*柴日記*
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#423 [向日葵]
それでも、越は弱音を吐かない。
どんなに聞いても、何もないと微笑むだけ。
そんな越を、優しく包み、癒してくれていたのは、突然雨の日にやってきた、あの青年だけなのだった……。
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突然鳴り出した電話に祐子は回想の世界から帰ってきた。
「ハイハイ」と立ち上がって、電話の所まで行く。
「もしもし」
{あ……祐子さん……}
「柴……っ!?」
:08/07/19 15:42
:SO906i
:☆☆☆
#424 [向日葵]
「アンタどこにいるの!」と怒ってしまいそうになったが、怒鳴ったところで何も解決しないので、祐子はその言葉をを飲み込んだ。
{越は?}
「時間見れば分かんでしょ。まだ学校よ」
{そっか……}
祐子は密かにため息をついて微笑む。
どんな時でも、柴は越が第一か……。
「携帯に連絡したらいいでしょ。電話は無理でもメール見てくれるかもよ」
{あ……うん……ありがとうっ}
「柴」
{……何?}
祐子はしばらく黙った。
黙って、ここ最近の越をまた思い出していた。
「アンタの幸せを1番に考えなさいね……」
:08/07/22 10:31
:SO906i
:☆☆☆
#425 [向日葵]
例えそれが、越を悲しませる結果になっても……。
だって、柴はもう家族同然なのだ。
それならば、息子には、幸せになってもらいたい。
祐子はそう思った。
{……ありがとう}
呟くように言ってから、柴は電話を切った。
祐子も受話器を静かに置く。
「頑張りなさい……。柴……」
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明日から旅行か……。
突然だけど、お母さん許してくれるかな……。
「越、ここの問題ってどうしたらいいの?」
:08/07/22 10:36
:SO906i
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#426 [向日葵]
午後の授業中。
ぼんやりとノートを眺めていた私は、隣の美嘉に話しかけられた。
「あ、えとね……。反比例のグラフだから……」
突然、スカートに入れていた携帯が鳴りだした。
微かに聞こえるバイブ音に、美嘉も気づいたらしい。
目で「越の携帯?」と聞いてきる。
私も頷きながら「自分だ」と自分を指差す。
先生が歩いて皆が問題を解けているか見回っている。
こちらを見ていないか、近くにいないかを確かめてから、机の下でそっと携帯を開く。
メールだ……。
誰からだとボタンを押して、私は声が出そうになるのを抑える為口に急いで手を当てた。
:08/07/22 10:43
:SO906i
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#427 [向日葵]
柴……っ。
画面を見たまま固まった。
柴だ……柴だ……!
それしか頭になかった。
ハッと我に返って、メールを開こうとした。
「越!先生来た!」
美嘉が小声で知らせてくれた。
素早く携帯をポケットの中に入れて、美嘉にまた教えだす。
「で、この線がこことここを通ってるから……」
教えながら、先生が近くを通り過ぎて行くのを横目で見て、ホッとする。
バレてないバレてない……。
:08/07/22 10:48
:SO906i
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#428 [向日葵]
「なんか緊急のメール?返さなくて大丈夫?」
「実は……っ。……ううん、何でもない。桜が帰りにひき肉買ってきてってだけ」
なんだか、「柴から」とは言いにくかった。
柴の家庭事情を勝手に言ってはいけないと思ったし、4日前の事を話したら、柴が悪者になってしまいそうだったから……。
柴は何も悪くない。
そう思ってても、心のどこかで「どうして行ってしまったの」と思ってしまう自分が存在しているのも本当だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
休み時間になって、柴からのメールを見た。
:08/07/22 10:54
:SO906i
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#429 [向日葵]
<from 柴>
久しぶり……。すぐ連絡出来なくてゴメン。携帯取り上げてられてて、今返してもらったんだ。
父さんと、さっき話した。
色々、分かったよ。
結果的に、父さんも俺も不器用だっただけなんだって分かった。いっぱい話したいけど、越は今学校だから、電話出来ないしね。
……父さんが、2、3日泊まっていかないかって言ってる。
どうしようか迷ってる。
何に迷ってるかって言われたら上手く説明出来ないけど、正直父さんと真っ正面から向き合うのは緊張するし、照れくさいからかもしれない。
:08/07/22 11:02
:SO906i
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#430 [向日葵]
でもそういうのって大切なのかもしれないと思うから、こっちで過ごしてみようかなって思ってる。
思ってるけど……。
早く越に会いたいよ……。
俺が帰ったらさ、1番に越が顔見せてね。
―end―
お父さんと仲直り出来たのかと少しだけ頬を緩めた。
それと同時に、お父さんと話し合った柴は、こちらに帰ってくるのかと心配になった。
もしかしたら、行ってしまう可能性だって……。
そこまで考えて私は首を振った。
:08/07/22 11:15
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#431 [向日葵]
そしたら涙が流れてきた。
携帯を両手で握りしめて額に押しつける。
柴。
柴が幸せになるなら私はそれでいいよ。
でもね……幸せになるなら、私と、私達と一緒になる事で幸せになって欲しかったと思うのは、私のワガママかな……。
廊下の隅で、密かに泣いていると、肩を撫でられる感触に気がついた。
顔を上げれば、目の前に椿がいた。
何も言わず、静かに微笑んでいる。
「椿……」
「私も、越ちゃんみたいに心が潰れてしまいそうな時がありました……」
:08/07/22 11:23
:SO906i
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#432 [向日葵]
私は涙を拭きつつ椿の話に耳を傾ける。
「あまり、泣くという動作が出来ない私は、微笑む事が精一杯でした。……すると、ある方に怒られたんです。『こんな時まで平気なフリするな』って……」
クスクス椿は笑う。
私はそんな椿を、まだ潤んでいる視界で見つめた。
「だから越ちゃんも……無理なさる必要はないんですよ……」
そう言われると、また視界が滲んで、華奢な椿の肩に顔を埋めた。
「頭……ご、ちゃごちゃ……な……って……、何がた、だし……か、分からなくて……っ」
:08/07/22 11:29
:SO906i
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