*柴日記*
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#240 [向日葵]
「私が言っていいものかとは思いますが……私が知る限りでは、柴さまは柴と言うお名前ではありません。伊勢屋グループのご子息、伊勢屋 大和さんです」
イセヤ……ヤマト……?
私は驚きを隠せなかった。
伊勢屋グループと言えば、飲食、服飾、ブランドなど幅広く経営している知らない人はいない程の大きな会社。
その会社の息子が、柴……。
何故それを隠しているのか分からなかった。
[愛情とかそんなもの、受けたことは無かった……]
:08/04/20 02:27
:SO903i
:☆☆☆
#241 [向日葵]
お父さんを……恨んでるとかなのだろうか……。
「越さん……ごめんなさい。柴さまのことベラベラと……」
「あ……。ううん。教えてくれて、ありがとう」
柴……。
私は柴の事を知る権利があるんだろうか……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柴の事が頭から離れない私は1日中モヤモヤしながら過ごした。
今は掃除をしていて、これが終われば今日はもう帰る予定だ。
:08/04/20 02:31
:SO903i
:☆☆☆
#242 [向日葵]
「神田さん」
箒をしまおうとすると、立川君が声をかけてきた。
立川君は毎日私の足を心配してくれて、私としては何だか申し訳ない気持ちで一杯だった。
「何?」
「何かありましたか……?」
「え……」
「ずっと難しい顔してるもので……気になって」
いつも思うのだけど、立川君はよく私の事を見てくれている。
:08/04/20 02:34
:SO903i
:☆☆☆
#243 [向日葵]
そのせいか、私の事は何でもお見通しだ。
それとも私が分かりやすすぎるのかな……。
「何もないよ。ありがとうっ」
「何もないって……何もないなら俺は声かけませんよ……っ!」
声をあげた立川君に私は驚いた。
決して取り乱したりしない立川君が、いつもクールな立川君が、今正に取り乱し、熱くなっている。
「貴方はどうしてそうなんですっ。俺は……頼ってもらいたい……貴方に……」
「立川君……」
:08/04/20 02:38
:SO903i
:☆☆☆
#244 [向日葵]
本当に友達思いだなー……。こんなに良くしてもらうなんて私は幸せ者だぁ……。
そんな立川君に、私は元気が出た。
「ありがとう!立川君。本当に本当に大丈夫だから!」
にっこり笑えば、立川君は頬を緩めて少し微笑んだ。私は立川君に何かあれば、全力で助けようと心に誓う。
と、その時、教室のドアがいきなり勢いよく開いた。
「越っ!」
「柴ぁ!?ちょ、何勝手に入ってるの!」
:08/04/20 02:43
:SO903i
:☆☆☆
#245 [向日葵]
戸口には、2本の傘を片手に柴が立っている。
傘を持ってきたせいで、床にポタポタと滴を落とし、びしゃびしゃにしてしまっていた。
柴は視界に私にしかいれてなかったらしく、立川君を見ると、失礼なぐらい嫌な顔をする。
「今日は何もしてないよ、?」
それでも柴は機嫌を直してはくれなかった。
眉を寄せたまま私と立川君を交互に見つめる。
「どうしてアイツが?」とでも言ってるみたいに私の目に射るような視線を送る。
:08/04/20 02:56
:SO903i
:☆☆☆
#246 [向日葵]
※訂正
×私にしか
○私しか
×「今日は何もしてないよ、?」
○「今日は柴が心配するような事何もしてないよ?」
スイマセン


間違ってる上セリフ抜けまくりでした


:08/04/20 03:03
:SO903i
:☆☆☆
#247 [向日葵]
体育祭では柴は私を心配してはいけないのかと聞いてきたから安心させるように言っても、柴は何故か立川君が気にくわないらしく、私と一緒にいるのが嫌らしい。
「はぁ……立川君、私帰るね……」
半ば脱力しながら私はカバンを持ち、柴の背中を押しながら立川君に言う。
「ハイ。さようなら。また明日」
「うん。じゃあ」
立川君は柴より大人だと思う……。
ってか柴が子供すぎと言うか……。
:08/04/20 03:07
:SO903i
:☆☆☆
#248 [向日葵]
