*柴日記*
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#536 [向日葵]
みよは「ふーん」と言って肌色のクレヨンを握る。
隣では楽しそうに、でも真剣に苺が絵を描く。
先生は皆の絵を見回っていた。
そして苺の絵を目に止める。
「苺ちゃんは何描いてるのー?」
先生が近づいていた事を知らなかった苺は気づくとすぐに絵を隠した。
だが小さな手では全ては隠れきれていない。
「せんせいみちゃだめっ!せんせいみちゃったら、しばちゃんたちにきょう、なにかいたか、いっちゃうでしょっ?」
「しばちゃん?……ああ、苺ちゃんとこの頃一緒に来るお兄ちゃん?」
:08/08/30 03:24
:SO906i
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#537 [向日葵]
「うんっ」
「いいなぁ、あんなカッコイイお兄ちゃんで。先生も欲しいよー」
先生は軽い気持ちで言っただけだった。
しかし苺の表情は曇り、険しくなっていった。
「あげないもんっ!せんせいにしばちゃんぜーったいあげないもんっ!」
クレヨンと画用紙を持つと、苺は教室の隅へと行ってしまった。
先生は呆然としてしまう。
何故なら苺があそこまで怒ったのは初めて見たからだ。
いつもはおっとりとしていて、聞き分けのいい子なのにと、先生は苺を見る。
:08/08/30 03:29
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#538 [向日葵]
苺はすっかり怒っているのか、こちらに背を向けてまた絵を描いている。
その小さな胸に、どんな思いを秘めているのか、先生は突然の苺の怒りに戸惑っていた。
苺は一生懸命絵を描いていた。
大好きな人を思い、その人の笑顔を思い浮かべ、喜んでくれるかとワクワクしていた。
その人に1番に見て欲しいから、先生にだって見せたくはないのだ。
先生は、1番大好きな人じゃない。
1番大好きなのは……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「苺が?」
:08/08/30 03:35
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#539 [向日葵]
あっという間に時間は過ぎ、保育園に柴が迎えに来た。
「ええ。ちょっと怒らせてしまいまして……。私が原因だとは思うんですが、もしかしたら何かあったのかなぁって……」
柴は足元にいる苺を見た。
苺は拗ねるみたいに口を尖らせ、柴の足にくっついている。
「苺ちゃん、じゃあまた明日ね。さようなら」
しかし苺は挨拶をしなかった。
柴は少し困った顔をして、苺の頭を軽くポンポンと叩き、挨拶を促す。
少しからかうように、また先生が言った。
「さようなら言ってくれないと、柴お兄ちゃんは先生がもらっちゃうぞーっ」
:08/08/30 03:41
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#540 [向日葵]
すると苺は先生を睨みつけ、目にうっすら涙を浮かべる。
「せんせいなんて、だいっきらいっ!」
苺は保育園を飛び出して行ってしまった。
「苺っ!すいません、失礼します」
柴は急いで後を追いかけて行った。
小さい子の足は思ったより早い。
なので柴は更に急ぐ。
転びでもしたら大変だと焦りながら。
そしてようやく捕まえる。
「コラ苺っ!先生にあんな事言っちゃだめだろっ!」
:08/08/30 03:45
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#541 [向日葵]
目の高さまで苺を抱き上げて、叱りつける。
苺は口を波のように歪ませると、大きな目を潤ませる。
泣く。
そう思った瞬間、体を軽く反って大声て苺が泣き出した。
「し、しばちゃんのばかぁーっ!いちご、わ、る、く、ないも、ぉーんっ!!」
うわーん!と甲高い声で泣かれれば、柴は慌てる。
苺をちゃんと抱くと、家まで急いで帰って行った。
その間も苺の機嫌は治る事は無かった。
「珍しい。苺が怒るだなんて」
:08/08/30 03:51
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#542 [向日葵]
帰ってきた越に、柴はぐったりとしながら訳を話した。
あれから苺は自分の部屋にこもってしまった。
柴がいくら呼んでも返事をしない。
強行突破と思い、ドアを開けようしたらしっかりと鍵がかけられていた。
途方にくれた柴は、大人しく越の帰りを待ち、越になんとかしてもらおうと考えていたのだ。
「ご機嫌ななめでも話を聞く限り今日のは酷いなぁ。ちょっと行って来るよ」
「……ごめん」
「気にしなくていいよ。すぐに「しーばちゃん」って来るから」
:08/08/30 03:55
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#543 [向日葵]
越は柴を安心させるよう微笑むと、リビングを出て2階へ行き、苺が閉じこもっている部屋まで行く。
立ち止まってしばらく中の様子をドア越しに読み取る。
そして優しくノックをする。
「いーちーご。いーれーて」
柔らかく、ちょっとおどけたように言ってみる。
返事はない。
でも越は辛抱強く待つ。
もう1度、優しく名を呼ぶ。
そして再び待つ。
するとゆっくり鍵が開けられた。
越は鍵が開けられた速度と同じくらいドアを開ける。
苺はベッドを背にしてちょこんと床に座っていた。
:08/08/30 04:00
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#544 [向日葵]
越はその隣に座る。
苺の目は、泣きすぎか擦りすぎか、赤くなってしまっていた。
「先生に大嫌いって言ったのはどうして?」
叱りつける訳ではなく、頭を撫でながら優しく問う。
すると段々苺の目に涙がたまってきた。
そして子供特有のせわしないしゃっくりをしながら訳を話し出す。
「しばちゃん、は、い、ちごの、おに、ちゃ、だ、もんっ……。せんせ、しばちゃ、が、ほし、とか、もら、ちゃうとか、いったぁ……っ!」
つまり。
苺は柴が誰かに取られるのが嫌だと妬きもちを妬いていたのだ。
:08/08/30 04:07
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#545 [向日葵]
遊ぶのは自分だけ。
自分だけのお兄ちゃん。
だから誰も近づくのは許さない。
そういう気持ちが強くなって、今日みたいな事が起こったのだろう。
しかし……と越は思う。
自分は柴と恋人同士にある訳なのだがそれはいいのか?と。
「柴がお姉ちゃんに抱きついたりしてるのはいいの?」
「おねえちゃんは、い、いの。いちご、は、おね、ちゃんがすき、だからっ」
基準がよく分からないな、と、苦笑いを浮かべていると、苺はそばに置いてあった丸めている画用紙を越に渡した。
:08/08/30 04:11
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