*柴日記*
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#570 [向日葵]
しかし敵がいなくなればいなくなる程、彼女に近づく人間もいなくなっていった。
今度は噂の一人歩きや陰口がつきまとう。
自分らしく生きていく一方で、彼女は人とも孤独とも闘い続けていた。
教室に入れば、やはりと言うかもう誰もおらず、差し込むオレンジ色の夕日がただただ眩しかった。
私はなんの為に生まれてきたのだろう……。
何故こうでしか、生きれないんだろう……。
考えればキリがない事は分かっているので、鞄を持つと足早に教室を去った。
:08/09/09 01:57
:SO906i
:☆☆☆
#571 [向日葵]
下駄箱で靴を替えて、歩き出そうとした時だった。
「うわぁぁぁっ!」
頼りない叫び声と共に色々な落ちる音が聞こえる。
祐子は既視感を覚えてそろりと音がした方を向く。
するとやっぱりと言うか、鞄を投げ出し、ファスナーがちゃんと閉まっていなかったのか、中身が四方八方に散らばっている。
そしてその鞄の主は、ありえない格好で転んでいた。
奇跡としかいいようがない頭に上靴が片方乗っている姿は、可笑しさを通り越して呆れた。
「おい……」
とりあえず声をかける。
:08/09/09 02:03
:SO906i
:☆☆☆
#572 [向日葵]
青年は起き上がると辺りを見回し、吹っ飛んでいた眼鏡をかけると、祐子の方を見た。
やっぱり……。
今日本をぶちまけていた青年だ。
青年はへらぁっと笑った。
「あぁどうも。また会ったね」
「どんくさいにも程があるだろお前」
頭に乗っていた上靴を取って顔の前に出す。
「色々考え事してたら足が滑っちゃって」
アハハハと笑うこののんびりさはどこからやって来るのだと裕子は目を半目にする。
:08/09/09 02:07
:SO906i
:☆☆☆
#573 [向日葵]
青年はよいしょと立ち上がろうとして固まる。
「……どうした?」
「足が痛くて立てないみたいなんだぁ」
またアハハハと笑う。
……コイツある意味すげぇ……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちゃんと乗ったか?」
「アハハ、ごめんね迷惑かけてー」
まったくだ……。
立てない青年を放っておく訳にもいかないので、祐子は青年をおぶる。
:08/09/09 02:10
:SO906i
:☆☆☆
#574 [向日葵]
「力持ちだねー」なんてのんきに背後で喋るものだから祐子はイラッとした。
なんであたしがこんな目に合わなくちゃならないんだっ!!
ふと、前に突きだしている彼の手を見れば、綺麗な白い、けれどしっかりした手だった。
祐子の手は、毎日生傷が絶えない。
残ってしまうだろう傷痕だってある。
こんなどんくさい奴と、自分と、一体何がどう違うか、祐子には分からなかった。
保健室に着いたはいいが、中には誰もいなかった。
置いてあるホワイトボードには“職員室にいます”と記されている。
:08/09/09 02:16
:SO906i
:☆☆☆
#575 [向日葵]
待っていてもいつ帰ってくるかなんて分からない。
ならばさっさと手当てをして帰ろう。
「座れ」
素直に座った彼の近くにある救急セットから湿布と包帯を取り出す。
靴下を脱がせば彼の足首は見事に腫れていた。
「くじいたみたいだな。とりあえず後で病院行けよ」
「病院はやだなー。僕薬が嫌いなんだよねー」
知るか。
「にしても手慣れてるね」
「まぁな」
「どうして?」
「関係ねぇだろーが。おら、終わったぞ。あたしチャリだから家まで送ってやるよ」
:08/09/09 02:20
:SO906i
:☆☆☆
#576 [向日葵]
またおぶろうと思って屈もうすると青年は祐子の手を引いて、目の前の空いているもう1つの椅子に座らせた。
「オイなんだよ。さっさと帰っぞ!」
「まだ君の手当てが終わってないよ」
「はぁ?怪我なんざしてねぇよ」
「痛くないの、これ」
ふわりと彼の手が、彼女の手に触れる。
それが、さっき見た、綺麗で微かに羨ましく思った手だと思えば、祐子は払いのける。
「い、痛くなんかないっつーの……っ!」
顔が無駄に熱い。
:08/09/09 02:25
:SO906i
:☆☆☆
#577 [向日葵]
なんだコレ!!
