*柴日記*
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#630 [向日葵]
>>623

誤]取り戻しす
正]取り戻す

⏰:08/09/20 03:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
急な光に眩しいと思いながら周りを見渡す。

「……保健室?」

「そうだよ」

シャッとカーテンが開いたと思えば、そこに神田一朗が立っていた。

「風邪らしくって、熱が38度もあったんだ。家の方に電話してきた所だから、もう少し寝てていいよ」

ベッドのそばにある椅子に神田一朗は座る。
そしてあのたれ目がちな目で優しく祐子を見つめる。
祐子は落ち着かなくてそわそわしだす。

「森下さんって軽いよね。喧嘩強いから筋肉もついてるかと思ったけど柔らかいし」

⏰:08/09/25 01:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
ここにいると言う事は神田一朗が運んだからだろう。
そしてその持ち上げた感想を聞かされ、祐子は顔を赤くする。

「だから……っ、何が言いたい……っ」

神田一朗はゆっくりと手を伸ばすと、祐子の髪に触れ優しく撫でる。
その柔らかな手つきに、祐子の胸は跳ね上がる。

「女の子だからって言うのもあるけど、僕にとっては森下さんは特別な女の子だからね、自分で自分の身を守るんじゃなくって、僕が守ってあげたいと思うんだ」

決意表明かのように、まっすぐに祐子を見つめ、そう言う。
ギュッと目を瞑りたい衝動に祐子はかられる。

⏰:08/09/25 01:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
[女の子に囲まれてる翠を助けてくれたの]

あぁ、これじゃ両親と同じではないか。
ゆくゆくは恋愛?そして結婚?
なんとも馬鹿馬鹿しい……。

そう思っていても、この優しい綺麗な手をはねつけれない祐子だ。
それどころか心地よくて眠気すら感じる。
でもそれは熱のせいだという事にする。

「祐子……」

「ん?」

「森下さんなんて痒い呼び方するな。呼ぶなら下の名前で呼べばいい……」

⏰:08/09/25 01:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
一層笑みを深くする神田一朗。
息をするのを忘れてしまいそうになる。

「僕も一朗でいいよ。祐子さん」

下の名前だと、余計に痒くなってしまった。

――――――――
―――――――――――……

若かったんだなあたし……。

食事も終わり、食後の一服と煙草をくわえながら祐子は思う。

あんなにうろたえなくても良かっただろうに。

それは仕方のない事なのだ。
喧嘩しかなかった毎日に突然舞い降りたロマンス。
慣れれる訳がない。

⏰:08/09/25 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
結婚だってするとは思ってもみなかったのも本音だ。

一朗は思ったよりもずっと強引で、しつこかった。

――――――――
―――――――――――……

「祐子さん、一緒帰らない?」

「なんでお前と……」

3年にもなんとかあがれた祐子は、相変わらず一朗に追いかけられていた。
それはもう忠犬としか言いようがないくらい、毎時間、毎日……。

しかし祐子は、段々と自分の気持ちを自覚しつつある為、前のように強く拒否出来ないでいた。

⏰:08/09/25 01:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
それにもまた困ったし、戸惑っていた。

「まさかまた喧嘩?」

ずずいと顔を近づけるものだから、祐子はびくっとしながら数歩素早く後ずさる。

「あ、あたしが喧嘩しようが何しようが自由だろっ!それに喧嘩じゃない!母親に頼まれてる事があんだよっ!」

「なぁんだ買い物か。じゃあ一緒に行こっかぁっ」

と突然手を握り指を絡めるものだから祐子は更にうろたえる。

「だからついてくんなぁぁぁっ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

頼まれていたものとは、翠が趣味としているお菓子作りの為の材料だった。

⏰:08/09/25 01:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#637 [向日葵]
「祐子さんは料理しないの?」

「出来なくはない。でもめんどくさい」

ポイポイと頼まれてる材料をカゴに入れながら祐子は答える。
すると一朗が「んー」と唸ったので、片眉を上げて振り向く。

「なんだよ」

「不味くはないんだよね?」

「だから出来なくはないって……」

「じゃあお弁当作ってよ」

口をポカンと開けて一朗を見る。
一朗は目を輝かせたまま祐子を見る。

⏰:08/09/25 01:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#638 [向日葵]
「……誰が誰に何で」

