*柴日記*
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#395 [向日葵]
どうやら桜らしい。
桜は私の顔を後ろから覗き込んで驚く。
「お姉……ちゃん……」
「桜……幸せを願うって難しいね……」
どんなに口で言っても、頭では分かっていても、やっぱり思ってしまうのは……。
「そばにいて欲しかった……っ。ずっとずっと、一緒にいたかった……っ!」
大好きだったのに、言う事さえ出来なかった。
言ってあげられなかった。
柴はいっぱい気持ちを伝えてくれたのに……。
:08/06/29 01:53
:SO903i
:☆☆☆
#396 [向日葵]
「柴が……行っちゃったよぉ……っ!」
桜に抱きついて、私はわぁっと泣いた。
ただ悲しくて、ただ切なくなった。
背中を押したのは自分のくせに、今になって後悔した。
あの観覧車の中、柔らかく茶色い髪の毛が、懐かしく感じた……。
:08/06/29 01:56
:SO903i
:☆☆☆
#397 [向日葵]
―*9日目*―
しばちゃんがいなくなっちゃったの。いちごさみしいな。でもね、いちばんさみしそうなのは、おねえちゃんなの。
(神田家・三女・苺談)
柴がいなくなって4日が経った。
何の音沙汰もない空白の時間は、気持ち悪くて仕方なかった。
それでも私の毎日は、いつも通りにやって来て、朝ご飯を作る時、いつもはある頭の重みがないのが物足りなかった。
:08/06/29 02:00
:SO903i
:☆☆☆
#398 [向日葵]
―――――――…………
「旅行?」
「ウン。今度の金土日使って、椿んちが持ってる別荘まで遊びに行かない?」
「湖が綺麗に見える場所なんです……」
「いらない奴もついてくるけどね……」
不機嫌そうに呟く美嘉を見て、椿に「誰が?」と目で問いかける。
椿は苦笑いしながら答えた。
「婚約者の方も、ついて来るとおっしゃってまして……」
「ああ……私はいいけど……」
:08/06/29 02:05
:SO903i
:☆☆☆
#399 [向日葵]
「美嘉はぜーったいあんな奴認めないんだからね!!」
そんな美嘉の言葉にも、椿はにこにこ笑う。
その笑顔が、前に話していた時よりも幸せそうに感じたのは気のせいなのだろうか?
幸せ……。
窓から空を眺める。
今日は少し曇り空だ。
灰色の雲が重たそうに感じる。
『越』
……同じ灰色なのに、綺麗に感じないのは、どうしてなんだろうなぁ……。
:08/06/29 02:09
:SO903i
:☆☆☆
#400 [向日葵]
******************
某所の高級住宅街でも一際大きく豪華な家が伊勢屋家の物だ。
その中にある一室に柴はいた。
4日前。
とりあえず来てちゃんと話合ってくれと訴える早代に渋々ついて行き、すぐに父と会えるのかと思いきや、父はその前の日から出張でフランスへ行ってるらしく、会う事は不可能だった。
それならばと帰ろうとした柴を、早代は止めた。
[どうして帰ろうとするの?貴方のお家はここでしょ?]
[前はね。今は違う。家族以上に家族な人達が俺を待ってるんだ]
:08/06/29 02:15
:SO903i
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#401 [向日葵]
越……。
心の中で呼ぶ。
早く会いたい。
本当に自分は越から離れて良かったのかずっと考えていた。
好きと言ったのに、早代を追いかけてしまった……。
[もうこの家にはなんの未練もない。俺の事なら、探さないでいいから]
そう言って早代の隣を通り過ぎて間もなく、柴の前にがたいのいい男2人が立ちはだかった。
思わず驚く柴の隙をついて、2人は柴を取り抑えた。
:08/06/29 02:19
:SO903i
:☆☆☆
#402 [向日葵]
[ちょ、お前らなんだ……っ!]
そして連れてこられた部屋が現在いる柴の部屋だったのだ。
外からしか鍵は開けられず、窓からの脱出を試みるも2階だ。
しかも下には先ほどのSPらしき男達が何人かいた。
携帯も圏外。
連絡を取れないのはそのせいもあった。
そろそろ閉じ込められるのに限界を感じてきた柴は、部屋にあった大きくフカフカしたベッドに身を沈めた。
すると、ドアをノックされた。
返事をせずにいると、静かにドアが開かれる。
:08/06/29 02:25
:SO903i
:☆☆☆
#403 [向日葵]
「大和君、起きてる?」
早代だ。
起き上がって、戸口にいる早代を睨む。
「どうしてこんな事されなきゃなんないの?俺帰りたいんだけど」
「……私は、貴方にここへ帰ってきて欲しいの……」
「早代は父さんの妻だろ?なのに俺に執着するのは間違ってる」
口ごもる早代。
しかし柴は容赦しなかった。
「間違いだったのは確かに俺だ。でも離れて分かった。俺は早代に逃げてただけだって」
:08/06/29 02:28
:SO903i
:☆☆☆
#404 [向日葵]
誰も愛してくれない。
無気力になっていた自分。
そんな中、愛してくれた早代。
恋だと思った。
でも実は違った。
自分が何者か分からないから早代でその存在する意味を確かめていただけだったのだ。
自分で、見つけようともせずに……。早代を、利用してしまったのだ。
早代もまた、望んでない結婚を、柴に、いや大和に逃げる事で何もかも見ないようにしていた。
2人の間に、やはり愛などなかったのだ。
:08/06/29 02:33
:SO903i
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