れてしまいそうな彼を見つめる。

「俺は不幸にしてしまうしかない……っ。愛情を求めても、相手を不幸にするしかないんだ……っ!」

私は、親から捨てられた記憶を持ってる。

私も柴と一緒だった。

私がいるせいで、お母さん達は不幸になった。
だから、私は捨てられてしまったんだと。

でも、この家に来てから、自分が誰かの力になれる事を知った。

⏰:08/03/21 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
それを教えてくれたのは、“お母さん”であり、お父さんや桜や空や苺、家族だった。

「柴、大丈夫」

私は柴と視線を合わすようにしゃがんだ。
柴はまだ濡れている目で私を不思議そうに見る。

「私達の家族はね、どんな事でも力を合わせて乗り越えていける家族なの。」

柴のおでこと私のおでこを合わせて、そっと目を瞑る。

「それを受け継ぐのが私の名前、“越”。初めてここへ来た私がそんな子に育つようにつけてくれたのよ」

⏰:08/03/21 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#35 [向日葵]
宝物のような私の名前。

だからね、柴……。

「一緒にいたら、きっと何でも越えていけるよ。安心して、いいんだよ……?」

目を開くと、灰色の瞳がすぐそこにあった。
潤んだ瞳は尚美しい。

柴はその魅力的な目を瞑ると、頭を私の肩に預けて静かにまた泣いた。

でもその肩の重みが、私に心を許してくれた証のようでなんだか嬉しかった。

……これが、私と柴の出会いだった。

⏰:08/03/21 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#36 [向日葵]
―1日目―

柴って慣れると本当に子犬みたいなの。
気がつけば寄り添ってすぐ側にいるんだよ。
(神田家・長女・越談)






柴と出会って、2週間が経ちました。
徐々にだけど、家のルールとか、皆との接し方とか分かってきたみたいで、柴は毎日楽しそう。

良かった良かったぁ!

「……ん、よし!」

⏰:08/03/21 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#37 [向日葵]
現在私は朝食作ってます!
朝と言えば、やっぱり味噌汁っしょ!
今日もいい出来に仕上がったよー。

忙しい両親のお手伝いをする私の日課。
桜と自分のお弁当も私が作ってます!

卵を割ろうと、卵を持った瞬間、頭に重みが……。
間違いない……。

「ちょっと柴っ。眠いならまだ寝てればいいのに」

「なんか起きたんだもん……」

柴はよく、こうして私の頭に自分の頭に乗せて甘えてくる。

⏰:08/03/21 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#38 [向日葵]
柴がこうして甘えてくるのにはもう慣れた。

柴が私に心を許してくれた時からすりこみしたヒヨコみたいに柴は私の後を追いかけてくるようになった。

とは言え、別に困ってる訳じゃない。

どちらかと言えば、世話好きの血が騒ぎだして柴の事を1から10まで面倒見れて嬉しいくらい。

苺や空も私をこんな風に追いかけてくる時もあるし。

柴はペット兼弟みたいなものだ。

「今日は何時に帰ってくんの……」

「もー柴。毎日毎日同じ事言わせないで。4時半頃だよ」

「もっと早く帰って来てよー」

⏰:08/03/22 17:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#39 [我輩は匿名である]
「出来るだけね」

食事をテーブルに運ぶ間も柴はちょこんと服の裾を持ってついてくる。
イメージ的に柴の足にピヨピヨサンダルが履いてあってピヨピヨ鳴ってる感じ。

「まぁった柴はお姉ちゃんにくっついてー」

「あ、桜おはよう」

桜は優しくて、いつも早起きして私を手伝ってくれる。

頭を結びながら降りてきた桜は、お箸を並べてくれる。

「だってくっつきたいもん。それとも桜くっついて欲しい?

⏰:08/03/22 17:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#40 [我輩は匿名である]
「やめてくれ」

と言っても柴は私以外にはこうしないじゃない。
苺とか空は逆に柴に「遊べ」とくっついてくるけど。

「じゃあ文句言わないでよ」

「ちょっと、お姉ちゃんはアンタのものじゃないんだからね!あんまりそうやってると空達がお姉ちゃん取られたって拗ねちゃうんだから。少しは離れなさいよ」

すると柴は私の体に腕を回して桜に舌を出した。

「いーやーだー」

桜のこめかみ辺りに青筋が出来るのが見えた。
ついでに2人の間に火花が散る。

朝から何やってんだか……。

⏰:08/03/22 17:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#41 [我輩は匿名である]
―――――――…………

柴の構ってオーラをなんとか振り切って、私は自転車で学校へ向かいながら爽やかな風を体で感じていた。

甘えるのはいいけど学校に遅刻するっつーの……。

学校について、指定された場所に自転車を置き、下駄箱へ向かう。

「越!おっはよー!」

「美嘉。おはよ。早いね今日は」

「失礼なっ。美嘉だってやれば出来るっての!」

友達の島田美嘉(シマダミカ)ちゃんは、明るくて元気な……遅刻常習犯……です。
ハンドボールをやってて、小麦色に焼けた肌と短めの髪の毛が彼女の印象によく合っていた。

⏰:08/03/22 17:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#42 [我輩は匿名である]
「おはよう、ございます」