訊きたい事をいっぺんに詰め込み訊く。

「祐子さんが、僕に。食べたいからっ。なんかそりゃ好きな人の手料理って食べたいし」

恥ずかし気もなく“好きな人”だなんて言うから祐子は背筋がゾワッとしながらも耳が熱くなるのを感じる。

「めんどくさいっつったろっ!」

「そう言いながら作ってくれるんだよね祐子さんは。前だって調理実習のカップケーキくれたしっ」

くれ、とせがまれていたが、祐子は嫌だと言っていた。
しかし本当にくれないと分かればしょんぼりするのが一朗なので、可哀想だと思って前はやったが……。

⏰:08/09/25 01:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#639 [向日葵]
「あれはあまりがあったからだ!そうでなきゃなんでお前にやらなきゃならんっ!」

「分かったよ。そこまで否定しなくてもいいじゃない」

苦笑いを浮かべて、一朗は祐子の持っているカゴを持つ。

取り返そうとするも、また手を握られる。
思わず固まる。
これではまるで恋人同士。
顔が熱いのなんて気づかないフリをする。
一朗は何とも思わないみたいに歩く。
それを見るとなんだか腹が立ってくる。

どうしてここまで振り回されなきゃならない……。

祐子に反発心が芽生える。
主導権を握られるのは好きじゃない。

手だってなんだか汗をかいてるみたいだし……。

⏰:08/09/28 00:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#640 [向日葵]
買い物を終え、自転車のカゴに荷物を入れて、ハンドルを握ると、その上から長い指をそなえた手が被さる。

「――っ、なにっ!」

「暗くなるから送るよ。毎日送らせてくれずに自転車で逃げるように帰っちゃうからちょっと不愉快だったんだよね」

不愉快って……。

にっこりと、トゲを刺してくる一朗に、苦虫を噛み潰したような顔をする祐子。
有無を言わさず、後ろに乗せられ、一朗と2人乗りで帰る事になった。

沈みかけの夕日が、なんとも幻想的で綺麗だった。

⏰:08/09/28 01:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
それも、今までで1番綺麗な気がする。

そう思うのは、どうしてだろう……。

握られたり、重ねられたりする自分の手をそっと撫でる。
自分の手が、彼の手のように綺麗になったように感じる。
自転車で進む度ふわりと吹いてくる風が心地よい。
その度、祐子の少しウェーブがかった髪もふわりとする。

ぼんやりと過ぎ行く景色を見ていたら、一朗から口笛が聞こえてくる。

「さて、なんでしょう」

その問いに、祐子は口の中でさっきのメロディを繰り返す。

⏰:08/09/28 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
「……赤とんぼ?」

「正解っ」

そう言うと一朗は今度は口ずさむ。
その声に、祐子は耳を傾ける。

「その歌って、寂しい感じがする……」

ぼんやりと祐子は言う。
一朗は「そう?」と訊き返し、祐子の返事を待つ為に歌うのを止めた。

「夕焼けって寂しいイメージがする。そこに1匹だけ赤とんぼが飛んでる気がする。それってなんだかすごく……切ない」

夕日が嫌いなんじゃない。
さっきも思ったように綺麗だと感じるし、むしろ好きだ。

⏰:08/09/28 01:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
ただ、祐子は教室で1人ぼっちでいる自分と、赤とんぼのイメージを重ねていた。
どこか、孤独な、その様を……。

「……祐子さん、僕がいるよ」

「は……?」

「寂しくないよ。僕がいるから」

「だ、誰が寂しいなんて言った……っ。あ、あたしはただ、そんなイメージがって……」

「うん……」

納得したのか、それとも適当に頷いたかは分からない。
ただ、彼は祐子の思いを感じ取ったようだった。

⏰:08/09/28 01:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
心に、無遠慮に侵入してくる……。
居心地が悪くないのがまた困る。言うんじゃなかった……。