柴と2人になってしまえば、朝の椿の言った事を思い出した。
雨の降る中、傘をさして、時々ちらりと柴を見る。
柴は雨が傘に落ちる音を楽しんでる。
まるでト○ロ……。
これなら……と、私は話題を持ち出す。
「柴、野々垣 椿ちゃんって知ってる?」
「……。あー、聞いた事あるかも。思い出せないけど」
柴の顔が、少し緊張しているのが分かった。
そんな様子に気づいていながら、私はまた言う。
:08/04/22 00:02
:SO903i
:☆☆☆
#249 [向日葵]
「椿……がね……柴の事知ってるんだ」
柴が歩みを止めた。
それに気づいた私は2、3歩進んでしまってから止まり、柴を振り返った。
柴の、いつもの柔和な空気が無くなっている。
無機質な顔で、私をじっと見つめていた。
灰色のあの瞳が、ひどく冷たく見えた。
「柴……。柴は、柴じゃないんだね……。やま……」
「やめてくれない?」
私の言葉を遮って、柴は言った。
:08/04/22 00:06
:SO903i
:☆☆☆
#250 [向日葵]
「越はそれを知って何か得する?そう思わないなら口には出さないで。今ここにいる間は、俺は“柴”だから」
「損得なんて考えてないよ。ただ、柴の色んな事を知りたいだけで……」
「色んな事?知ってどうするの?俺にあの家から出て行けとでも言うつもり?」
「違う柴……っ!」
言葉を発する度、柴は私の言葉を遮って自分の過去を否定する。
そんな柴を初めて見たから、私は少し怖くなった。
:08/04/22 00:10
:SO903i
:☆☆☆
#251 [向日葵]
「俺は、過去の俺が嫌い。環境が嫌い。だから忘れたい。なのにどうして思い出したくない事をいちいち聞いてくるの?」
「それは……」
「好奇心?家族じゃない人間には何を聞いてもいいと思ってる?」
私はその言葉に鋭い痛みを感じた。
好奇心?
違うよ柴。
家族じゃない?
そんな訳ないでしょう……。
家族だと思ってるから聞いてるし、過去の事を打ち明けて心を今より開いてくれたら嬉しいって……。
ただそう思っただけ……。
:08/04/22 00:14
:SO903i
:☆☆☆
#252 [向日葵]
でも柴がそう思ってしまったのは、私の自己中心的な考えのせいで……。
でもなんだか……すごく突き離された感じがして……。
辛いよ……柴……。
私は傘で顔を隠した。
じゃないと、泣いてしまいそうだから……。
「ごめんなさい……。もう聞かないから……」
私は回れ右をして足を進めた。
無意識に、足が早くなる。足元をチラッと見れば、いつの間にか隣に柴が歩いていた。
:08/04/22 00:17
:SO903i
:☆☆☆
#253 [向日葵]
柴は、私にとてもなついてくれてたから、勘違いしていたんだ。
好奇心……。
あながち外れてないかも。
柴の事、私だけが全部知っておきたかった。
家族の誰よりも理解してあげたかった。
柴を誰よりも……独占しておきたかったんだ……。
どっちが子供……。
まるっきり子供なのは、他の人の心の傷を無理矢理開こうとし……私だったんだ……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ、お姉ちゃんお帰り」
:08/04/22 00:20
:SO903i
:☆☆☆
#254 [向日葵]
帰れば、桜が私と柴を迎えてくれた。
さっきの事は頭から無くそうとして、桜に微笑む。
「ただいま。晩御飯今から作るね」
「あ、それがね、お母さんが久々にピザでも買っちゃいなってなんと……ジャジャーン!」
桜はピッと1万円札を2枚出してきた。
「今日は贅沢な日〜」
ルンルンな桜にもう1度笑いかけて、「着替えてくる」と言ってから柴を肩越しに見る。
普段の柴に、戻っているようだった。
:08/04/22 00:25
:SO903i
:☆☆☆
#255 [向日葵]
だから私も、普段の私に戻らないと……。
「迎えに来てくれてありがとう柴。濡れたとこ、ちゃんと拭くんだよ」
それだけ言って、階段を上がり、部屋に入った。
入ってドアにもたれながら、ズルズルと座りこむ。
スニーカー越しに染み込んできた雨が足を冷やし、私を余計悲しい気分にさせた。
まだ……胸が痛い……。
[本当の家族じゃない人間には何を聞いてもいいって思ってる?]
