*柴日記*
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#360 [向日葵]
桜は。

「明日丁度試合があんだよねー。またじゃ駄目?え、明日までなのー!?最悪ー。じゃあ楽しんできて」

空は。

「明日サッカーの試合あるんだよね。オレ期待されてるから無理ー」

苺は。

「あのねー、みよちゃんといっしょにぱんださんみにいくのー」

と、言う訳で、行く人は私と柴のみ……。
ってこれって……デートとか言う!?

⏰:08/06/13 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#361 [向日葵]
>>319に感想板がありますんで良ければお願いします

⏰:08/06/13 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#362 [向日葵]
―――――――
―――――――――……

そして現在に至る訳で……。

ノリノリで最初からジェットコースターとか急流滑りとかバイキングとか乗ってたら柴の顔が青ざめてしまったのでした……。

「じゃあ、えと、コーヒーカップとか」

「あのさ、越。なんで超スピードで動くか回るかのやつしか選ばないの?」

だって好きなんだもん……。

「じゃあ柴何乗りたいのさーっ」

⏰:08/06/16 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#363 [向日葵]
気分治しで買ったペットボトルの水を手で遊びながら柴は考える。
私はそんな柴の前で腰に手をあてて待った。

「ゴーカートとか……」

「えー。私あれ上手く操作出来ないんだけど……」

「2人乗りだってあるよ。行こう」

ごく自然に、柴は私の手を取り歩き出す。

ちょっと!柴、手!手が!

嫌な訳じゃないけれど恥ずかしい。
デートみたいじゃないか!?と緊張していた事は忘れていた。

⏰:08/06/16 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#364 [向日葵]
だから忘れていた分余計恥ずかしくなる。

肌寒さを感じるくらいに涼しくなった。
柴の手は、いつもひんやりしている。
きめ細かい手はすべすべしていて、手を離すのがもったいないとすら感じる。

もっと……指先で、手全体を使って、触りたいな……。

……!?
今、なんか変態っぽくなかった!?

「越、2人乗り出来るよ。良かったね」

今思っていたピンク色した考えを片手で慌てて消しさる。
柴は時々鋭いから、気づかれたらヤバイ。

⏰:08/06/16 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#365 [向日葵]
「そだねっ!じゃあ柴に運転任しちゃおっかな!」

「顔赤いけど、どうかした?」

先ほどまで触りたいなどといやらしい気持ちを抱いて見ていた柴の手が、するりと私の頬を包む。
顔の赤さは更に倍増。

完全に気づかれた。

案の定、柴は意地悪そうに笑う。

「越、なんかいやらしい事でも考えてたの?」

「ち、違う!」

いやそうなんだけど……。

⏰:08/06/16 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#366 [向日葵]
「じゃあなんで赤いの?」

「暑いだけ!」

柴はクスクス笑って「そう」とだけ言った。

周りから見れば物凄いバカップルだなんて思われてるのを知らず、私の顔の赤さは引かないままだった。

順番がまわってきて、カートに乗る。
……けど、狭い……。
お互いの肩が触れてしまいそうだ。

「右がアクセル、左がブレーキとなっています。それではいってらっしゃーい!」

⏰:08/06/16 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#367 [向日葵]
と係のお姉さんが言った途端カートは派手な音を立ててギュンッと進んだ。

「わー、結構スピード出るー!」

と関心していたら伸びてコースにまで出てきていた枝に頭を当てた。
横で柴が笑いだす。

「しっかり前見てなよ」

「失礼な!見てたもん!」

ムキになれば、また柴は派手に笑って、アクセルを更に強く踏む。

「やっぱり越はそうでなきゃね」

「え?」

⏰:08/06/16 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#368 [向日葵]
片手でハンドルを持って、もう一方の手で私の頭をくしゃりと撫でた。

「うろたえて赤くなってる越も可愛いくて好きだけど、笑ってる越が一番好きかな」

そう思うならそんな事言わないでほしいんですけど……。
また顔が赤くなる。
あまり見られたくなくてそっぽを向いた。

「柴の頭文字のSはドSのS……」

このまままた気まずくなるのが嫌で、ぼそりとそう呟いてみた。

「俺どっちかって言うとMでしょ」

「カミングアウトしちゃうんだ!」

おかしくなって、今度は私が笑いだした。

⏰:08/06/16 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#369 [向日葵]
>>319に感想板ありますんで良ければお願いします

⏰:08/06/16 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#370 [向日葵]
それにつられて柴も笑い出す。
そうこうしてる間に、ゴーカートの短い道のりは終わってしまった。

「あー楽しかった!あ、風船配ってる!ちょっと待ってて!」

私はうさぎの着ぐるみを来た人の元へ興奮しながら走って行った。

********************

越が楽しそうに風船を取りに行く姿を柴は穏やかに見ていた。
そして近くのベンチに座る。

ベンチに座って、改めて周りを見れば、家族連れがやはり多かった。

⏰:08/06/20 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#371 [向日葵]
そう思えば柴は自分の小さい頃を思い出していた。