「なぁ神田」

「一朗でいいよ」

「かーんーだ」

意地でも呼びたくないと思い、一朗の言葉を無視する。
クスクス笑う一朗は「何?」と言う。

「手を握ったりするをやめてくれないか?」

「どうして?」

「…………手汗をかくから」

大した理由が浮かばない。
本当は恥ずかしいなんて絶対に言いたくない。
何故か、一朗の好きだと言う態度には反抗したくなる。

⏰:08/09/28 01:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
「緊張するって事?」

「じゃない」

一朗はただクスクス笑う。
こっちの考えを見透かされているみたいで、祐子は居心地が悪くなる。

「やめてくれない?そうやって何でも分かった風に振る舞うの」

「だって祐子さんは分かりやすいから」

「何それ。単純馬鹿って言いたいのかよ」

「素直で可愛いって事」

そんな風に言う一朗ね背中を拳で叩く。
「痛い痛い」と、さほど痛くなさそうな声を出して、また笑う一朗。

⏰:08/10/04 00:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
居心地が悪い。
ムカつく。
寒いやつ。

そう思うのに、そばにいる事を許している自分はなんなのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あらあらあら!まぁまぁまぁ!」

翠がたまたま外へ出てくるのと、祐子を乗せた一朗が家に着くのとは同時だった。

祐子は頭を抱えてうなだれる。

この事態だけは避けておきたかった……。

案の定、翠は興奮に頬を紅潮させ目をキラキラさせる。

⏰:08/10/04 00:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
一朗は祐子が怪我しないようゆっくりとブレーキをかけて止まる。祐子をおろし、自分もおりると、翠に向き直りにっこり笑う。

「初めまして。神田一朗です。祐子さんをお送りさせて頂きたくて、やって来ました」

「あらあらご丁寧に。祐子ちゃんのママの翠です」

「挨拶しなくていいからっ!ホラママ」

「翠ちゃんっ!」

「……翠ちゃん、家に入ろう」

翠は口を尖らせて祐子のそばをすり抜けると、一朗の前に行く。
そして一朗に負けないくらいにっこり笑う。

⏰:08/10/04 00:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「一朗君、ビーフシチューは好きかしら?祐子ちゃんを送ってくれたお礼をしたいのだけど、食べていかない?」

「ち、ちょっと翠ちゃんっ!」

こんな居心地が良いような悪いような訳の分からない気持ちにさせられる奴と食事をするなんて嫌だと思った。

せっかくの美味しい料理すら味が分からなくなる。

「好きです。邪魔にならないのでしたら、お言葉に甘えたいです」

「お前も何言ってんだよ!」

「じゃあ決まりね」

「あたしを無視するなぁぁっ!」

⏰:08/10/04 00:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
結局、同じような空気をもつ2人には勝てず、渋々祐子は一朗を招き入れる事を承諾した。

「着替えてくる」

「手伝おうか?」

「殴られたいのか」

「簡単には殴られないよ」

真実なのでイラッとした祐子は口を真一文字にキュッと引っ張り足を鳴らして階段を上がっていった。
そんな姿を一朗は見てクスリと笑う。

「一朗君、好きな場所に座って」

いつにもましてルンルンな翠は、そう言いながらいつも祐子が座る場所の隣をさりげなく勧める。

⏰:08/10/04 00:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#650 [向日葵]
それを一朗は知らないので、勧められるがままに座る。

「ありがとうございます」

翠は笑顔で返す。
そしてソワソワするので、一朗は翠に問う。

「どうか、なさいましたか?」

「あなた、祐子ちゃんが好きなのよね?」

「ハイ。とても」

恥ずかしがるわけもなく、一朗はそう答える。
翠は更に興奮し、「キャー!」と軽い叫び声をあげる。

「素敵!私あなたなら祐子ちゃんをお嫁にあげてもいいわっ」

「それは光栄です」

⏰:08/10/04 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#651 [向日葵]
>>645

誤]一朗ね
正]一朗の

⏰:08/10/06 01:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#652 [向日葵]
そこでハタッと翠は動きをとめ、瞬きを繰り返しながら何かを考えてから一朗の方へ乗り出す。

