*柴日記*
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#204 [向日葵]
歯を食い縛って最後の力を振り絞る。
疲れているのはお互い様なので勝負は互角になってしまった。
長時間の引き合い。
腕が千切れてしまうのではと思った。
その時、グッと少しこちらに綱が動いた。
手応えを感じたか、それから足を後ろに動かしながら綱を引く。
最後に「オーエス!」と力んだ瞬間、勝利のピストルの音を聞いた。
「やったぁぁぁ!!」
今度は皆抱き合った。
腕がダルイし手はヒリヒリしているけどそんな事どうでも良かった。
:08/04/11 01:07
:SO903i
:☆☆☆
#205 [向日葵]
席に帰っても興奮はおさまらず、遂にはイスの上に立ってタオルを振り回す人までいた。
「あぁー良かったよぉぉ……っ!」
伸びをしながら言う美嘉に、椿がにこりと微笑む。
私も喜んだ。
……さっきまでは……。
「ん?越、顔青いけどどうかした?」
「え?青い?そんな事ないよ……っ」
実は席に戻って来た時、足の事をすっかり忘れていた私は油断していていきなり訪れた痛みに疲れを感じていた。
:08/04/11 01:15
:SO903i
:☆☆☆
#206 [向日葵]
やっと全部終わった安堵感も手伝ってか、立ち上がる事すら億劫に思った。
本当はジュースでも買いにいきたいのに……。
「……わ、越!」
「え……うわぁっ!」
疲れて地面を見つめていた私の視界は、突然空と柴に変わる。
「し、柴!ちょっと何してんの!」
「いいから来て」
どうやら私はお姫様抱っこされてるみたい。
……ってそんな呑気な事考えてる場合じゃない。
:08/04/11 01:20
:SO903i
:☆☆☆
#207 [向日葵]
頭の中がぐるぐるとおかしくなりそうだった。
「柴!今は学校行事中!」
疲れや足の痛みなんてなんのその。私は柴に叫び続ける。
周りの視線が痛い程私に集まるのが分かった。
一方の柴は、うるさい私を無視して黙々と丁寧にどこかへ運んで行く。
ヤケになって降りようとすると、肩を掴んでいる柴の手が力を増した。
「じっとしてっ」
まるで子供扱い。
仕方なく渋々大人しくした。
:08/04/11 01:25
:SO903i
:☆☆☆
#208 [向日葵]
しばらく歩いて、中庭の日陰にあるベンチに座らされた。
幸い人はあまりいないので注目を浴びることはない。
そんな私の心配をよそに、柴は勝手に私の靴を脱がす。
驚いて、足をベンチの上に急いで上げた。
「な、何してるの!」
「足痛いんでしょ」
そうだけど……。
炎天下で最早足の中はサウナ状態。
当然と言うか、絶対にと言うか、足が蒸れて臭いと思う!
:08/04/13 02:06
:SO903i
:☆☆☆
#209 [向日葵]
それなのに勝手に靴を脱がすだなんて……!
「いい!柴に見てもらわなくても自分で保健室とか行けるから!」
強く拒否すると、柴は悲しそうに目を細めた。
日光と風に揺れる葉の陰の具合いで、灰色の瞳がいつもより綺麗に見える。
「俺は心配しちゃダメ?」
「え?」
「同じクラスのあの男にはよくて、俺は越の心配するのはダメなの?」
私の靴を持っていた柴は、ゆっくりとそれを地面に置いてうなだれた。
:08/04/13 02:12
:SO903i
:☆☆☆
#210 [向日葵]
そんな柴を見て、どうしようとオロオロしてしまう。
私はただ心配かけたくないだけで、誰に心配してもらってもいいとかそんなの考えてない。
でも今の私の態度は、確実に柴を傷つけてしまったみたいだ。
「……柴……、あの」
と言いかけた時だった。
「あ、さっきのお兄さん!」
3人程の女の子が、柴を指差していた。
見たところ1つ下の子達みたいだ。
:08/04/13 02:16
:SO903i
:☆☆☆
#211 [向日葵]
私は靴を履いて立ち上がる。
柴は軽く首を傾げながら立ち上がった。
女の子達はこちらに遠慮なく寄ってきて、頬を染めていた。
「あ、あの、リレー見ました!」
「良かったら握手して下さい!あと、名前も教えて下さい!」
柴を囲む女の子達。
明らかにこの子達は柴が好きなんだろう。
でもこの子達はただあのリレー1回で柴を狙おうとしている。
私はこの子達より柴をずっとずっと前から知ってるのに……。
軽々しく、柴を見ないで欲しい……。
:08/04/13 02:20
:SO903i
:☆☆☆
#212 [向日葵]
気がつけば、私は柴と女の子達の間に入っていた。
柴の表情は見えないけど、女の子達は驚いて、握手しようて出していた手をゆっくり引っ込めた。
「柴は、私の家族なんだからっ!」
そう言って柴の腕を掴み、中庭の更に奥へ早足で行った。
何で自分がこんな事言ったか理解出来ないまま私は足を進める。
なんだか嫌だったんだ。
あの子達が、柴にベタベタするのが許せなかったんだ。
:08/04/13 02:23
:SO903i
:☆☆☆
#213 [向日葵]
だって柴は……私の大切な人だもん……。
「越」
静かに柴に呼ばれて、足を止めた。
「……ごめん。勝手に引っ張ったりして」
大切な大切な家族。
馬鹿みたい。嫉妬するだなんて……。
柴に向き直る。
怒ってると思った。
勝手に傷つけて、勝手に引っ張って。
私に振り回されて嫌な思いしてると思った。
でも彼は、とても優しく柔らかく、笑っていた。
:08/04/13 02:28
:SO903i
:☆☆☆
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