*柴日記*
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#421 [向日葵]
帰ってきた祐子に気づいた越は、祐子の方に顔を向けて薄く笑った。

[お帰り……]

[どうしたの……?]

[ん……?ちょっと、目が覚めちゃって……]

そんな風には見えなかった祐子は眉を寄せる。
越の隣に腰を下ろす。

[お母さん……。お父さんの幸せの為なら、悲しいのも寂しいのも我慢出来る……?]

淡々と静かに語る越。
何故こんな事を聞くのかが分からなくて、あまり考えず祐子は[うん]と肯定した。

⏰:08/07/19 15:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
すると越は力を抜くようにして微笑んだ。

[じゃあ、仕方ないね……]

[……越、何があったの?]

膝を抱えていた越は、自分の膝に顔を埋めた。
小さく微かに肩が震えているのは気のせいだろうか。

[柴が……行っちゃった……]

どこに、なんて聞かなくても、あの謎めいた甘えん坊の彼がどこへ行ってしまったか祐子は分かった。

[寂しいけど……大丈夫だよね……。またいつもの生活に戻っただけだもんね……]

明るい声を出しながらも、微かに滲んでいる悲しみの色や、微かに震えている声は、大丈夫じゃなかった。

⏰:08/07/19 15:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
それでも、越は弱音を吐かない。
どんなに聞いても、何もないと微笑むだけ。

そんな越を、優しく包み、癒してくれていたのは、突然雨の日にやってきた、あの青年だけなのだった……。

*****************

突然鳴り出した電話に祐子は回想の世界から帰ってきた。

「ハイハイ」と立ち上がって、電話の所まで行く。

「もしもし」

{あ……祐子さん……}

「柴……っ!?」

⏰:08/07/19 15:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
「アンタどこにいるの!」と怒ってしまいそうになったが、怒鳴ったところで何も解決しないので、祐子はその言葉をを飲み込んだ。

{越は?}

「時間見れば分かんでしょ。まだ学校よ」

{そっか……}

祐子は密かにため息をついて微笑む。

どんな時でも、柴は越が第一か……。

「携帯に連絡したらいいでしょ。電話は無理でもメール見てくれるかもよ」

{あ……うん……ありがとうっ}

「柴」

{……何?}

祐子はしばらく黙った。
黙って、ここ最近の越をまた思い出していた。

「アンタの幸せを1番に考えなさいね……」

⏰:08/07/22 10:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
例えそれが、越を悲しませる結果になっても……。
だって、柴はもう家族同然なのだ。
それならば、息子には、幸せになってもらいたい。
祐子はそう思った。

{……ありがとう}

呟くように言ってから、柴は電話を切った。
祐子も受話器を静かに置く。

「頑張りなさい……。柴……」

******************

明日から旅行か……。
突然だけど、お母さん許してくれるかな……。

「越、ここの問題ってどうしたらいいの?」

⏰:08/07/22 10:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
午後の授業中。
ぼんやりとノートを眺めていた私は、隣の美嘉に話しかけられた。

「あ、えとね……。反比例のグラフだから……」

突然、スカートに入れていた携帯が鳴りだした。
微かに聞こえるバイブ音に、美嘉も気づいたらしい。
目で「越の携帯?」と聞いてきる。
私も頷きながら「自分だ」と自分を指差す。

先生が歩いて皆が問題を解けているか見回っている。
こちらを見ていないか、近くにいないかを確かめてから、机の下でそっと携帯を開く。

メールだ……。
誰からだとボタンを押して、私は声が出そうになるのを抑える為口に急いで手を当てた。

⏰:08/07/22 10:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
柴……っ。

画面を見たまま固まった。

柴だ……柴だ……!
それしか頭になかった。

ハッと我に返って、メールを開こうとした。

「越!先生来た!」

美嘉が小声で知らせてくれた。
素早く携帯をポケットの中に入れて、美嘉にまた教えだす。

「で、この線がこことここを通ってるから……」

教えながら、先生が近くを通り過ぎて行くのを横目で見て、ホッとする。

バレてないバレてない……。

⏰:08/07/22 10:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
「なんか緊急のメール?返さなくて大丈夫?」

「実は……っ。……ううん、何でもない。桜が帰りにひき肉買ってきてってだけ」

なんだか、「柴から」とは言いにくかった。
柴の家庭事情を勝手に言ってはいけないと思ったし、4日前の事を話したら、柴が悪者になってしまいそうだったから……。

柴は何も悪くない。
そう思ってても、心のどこかで「どうして行ってしまったの」と思ってしまう自分が存在しているのも本当だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

休み時間になって、柴からのメールを見た。

⏰:08/07/22 10:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
<from 柴>

久しぶり……。すぐ連絡出来なくてゴメン。携帯取り上げてられてて、今返してもらったんだ。

父さんと、さっき話した。
色々、分かったよ。

結果的に、父さんも俺も不器用だっただけなんだって分かった。いっぱい話したいけど、越は今学校だから、電話出来ないしね。

……父さんが、2、3日泊まっていかないかって言ってる。

どうしようか迷ってる。

何に迷ってるかって言われたら上手く説明出来ないけど、正直父さんと真っ正面から向き合うのは緊張するし、照れくさいからかもしれない。

⏰:08/07/22 11:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
でもそういうのって大切なのかもしれないと思うから、こっちで過ごしてみようかなって思ってる。

思ってるけど……。
早く越に会いたいよ……。

俺が帰ったらさ、1番に越が顔見せてね。

―end―

お父さんと仲直り出来たのかと少しだけ頬を緩めた。
それと同時に、お父さんと話し合った柴は、こちらに帰ってくるのかと心配になった。

もしかしたら、行ってしまう可能性だって……。

そこまで考えて私は首を振った。

⏰:08/07/22 11:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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