しかし構わず彼はまた触れ、目の前で微笑む。
眼鏡の奥の柔らかい印象のたれ目が細められる。
「でも君、女の子だから。傷残っちゃ困るでしょ?」
「は……っ!?お、お、女の子ぉっ!?」
声が微かに裏返る。
ローラー付きの椅子を利用して、ザッと後ずさる祐子。
「寒い事、い言ってんじゃねぇぞ!そう言えば黙って手当て出来ると思ってんのか!」
「そうじゃないよ。一般論述べただけ」
:08/09/09 02:29
:SO906i
:☆☆☆
#578 [向日葵]
「難しい事言ってんなっ!」
「ハイハイ。とりあえず見せてね」
消毒駅を浸した脱脂綿が頬に当たる。
このくらいの傷なんて慣れっこだ。
もっと酷い怪我だってした事がある。
なのに何故、消毒する時、痛くないかドキドキするように、こんなにも心が乱れているのだろう……。
なんとなく、祐子は落ち着かなかった。
「ハイ、いいよ。次は気をつけてね」
「気をつけれたらな」
「ん?」
:08/09/15 00:59
:SO906i
:☆☆☆
#579 [向日葵]
「……何もない。家まで送る。さっさと乗れ」
青年は素直に祐子の背に乗る。
祐子は自転車通学していたので、彼を後ろに乗せるつもりでいた。
「あっ」
突然青年が祐子の耳元で声を上げる。
「うるせーな……。なんだっ!」
「君の名前思い出した!森下祐子さんだよね」
「だったらなんだ……」
「恐いって有名な」
「だから何」
:08/09/15 01:04
:SO906i
:☆☆☆
#580 [向日葵]
「鬼みたいだって噂の」
「だったら何なんだよっ!」
質問しているのに青年は聞いてるのかいないのか話続ける。
祐子は苛立ってつい声を荒げる。
いますぐ手を離して青年を乱暴に降ろしてやりたい衝動にかられるが、深呼吸して必死に感情を抑える。
「うーん……納得出来ない。やっぱり噂は噂だね。そう思わない?」
「てめぇ殴られたいのか……だったら何だって言ってんだろうがっ!」
「こんなに優しいのに、皆はどこを見ているんだろう……」
:08/09/15 01:09
:SO906i
:☆☆☆
#581 [向日葵]
祐子はぴたりと足を止める。
本気でそう思ってる風に喋るから、祐子は信じられない気持ちでいっぱいだったが、すぐに思い直す。
あぁ……コイツは変人なんだ……。
あたしを優しいだなんて思うだなんて、よっぽど頭がおかしいのだろう……。
「おいお前」
「何?森下さん」
「あたしだけ名前バレてるなんて気分悪い。お前、名前は……?」
コイツは頭がおかしい。
女の子扱いするし、寒い事言うし、ましてや自分と普通に接する。
そう思っていながら、祐子は少し、ほんの少しだけ、彼を知りたいと思っていた。
:08/09/15 01:14
:SO906i
:☆☆☆
#582 [向日葵]
関わる事は、もう無いだろうけど。
後ろから、クスリと息が漏れる音が聞こえた。
「神田 一朗(カンダ イチロウ)だよ」
――――――――
――――――――――――
「って言うのが出会い」
越は絶句する。
母は確かに荒れていそうな感じだったが、今は大人になり、大人の振る舞い方で人と接しているから、喧嘩で人を、ましてや血が出るほど殴っている姿が想像出来なかった。
「それでよく一朗さん口説き落としたね」
柴は越と違い平然としていた。
:08/09/15 01:19
:SO906i
:☆☆☆
#583 [向日葵]
祐子はカラカラ笑い、エプロンを着け始める。
「ま、色々ある訳よ。さて、これ以上越がドン引きするといけないから、夕飯作るわ。チビ共の相手してやってて」
柴は頷くと越の背中を押してリビングへと戻って行く。
それを見ながら、祐子はまた思い出す。
「口説き落とした……ねぇ……」
―――――――――
――――――――――――
「もーりしーたさんっ」