もちろん、遊園地など連れて行ってもらった覚えは無かった。
それもそのはず。
両親はずっと仕事だと言って柴を構う事なんてしなかったからだ。

柴を相手したのはメイドや家庭教師。

しかし彼らが柴の心を満たせるはずもなかった。

どうあがいても彼らは他人だからだ。
対等な関係、本気の愛情、そんなものは一切ない。
自分が彼らに相手してもらったのは、大企業の息子だからだ。

⏰:08/06/20 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#372 [向日葵]
ちゃんと愛情を与えて接してくれたのは早代だけだった。

冷たく閉ざされた心を温かく溶かしてくれた。
きっと忘れる事は出来ない。

そうして早代の事を考えれば彼女の事が気になりだした。
あれから早代は幸せに暮らしているだろうか。
もしかしたら別れて別の場所にいるのだろうか。

柴との関係がバレた時、彼女は酷い仕打ちにあっていた。
その悲痛な声は、まだ柴の耳の奥に鮮明に残っている……。

⏰:08/06/20 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
「柴?」

ハッとする。

近くに越が赤い風船とオレンジの風船を持って立っていた。

「少し休む?なんかしんどそうだよ?」

柴を覗き込む越を、柴はまぶしそうに見つめた。

早代が溶かしてくれた心が、再び冷たく閉ざされていた時、再び温もりをくれたのは越だった。

見ず知らずの大人を、何の躊躇いもなしに助けてくれた、自分にとってかけがえのない少女。

それこそ早代よりも大きな存在。

⏰:08/06/20 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
「あ、あのね、風船2個貰ったんだっ。柴どっちがいい?」

“柴”。

新しく与えられた自分の名前。

越がつけてくれた特別な名前。

自分の名前がこんなにいとおしいと思った事はこれまでに一度も無かった。

「どっちでもいいよ。越が好きな色を持ってなよ」

「そう?柴はオレンジ選ぶかと思ったんだけどなー……」

「なんで?」

⏰:08/06/20 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
「お日様色の方が柴は好きかなって。ホラ、オレンジって温かな感じするでしょ?だから柴はそういうのが好きそうだなって」

無邪気に笑う越を抱き締めたい衝動にかられる。
それをぐっと我慢して、彼女の風船を握る手を柔らかく包む。

越の顔が、赤い風船のように色づく。

「……し、柴……?」

「ありがとう……越……」

「あ、風船?いいよ別にそんな!タダだし!」

そうじゃない。

自分を見つけて、助けてくれて、ありがとう……。

柴はそう言いたかったのだ。

⏰:08/06/20 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
>>319に感想板がありますんで、感想あればお願いします

⏰:08/06/20 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
「ねえ越。最後に観覧車に乗ろうよ」

******************

と柴が言ったので、観覧車に乗ったはいいものの、心の中で失敗したなと私は思った。

なんて言っても密室に15分間2人きり。
ゴーカートとは違う2人きりの雰囲気に戸惑いを隠せない上、誘った張本人である柴はさっきから窓の外を見つめたっきり喋ろうともしない。

さっきから話題話題と頭をフル回転させてる私もそろそろ限界だった。

「越……」

柴がポツリと私の名を呼んだ。
やっと喋ってくれた事にホッとする。

⏰:08/06/24 23:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
「何?」

「どうして俺を拾ったの?」

「何、突然……」

灰色の瞳が私を見る。
暮れかけた太陽のオレンジ色が混ざる。
胸がドキドキしだす。

「あのままほっておかれたら、多分今の俺がいない気がする。時々思うんだ。今の俺が本当の俺なのかなって……」

「本当の……柴……?」

柴は頷く。

「自分が自分でなく感じる。誰かに優しくしたいとか、誰かを大切にしたいとか……今まで思わなかったんだ」

⏰:08/06/24 23:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
柴は自分の両手を見つめる。

私はむしろ柴がそんな感情を持った事がないと言った事が不思議だった。

柴を拾った時から喋る事以外は柴のままだったからだ。
冷たいとか酷いとか思わなかった。
初対面の苺にだって優しく接していたし、柴に愛情を注いでくれた早代さんの事を話す時だって、いとおしそうな顔をしていた。

「人って何かに触れたりする度に変われるものだよ。私だって、前とはきっと全然違うだろうし……」

柴がまた私を見る。

⏰:08/06/24 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
「柴は今の自分を受け入れたらいいと思うよ。変わる事は怖くなんかないから。怖かったら助けてあげるから」

柴が目を細めて、口をゆっくりと笑みの形にする。
太陽の光で、柴の目が輝いて見える。
それに私はまたドキドキした。

私……なんか恥ずかしい事言っちゃったかも……。

「い、いつの間にか頂上過ぎちゃったね!あ、あれって駅かな!わーあんなに小さい!」

恥ずかしさを紛らわす為に窓に張り付く。

⏰:08/06/24 23:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
目は窓の外でも神経は私を見つめているだろう柴にそそがれていた。

すると柴が言った。

「そっち行っていい?」

「え?」

私が返事するのも待たず、立ち上がった柴は、私の隣に座った。

「え、ちょ、柴!?」

動揺してる私とは違って、柴はにっこり笑っているだけだ。

「肩貸してくれない?」

肩……?