柴……。
:08/04/22 00:30
:SO903i
:☆☆☆
#256 [向日葵]
涙が流れた。
あとからあとから、とめどなく……。
何粒も頬を流れ、顎をつたい、ブラウスやスカートに染み込んでいく。
ごめん……。
「ごめん柴……っ」
もう聞かない。
何も知ろうとなんてしない。
だから……。
嫌いにならないで……。
*******************
越が階段を上がっていくのを柴と桜は見守っていた。
部屋のドアが閉まると共に桜は大きなため息を吐いて柴を見る。
:08/04/22 00:33
:SO903i
:☆☆☆
#257 [向日葵]
「お姉ちゃんずっとあんな調子?」
柴は答えに詰まる。
多分と言うか絶対、原因は自分なのだから。
歩いている間、越との会話はほとんどなかった。
時々越が「雨の匂い好きなんだ」とか「水たまりって遊びたくなるよね」と呟くように言ってた。
本人は楽しそうな声を出したつもりだろうけど、聞いてるこちらには無理してるのが分かるくらい落ち込んだ声だった。
そして帰ってくるまで、必死に傘で顔を隠して、柴には見せないようにしていた。
:08/04/22 00:41
:SO903i
:☆☆☆
#258 [向日葵]
柴は自分が越につらくあたってしまった事を後悔した。
越にあんな顔をさせるつもりなんてなかったのだ。
ただ、どうしても昔の自分、とりまく環境の事を思い出せば、胸の中に苦い物が込み上げてくる感覚が襲ってきて、とても苦しかったのだ。
正直に言えば、また越は自分を受け入れてくれるとどこかで期待した部分もあった。
八つ当たりでさえ、優しく包み込んでくれるんではないかと。
でも柴は言ってしまったのだ。
:08/04/26 02:00
:SO903i
:☆☆☆
#259 [向日葵]
[家族じゃない人間には]
と。
一番言ってはいけない、卑怯な言葉を使ってしまったのだ。
本当の家族じゃない越達に絶対言ってはいけない事だったのに、頭にきていた芝は、残酷にも彼女にそう言ってしまったのだった。
そして後で激しい後悔の念に襲われる。
無理矢理笑う彼女は、なんて痛々しかっただろうか……。
「越と、少し言い合いしてしまったんだ」
桜の問いに、柴は淡々とそう答える。
:08/04/26 02:04
:SO903i
:☆☆☆
#260 [向日葵]
「言い合い?そんなのいつもの事なのに。……柴、アンタ何かお姉ちゃんの傷つく事言ったんじゃ……」
桜は何でも鋭いから困るといつも柴は思う。
桜のそんな推測に、柴はうつ向いた。
きっと今頃、部屋で落ち込んでる。
でも今行けば、自分がする事なす事どれもダメなような気がして、結局いつも越が自分でなんとか立ち直った時でしかちゃんと振る舞えない。
そんな自分を柴は嘲笑し、リビングにあるソファーに深く身を沈めるのであった。
:08/04/26 02:10
:SO903i
:☆☆☆
#261 [向日葵]
*****************
ノックの音がした私は、目を開けた。
ベッドに寝転んでいたら、泣き疲れて寝てしまっていたらしい。
ゆっくりと体を起こす。
そして「はい」と言った。
入って来たのは苺だった。
ドアからひょっこり顔を出して、私の所までやって来る。
「どうしたの苺」
「さくらおねえちゃんがみんなでたべたいピザきめよーって」
:08/04/26 02:14
:SO903i
:☆☆☆
#262 [向日葵]
そういえば今日ピザなんだっけ……。
まだ起ききっていない頭でぼんやり考える。
するて苺がベッドに上がってきて、私にギュッと抱きついた。
私はどうしたのかと思いつつ、苺を膝に乗せた。
「なぁに苺」
「えつおねえちゃんげんきないからおまじない。だからぎゅーっ」
私はハッとした。
こんな小さな苺でさえ、私の異変に気づいてしまっている。
:08/04/26 02:17
:SO903i
:☆☆☆
#263 [向日葵]
こんな事ではいけない。
今お母さん達がいない以上、自分が皆の事をちゃんと面倒みなくちゃならないんだから……。
しっかりしないと。
私は苺の頭を撫でて微笑む。
「ありがとう苺。でもお姉ちゃん大丈夫よ。着替えるから、苺は先に下に行ってな」