体育館裏で煙草を吸おうとしていた祐子は一朗の姿を見るなり呆れた表情を浮かべて、口にくわえていた煙草をポトリと落とした。
:08/09/15 01:25
:SO906i
:☆☆☆
#584 [向日葵]
「なんなんだ……お前は……」
「神田一朗。前に教えたじゃないか」
関わらないだろうと思っていた。
だが神田一朗は何度も祐子の前に現れては無邪気な笑みを向ける。
「神田……なんでここにいんだよ……」
「森下さんの姿が見えたから。どこ行くのかなって追ってきたんだ」
だから何故追ってくるんだと言いたいのを飲み込む。
またくだらない理由が返ってきそうだからだ。
許可もしていないのに、神田一朗は祐子の隣に腰を下ろす。
暖かな日差しに目を細めて、その温度を慈しむかのように微笑む。
:08/09/15 01:32
:SO906i
:☆☆☆
#585 [向日葵]
祐子はスカートの上に落ちた煙草を取り、またくわえる。
ちらりと神田一朗の方を見るが、対して気にした風はない。
祐子の視線を感じた神田一朗は、祐子の方へ視線を向け、首を傾げる。
「何?」
「別に……。口煩い教師達みたいに吸うなとか言うと思って」
「確かに法律上では未成年の喫煙は禁じられているし、女性は将来妊娠するだろうから控えるべきだとは思うけどね。そるに先生達に見つかれば停学は免れる事は出来ない確率の方が大きいけど」
「難しい事言うなっつってんだろ!頭痛くなるっての……っ」
「僕は先生じゃないし、森下さんの自由だから」
神田一朗はそう言うと微笑む。
:08/09/15 01:39
:SO906i
:☆☆☆
#586 [向日葵]
そしてまた空を眺めた。
祐子はつられて見上げる。
いつもと同じ空だ。
これと言って変わりはない。
なのに、今はどうしてこんなに穏やかな気持ちにさせるのだろうか。
まどろみそうになって祐子はハッとした。
「神田、教室に戻れ」
「なんで」
「いいからっ!」
無理矢理立たせて背中を押した。
神田一朗は不思議そうに後ろを振り返りながら体育館の角を曲がった。
:08/09/15 01:43
:SO906i
:☆☆☆
#587 [向日葵]
ホッとしたのも束の間。
反対側、祐子の背中の方から誰かがやって来る。
「コラ森下っ!またお前か!!」
やっばりと言うか、来たのは祐子のように煙草を吸っている生徒はいないかと見回りに来た教師だった。
「なんだよ。煙草吸ってお前に迷惑かけたかよっ!」
「あのな、森下。吸っちゃいけないって言う社会のルールがあるんだよ」
社会?ルール?
そんなもんくそくらえだ。
大した理由もないのに頭ごなしにダメだと言う。
だから祐子は納得出来なかった。
:08/09/15 01:47
:SO906i
:☆☆☆
#588 [向日葵]
「社会のルールかよ。じゃあ停学でもしやがれっ!あたしは痛くも痒くもねぇんだよ!!」
教師は祐子にたじたじだ。
下手をすれば祐子が飛びかかってくるのではないかと心配だからだ。
そんなのだから、祐子の心は更に納得出来なくなる。
結局祐子は何も見なかった事にされ、煙草は没収された。
――――――――…………
廊下を歩いている時だった。
「森下さんっ!」
振り返れば、向こうから神田一朗が走って来る。
そしてお約束のように何も無い所でスッ転ぶ。
:08/09/15 01:52
:SO906i
:☆☆☆
#589 [向日葵]
祐子はため息をついて彼に近づく。
「お前には気をつけると言う言葉はないのか……」
「そんな事より、さっき先生に煙草見つかったんじゃ……っ。教室に歩いて行く時、怒鳴り声が聞こえて……」
「見なかった事にするってよ」
「そ、そっかぁ……」
祐子はハッと気づき、周りに目を向ける。
あの祐子と話していると、神田一朗が変な目で見られているのを視線で感じた。
―ドウイウ関係?
―下僕?パシリ?
―マサカ恋人?