⏰:08/06/25 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#382 [向日葵]
また私が返事する前に、柴の頭が柔らかく私の肩に触れた。
重さは感じない。
本当に軽くのせている程度だ。

いつもの甘えている雰囲気のようだけれど、どこかまた違う甘い雰囲気……。
茶色い綺麗な髪の毛が、私の頬と顎をくすぐる。

不思議と恥ずかしくはなかった。
それよりなんだか柴が泣いているような気がして、つい頭を包むように抱き締めてしまった。

大丈夫、そばにいるよ……。

そう言っているつもりで抱き締める。

⏰:08/06/25 00:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#383 [向日葵]
その時の2人を包む沈黙は、意外にも心地良いものだった。

―――――――……

帰り道。
何故か手を繋いで帰っている私と柴。
口数も少なかった。
まるで手だけで会話しているようだった。

時々ちらりと顔を上げて柴を見れば、柴は私の視線にすぐ気づきにこりと微笑むだけだった。
それが恥ずかしい私はまたすぐ前を向く。
そんな一連の流れを何回か繰り返した。

もうすぐ家だと思えば、ちょっと物足りない気がした。

⏰:08/06/25 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#384 [向日葵]
門の鍵を開けなくちゃならない。
その為には柴の手を離さなくちゃならない。

「えと……鍵、出すね……」

名残惜しそうに手を離す。

そして門を開けた。
その時だった。

「大和君!」

女性の声だった。
門を1歩入った私が振り向くと、柴が女性に抱き締められている所だった。

思わず目を見開く。

誰……?それに、なんで柴の本名を知って……。

⏰:08/06/25 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#385 [向日葵]
「早代……っ!なんで……」

体を離しながら柴が言う。

この人が、早代さん……っ。

「探したのよ!あれからずっと……。どうして何も連絡をくれなかったの……っ!」

うつ向いて顔を覆う早代さん。
柴に負けないくらい綺麗なこげ茶色の長い髪の毛をさらりと垂れる。

「俺は勘当された身だよ。今更連絡なんてする訳ないじゃないか」

「ううん大和君。旦那様はまだ正式にはしてないって仰ってるの。旦那様も大和君を探してるわ……っ!だから帰りましょう……」

⏰:08/06/25 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#386 [向日葵]
>>385
×長い髪の毛を
○長い髪の毛が

⏰:08/06/25 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#387 [向日葵]
柴は私を見る。
私はどうしたらいいか分からないから柴を見つめ返すしかなかった。

そして柴はまた早代さんに視線を戻す。

「帰らないよ、早代……。俺はもう、あの家には帰らない。絶対……、帰りたくないんだ……」

早代さんは涙を流したまま柴を見つめる。

「私がいても……?私がいるから、変わらず貴方を愛するわ。……息子としてだけれど……だから」

「早代」

静かな、だけど強い口調で柴は早代さんを呼ぶ。

「無理だ。早代はまだ俺の事を息子として見てない。また父さんの怒りを買うだけだ……。帰ってくれ」

⏰:08/06/25 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#388 [向日葵]
早代さんは一際涙を流すと、踵を返して走って行ってしまった。

そんな早代さんを見てから、柴を見る。
柴の表情は厳しくて、悲しそうだった。

柴……貴方もしかして、まだ早代さんが好きなの……?

今の柴は柴じゃない……。

伊勢屋 大和。

過去の柴だ。
そんな柴を、このまま家にいれる訳にはいかない。
そう思った。

「柴、追いかけなきゃ……」

⏰:08/06/25 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#389 [向日葵]
柴は驚いたように私を見る。

「なんで?」

「早代さんが、気になるんでしょ?」

「そんな事……」

「嘘つかないで」

柴の言葉を遮る。
困ったように柴は眉を寄せた。

でもそんな表情ですら柴でないような気がしてならなかった。

そしてそう思えば思うほど、私の心は段々と不安になっていくのだった。

⏰:08/06/25 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#390 [向日葵]
柴……貴方の好きなのは本当に私?

貴方は私を早代さんと重ねてはいない?

ああ、柴……、偉そうな事言ってごめんなさい。
何が“変化を怖れないで”よ……。
今、柴が違うように見えただけで、私はとても怖れている。

いつか柴の本当に好きな人が私ではないかと気づいてしまったら……。

「早く、行って!」

震えないように、毅然と柴を見つめて言う。
柴はやはり困っていた。

⏰:08/06/25 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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