*柴日記*
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#468 [向日葵]
「さて柴、色々話てもらうかな。リビングにやって来な。桜、空と苺連れて2階にいて」
桜はお母さんの指示に、従う。
私は柴とリビングへ向かった。
柴はさりげなく私の手を握る。
どうしたのかと柴を見れば、苦笑いを浮かべて耳元でこそこそ話す。
「1発くらい、殴り飛ばされそうで恐い……」
それにクスリと笑う。
「ま、ヤバイと思ったら歯を食い縛ったらいいよ」
リビングにある机をはさんで、お母さんと向かい合わせになる。
お母さんはタバコを1本取り出すと火をつけ、ふぅ……と煙を吐く。
:08/08/09 02:02
:SO906i
:☆☆☆
#469 [向日葵]
「柴。まずアンタの事を喋れる範囲で喋りな。帰って来たって事は、越のそばにいるんだろ?なら自分の娘を預ける相手が、どんな奴か知っておく必要があるからね」
「……ハイ」
柴は淡々と話し出した。
自分は本当は伊勢屋 大和と言って、何故あの場所にいたのか。
この4〜5日間何をやっていたのか。
お母さんは相づちを打ちながら柴の話に耳を傾ける。
「これで全部です」
「なるほどね……」
タバコをギュッと灰皿に押し潰し、最後に吸い込んだ煙を吐く。
:08/08/09 02:08
:SO906i
:☆☆☆
#470 [向日葵]
「柴、アンタは越のそばにいるってあたしに言ったけどさ、越の事本当に大切に出来る?中途半端な思いなんだったら、帰れって言うよ」
「越が俺をいらないって言わない限り、俺はいつも越の隣にいます」
そういえば、なんで柴は今お母さんに敬語なんだろう。
そう思いながら、隣にいると宣言してくれた柴を嬉しく感じていた。
「じゃ、越。今度はアンタが柴に話す番だよ」
そう言うと、お母さんは立ち上がって、桜達がいる2階へと行った。
:08/08/09 02:13
:SO906i
:☆☆☆
#471 [向日葵]
「越が俺に何を話すの?」
「……。柴は自分に闇があるって前に言ったよね」
柴はこくりと頷く。
「……私にもあるの。深い深い場所に、ずっと巣くってる小さな闇が」
それは、小さい頃。
親に捨てられた、ほんの少しの記憶。
「ただただ、その捨てられる時の事しか覚えてないけれど、私はあの瞬間で、小さいながら色々な事思った。」
自分が捨てられてしまうのは、お母さん達にとって自分はいらない存在で、どうして振り向いて、最後に手を降ってはくれないんだろうとか、そこまで嫌われていたのに、私はどうして気づかなかったのかとか……。
:08/08/09 02:20
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#472 [向日葵]
「お母さんやお父さんは私がいて幸せな時あったかな……とか……」
考えれば考える程、闇は私の中の光を食べていった。
そんな時、今のお母さんが私を見つけてくれた。
暮らしているうちに、この人は私がいて幸せなんだって思えるようになったけれど、同時に恐かった。
嫌いになられたらどうしようって……。
「お母さんはそんな気持ちになってる私に気づいてくれたの。そしたら……」
[越。あたしは絶対嫌いになんかならないよ。だからね、もっと壁を越えてあたし達に甘えな。それが迷惑だなんて、思わないからさ]
:08/08/09 02:27
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#473 [向日葵]
お父さんも、優しく笑って頷く。
[君は自分が嫌いなんだね。でもまずは自分を好きになろう。越、君のこの名はね、色んな試練の壁を乗り越えれる子になって欲しいからつけたんだ]
だからね、辛い事にぶち当たっても、頑張って行こう。
越1人でじゃなくて、家族で……。
その言葉が、どれだけ嬉しかったか。
当時の私は、緊張の糸が切れたように泣いた。
「だからね、柴の事も、仕方ないって思ったの。例え今は辛くても、きっと越えられる。ただ、時間がかかるけどって……」
:08/08/09 02:33
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#474 [向日葵]
「越……」
柴は座ったまま私を抱き締める。
柴の体温に、私は身を任せる。
「どこにも行かない。越のそばに、ずっといる……。だから、越の中の光を、見失わないで……」
うん。もう大丈夫。
だって私は、柴という光を見つけた。
柴が、そばにいてくれるなら、私は光を失う事はもう無い。
「ありがとう……柴……」
見つめあう。
綺麗な灰色の瞳には、私が映っている。
今度は緊張しない。
そう思いながら、近づいてくる唇を受けとめようとした。
:08/08/10 11:15
:SO906i
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#475 [向日葵]
「しばちゃんずっとここにいるのー!?」
突然入ってきた苺の声に、私と柴は勢いよく離れる。
「よかったぁー!いちごね、しばちゃんがいなくてずーっとさびしかったのーっ」
そんな私達の空気を知らず、苺は無邪気に立ち上がった柴の足に抱きつく。
そしてエヘヘと笑う。
「ごめんお姉ちゃん」
両手を顔の前に合わせながら、桜がリビングへと入ってくる。
そんな桜を引っ張って部屋の隅へ連れて行く。
「もしかしてずっと隠れてたなんて言わないよね」
:08/08/10 11:20
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#476 [向日葵]
小声で問う。
「いや、それは無い……よ?」
「桜、人の目見て話そうか」
「別に邪魔するつもりはなかったのーっ。苺が勝手にトタタターって……」
「しかし柴も面白いよな」
間に空がニョッキリと出てきて喋りだす。
「面白い?」
「越姉鈍いからさ、気持ちが通じる前も肩すかし、通じても肩すかし。こりゃ越姉のファーストキス奪うのはまだまだ先になりそうだなー」
10歳が生意気な……。
:08/08/10 11:25
:SO906i
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#477 [向日葵]
「ま、私達のいる所では、イチャイチャ出来ないと思った方がいいかもね」
イチャイチャって……。
ちらりと苺と遊んでいる柴を見る。
何はともあれ、柴がまたこの家にいる。
それが私は嬉しい。
また皆で生活を共に出来るのが嬉しい。
柴、おかえりなさい……。
:08/08/10 11:27
:SO906i
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