―違ウダロ。森下ガ良イヨウニ使ッテルダケダロ。
:08/09/15 01:58
:SO906i
:☆☆☆
#590 [向日葵]
直接言う事も出来ない馬鹿共。
いや……1番の馬鹿は、神田一朗か……。
関わらなかったら、こんな事言われる事も無かったのに……。
「――でね、森下さん」
「神田」
祐子は神田一朗の話を遮る。
そして冷たい目で彼を見つめる。
「あたしに二度と関わるな。お前がいたら、目障りなんだ」
神田一朗は固まる。
これでいい。
祐子は回れ右をして去って行った。
:08/09/15 02:02
:SO906i
:☆☆☆
#591 [我輩は匿名である]
:08/09/16 00:44
:SO906i
:☆☆☆
#592 [向日葵]
すいません

上も私です

:08/09/16 00:45
:SO906i
:☆☆☆
#593 [向日葵]
「オイ一朗」
一朗の友人が呼びかける。
「お前何急に全力疾走してんだよ」
「ちょっとね」
「ってかお前、森下祐子となんか喋んない方がいいぞ。それでなくてもお前先生から可愛がられてる優等生なんだからさ」
一朗は運動はともかく、勉強では優秀だった。
それは2年生の間では有名で、注目はされていた。
だから、問題児である森下祐子と絡めば悪影響が出るとでも友人は思っているのだろう。
「優等生……ね……」
彼女は珍しがる訳でなく、普通に接してくれたから、新鮮だった。
:08/09/16 00:52
:SO906i
:☆☆☆
#594 [向日葵]
自分に向かって呆れた表情や、怒った表情、しまいには殴られそうになるけど、1つ1つ彼女を知る度楽しくなっていった。
「……もしかして」
[うっとおしい]
あの言葉の意味は……。
―――――――――…………
下校の音楽が鳴る。
それを聞きながら、誰もいない教室で祐子は机に突っ伏して目を瞑っていた。
珍しく、今日は教師との口喧嘩だけだったから、暴れたりないと言うか……。
「帰ってサンドバッグでも叩こうかね……」
:08/09/16 00:57
:SO906i
:☆☆☆
#595 [向日葵]
立ち上がり、沈みかけの夕日を見る。
今日も1日が終わる……。
教室を出て、下駄箱へ向かう。
靴を履き替えて、自転車置き場へ向かおうとした時、勢いよく引っ張られた。
「森下さ……」
この声は……。
「神田?」
神田一朗は祐子を追いかけてきたのか、息を切らせて祐子の腕を掴んできた。
下校時間なので校舎に残っていた生徒は帰る為下駄箱へやってくる。
祐子は手を払い退け、歩き出した。
:08/09/16 01:00
:SO906i
:☆☆☆
#596 [向日葵]
「森下さん話を聞いて」
「話なんかない」
祐子はカゴに鞄を入れ、鍵を刺す。
「僕はあるんだ!だから聞いてっ」
自転車のストッパーを外し、自転車を出す。
またがり、ペダルに足をかけると同時に、神田一朗は前に立ちはだかった。
「聞いてくれなきゃのかないよ」
ハンドルを傾けて方向転換しようとするも、また前へやって来て通せんぼする。
祐子は眉間にシワを寄せると長いため息を吐いた。
:08/09/16 01:04
:SO906i
:☆☆☆
#597 [向日葵]
「昼間あたしが言った事忘れたのか?」
「すっごく傷ついた」
「本音だ。私は本音しか言わない」
「嘘だ。あれは僕の為に言ったんでしょ?」
祐子はハンドルに肘をおいて頬杖をつく。
「だとしても事実には変わらない。あたしなんかと関わればお前は損する。そんな役にはなりたくない。だからうっとおしい。それだけの事だ」
「僕が誰と関わろうが僕の自由だっ!だから損しても誰の責任でもない。僕が悪い」
:08/09/16 01:08
:SO906i
:☆☆☆
#598 [向日葵]
だからそういうのも嫌だって言うのが分からないか、このタコは……。
「あたしなんかといても何も学べやしない。とっとと消える事をお勧めしてやるよ」
ハンドルを握り、自転車を勧めようとすると、神田一朗はかごを持ってそれを阻止する。
思っていたよりも力が強かったから、裕子は驚く。
「おいっ!殴られてぇのかっ!いい加減にしろっ!!」
「学ぶ事を前提として付き合う友達なんかどこにもいないよ。僕は一緒にいたいと思う人しかいない」
真剣な言葉に、祐子は戸惑う。
:08/09/16 01:12
:SO906i
:☆☆☆
#599 [向日葵]
「だったら聞く。なんでお前はあたしと一緒にいようとする」
ほとんど睨むようにして、祐子は神田一朗を見つめる。
どこからか冷たい風が吹いてきて、祐子のウェーブがかった髪の毛を揺らす。
最後にフワリと吹いてから風が止んだ時、一朗は微笑んだ。
「……好きだからかも」
祐子は神田一朗が一瞬何を言ったか分からず固まる。
そして意味を理解すれば、これが叫ばずにはいられない。
「はぁぁぁぁぁっ!?」
口があんぐりと開く。
本当に信じられなかった。
:08/09/16 01:16
:SO906i
:☆☆☆
#600 [向日葵]
しばらく口を開けたまま固まった祐子は、「ありえない」と頭を振り、自転車を進ませた。
それに神田一朗はついてくる。
「森下さん、どうしたの?」
「お前は宇宙人か。あたしを好き?馬鹿もやすみやすみ言え。それと寝言は寝てから言え」
「馬鹿な事でもないし、寝言でもないよ。本気の気持ち」
それがおかしい。
「そんな事言ってないで、大好きな本でも読みあさってろよ」
「僕は本気だっ!」
いきなり大声を出されたので、びっくりした祐子は足を地面につけながらよろける。
:08/09/16 01:22
:SO906i
:☆☆☆
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