「うんっ」
もう一度ぎゅーっと抱きついてから、苺は私の部屋を出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リビングのテーブルの上にはピザのチラシが沢山広げられている。
:08/04/26 02:22
:SO903i
:☆☆☆
#264 [向日葵]
皆で「ここの店がおいしい」やら「これが食べたい」やら話をする中、私は少し疲れた気分でいた。
「越姉、どれがいい?」
空の声に、ピクリと反応して思わず「え?」と聞き返した。
「越姉はどれが食べたい?」
「お姉ちゃんはミックスピザでいいよ。そんなにお腹も減ってないし」
正直食べるのもどうかと思った。
特に食べたいとさえ思わなかった。
そんな私を見つめる視線を感じた。
柴だ。
:08/04/26 02:26
:SO903i
:☆☆☆
#265 [向日葵]
その視線を、受けとめる事が出来なかった。
これじゃますます柴が気をつかってしまう。
しっかりしなきゃ……。
しっかりして、私。
しっかり……しっかり……。
世界が逆になった気がした。
何が起きたか分からない。
誰かの叫び声と、私の体を抱き起こし、揺さぶる力強い腕を感じるのを最後に、私は意識を手放したのだった……。
:08/04/26 02:32
:SO903i
:☆☆☆
#266 [向日葵]
―*6日目*―
頭の中がうまく回転してくれない。
それは柴に嫌われるのが嫌で、前みたいな振る舞い方を忘れてしまったからなのかもしれない。
(神田家・長女・越談)
「寝てなって言ってんだろ」
「いーやっ!」
さっきからこの繰り返し。
昨日倒れた私は、救急で夜病院に行くと過労と判断された。
:08/04/26 02:36
:SO903i
:☆☆☆
#267 [向日葵]
そして今、いつも通り起きようとすれば、部屋に入ってきたお母さんに止められた。
「いっぱい寝たからもう大丈夫なの。私が動かないと皆に迷惑かけちゃうから……っ」
「越」
静かなお母さんの声に、私は黙った。
そしてお母さんは軽く私の両方の頬をつねる。
「アンタばっかり何もかも背負ったって仕方ないのよ。何の為の家族?それに、無理して倒れた方がもっと迷惑かけるのよ」
そこまで言われては、何も言い返す事は出来なかった。
:08/04/26 02:41
:SO903i
:☆☆☆
#268 [向日葵]
私をベッドに寝かせるよう肩に置いたお母さんの手に従うように私はまた布団に入った。
「それに、柴がいるから、今日は思いっきり甘えといたら?」
柴と聞いて、私はドキリとした。
出来れば柴とはあまり喋りたくないと言うか……喋りづらいと言うか……。
お母さんは私の頭をくしゃりと撫でると、「じゃあね」と言って部屋を出て行った。
私は1つ、大きなため息を吐いた。
なんだか……事が前に運ばないような気がして、体調の悪さも手伝い、体が重かった。
:08/04/26 02:46
:SO903i
:☆☆☆
#269 [向日葵]
どうして私あんな事言っちゃったんだろうと何度も後悔する。
後悔すれば後悔する分、また視界が滲んだ。
考えるのが嫌になって、目を閉じれば、いつの間にか眠りについてしまった。
――――――――……
トントンと、ドアを叩く音が聞こえた気がした。
それを合図に、意識が現実に引き戻された。
ゆっくりと目を開く。
「越」
柴だ。
:08/04/27 17:36
:SO903i
:☆☆☆
#270 [向日葵]
心臓が跳ねる。
私は返事をしなかった。
するとまたノックをして、私の名前が呼ばれた。
静かな事を証明する耳鳴りのような音が聞こえた。
しばらくすれば、柴はどこかへ行ってしまった。
足音が消えた所で、私はベッドから降りる。
1日こんな気まずい状態でいれやしない。
遅刻上等で学校へ行こう。
私はさっさと支度を始めた。
鏡を覗けば、少し目が腫れていたけれどそのうち直るだろうとほっておく事にした。
:08/04/27 17:41
:SO903i
:☆☆☆
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