「椿おはよう。」

大人しい野々垣椿(ノノガキツバキ)ちゃん。
社長令嬢で体が少し弱い。
腰までの長い黒髪はため息をつきたくなる。

「椿今日も体育休むって。アンタ体平気なのー?」

「この頃良くなってきてますから、平気です……」

大きな声で豪快な美嘉と違い、椿の声は耳を近づけないと聞こえないくらいか細い。

そんなアンバランスな2人は実は幼なじみ。
だからとても仲が良い。

⏰:08/03/22 18:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#43 [向日葵]
「何かあったら美嘉に言いなよ!家まで担いで行くから!」

本当にやってのけそうな美嘉が恐い……。

教室に入れば、皆が挨拶をしてくれる。

「神田。おはよう」

「あ、立川君おはよう」

立川憲吾(タツカワケンゴ)君。
学級委員長で、皆から「眼鏡男子!」と唱われるほど美形な男の子。
そして何を隠そう私も学級委員。

「先生から頼まれた事があります。後で一緒にやってもらえますか」

しかも世に珍しい敬語キャラなので美形+眼鏡+敬語とくれば乙女達は歓喜の叫びを上げる。

⏰:08/03/23 02:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#44 [我輩は匿名である]
私は歓喜と言うよりこんなにモテる立川君に感心しちゃうけどなぁ。

「了解!じゃあ後でねっ」

私は席へ向かう。
すると鞄を置いた美嘉と椿がすぐに私の元へてやって来た。

「いやーモテるねー」

「ねー。あれだけ美形だったらそりゃモテちゃうよねー」

美嘉と椿は目を点にする。
2人の反応に私も目が点になって「何?」と聞き返した。

「おモテになるのは越さんの事です……」

え、私……?
モ、モテ……って……。

「何言ってんの。私告白すらされた事ないのに。」

⏰:08/03/23 02:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#45 [我輩は匿名である]
美嘉と椿はため息を吐く。と、美嘉は私の肩に手を置いて考え深く頷く。

「いい……それでこそ越だ」

「いやだから何が」

その後も聞いても、2人も笑顔で交して、何も教えてくれなかった。

そういえば……もし仕事が長引いてしまえば柴が拗ねる。

でも苺がいるからいいかなぁ……。

実は苺の保育園には柴が迎えに行ってるのだ。
その前まで送迎バスだったけど、迎えに来てくれるという事で、苺もすごく喜んでいる。だから誰よりも早く柴になついた。

⏰:08/03/23 02:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#46 [我輩は匿名である]
苺の遊び相手になってれば、時間なんて忘れてしまうだろう。

連絡しようか迷いながら開いていた携帯を閉めて、またポケットへ戻す。

柴が来てから、家がより明るくなったなぁ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

結局休み時間だけでは間に合わず、放課後に作業が延びてしまった。

今やってる作業は、体育大会の保護者向けパンフレット。

折れ線に従ってただ折るだけ。

こんなの先生か機械かに任せてやって欲しいものだ。
なんでよりにもよって生徒、しかも学級委員がやるかなぁ……。

⏰:08/03/23 02:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#47 [我輩は匿名である]
「終わらないね。そういえば立川君部活大丈夫?」

立川君は剣道部の主将で大会でよく優勝してる強い人なのだ。
そんな人が、ほのぼのと(かどうかは分からないけど)パンフレットを作ってていいんだろうか。

「部活より学校行事の方を優先するよう顧問の先生から言われてますから。大丈夫ですよ」

薄く笑う立川君。
美男子の笑いはやっぱり綺麗だと思う。

こんなのを見て、女の子達は卒倒したり悶えたりするんだろうなぁ……。私にはイマイチ理解出来ないけど……。

と、その時携帯のバイブが鳴った。

⏰:08/03/23 02:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#48 [向日葵]
開いてみたい所だけど、先生が見回りみたいに来たら大変だから放っておく。

「携帯、出なくていいんですか?」

「大丈夫大丈夫。すぐに終わると思うしっ」

そう言いながら、携帯は鳴り続ける。
どうやら電話らしい。

「あの……やっぱり出た方が……」

「……や、大、丈夫、だと……」

と気まずくなる私の心配をよそに、携帯はようやく鳴り終わった。

なんとなくホッとする。

「本当に良かったんですか?」

「いいのいいのっ。さぁ!早く終らせてしまお!」

⏰:08/03/23 02:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#49 [向日葵]
頑張ってやったた甲斐あって、その後20分程やると全て終わった。

「お疲れっしたー!立川君部活行って大丈夫だよ」

「え、でもこれ職員室に……」

「だって立川君、本当は早く部活行きたいんでしょ?ならいいって!」

申し訳なさそうに私にお礼を言うと、鞄を持ってドアの所まで足を運ぶ。

「神田さんは良い人ですね」

「え?そんな事ないよー」

誉められるとやっぱり嬉しい。私はでへへと笑いながら頭をかいた。

「そんな所も、俺は好きですよ」

⏰:08/03/23 02:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#50 [向日葵]
それだけ言って立川君は早々と行ってしまった。

え……好き……?
い、いっやー美男子にそんな事言われちゃったら……照れるなぁー!

立川君!私も君が好きだよ!
ってかクラスみーんな大好きだぁ!

好意をもたれる事は嬉しいのでルンルン気分で職員室にパンフレットを運び、鼻歌なんか歌いながら下駄箱へ向かった。

さぁて、今日の晩御飯何しよっかなー。

「あ、おねーちゃぁん!」

「へ?」

⏰:08/03/23 03:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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