「もしかしてあなたが祐子ちゃんに告白した子かしら?」

「ご存知で?」

翠は入口を気にしてから一朗に微笑みかける。

「祐子ちゃん、あんな風だけど、とってもいい子だから……仲良くしてやってね」

その言葉に、一朗は笑みを深める。

「ハイ。もちろんです」

その答えに満足した翠は、キッチンへと戻る。

⏰:08/10/06 01:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#653 [向日葵]
「ちょっと!」

着替えをすまして下りてきた祐子は大きな声を出した。
そして一朗を指差す。

「アンタどうしてそこに座ってんだよ!」

「え、好きな場所にって言われたからそうさせてもらっただけだよ?」

ずんずん歩いてきた祐子は向かい側を指差す。
どうやらこちらに座れといいたいらしい。
なんてったってその隣は祐子の特等席なのだから。

しかし聞いているのかいないのか、一朗は上から下まで祐子を見るとにっこり笑った。

「私服って新鮮だなぁ」

⏰:08/10/06 01:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#654 [向日葵]
祐子は言われて自分の姿を見る。

パーカーを長袖のTシャツの上からはおり、ジーパンをはいただけというラフな恰好。

「……当たり前だろ。毎日制服なんだから」

もうちょっとマシな恰好をすれば良かっただろうか?と考えている事に何の疑問も感じず少し落ち込む。

「ううん。可愛い」

そう言われてガチンと祐子の体が固まる。
そして爪先から頭のてっぺんまでゾワゾワとしたものが這い上がる。

「か……っかか可愛い!?」

思わず声が裏返る。

⏰:08/10/06 02:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#655 [向日葵]
「うん。可愛い」

もう1度言う。
祐子はブルッと震え、両腕を擦る。

「無理……っ、寒い事言うな!」

「そんなオヤジギャク言ったみたいな反応しなくても……」

と言いながら祐子の毛先を一束持つ。
それをもてあそぶ。

「猫っ毛なんだね。フワフワしてていいな。1度触ってみたかったんだ」

「翠ちゃん譲りなんだよ。あたしには似合わない」

一朗はクスクス笑う。

⏰:08/10/06 02:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#656 [向日葵]
「似合うから可愛いって言ってるのに。自分の事まったく分かってないんだね」

なんだか馬鹿にされたような気がしながらも顔を赤くさせる。

どこでもかしこでも、なんでこんな言葉が出てくるか分からない。

けれど寒い言葉ながら、少し嬉しく思ってしまう自分がいるのも否定出来ない。
そんなのだから、たちが悪い……。

「さぁ2人も、ご飯にしましょうか」

翠がもって来たビーフシチューはいい香りがして、どこかぼんやりしていた祐子の思考を醒ました。

⏰:08/10/06 02:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#657 [向日葵]
結局一朗は移動しないままで、あまり席にこだわっていては照れてると思われそうなので、一朗の隣に祐子は座った。

「お口にあえばいいんだけど」

一朗はにこりと笑って、両手を合わせて「いただきます」と言うと一口ビーフシチューを口に運んだ。

「美味しいです」

たれ目がちなあの目が更にたれる。
へにゃんとしたその笑顔に力が抜けそうで、少しかぶりを振った祐子はビーフシチューを食べる。
いつも通り美味しくて、祐子まで一朗の顔になりそうだった。

「おかわりあるからね。沢山食べてちょうだい」

⏰:08/10/06 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#658 [向日葵]
*アンカー*

>>613

*感想板*

>>319

⏰:08/10/06 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#659 [向日葵]
穏やかに、時間が流れている気がした。
一朗がいるだけで、とても和やかだった。
味が分からなくなるから嫌だ。
そう思っていた筈なのに、一朗が隣にいると、美味しい気持ちと一緒にどこかホッとした雰囲気を味わった。

―――――――――…………

食事を終え、一朗は帰ると言った。
とりあえず、門前くらいまでは送ってやろうと、祐子は一緒に外へ出る。

「ごちそうさま。本当に美味しかったよ」

「翠ちゃんは料理得意だからな」

「じゃあ、祐子さんも上手なんだろうね」

⏰:08/10/09 00:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#660 [向日葵]
にっこり笑ってそう言う一朗が何を言いたいか分かった祐子は、わざと大きくため息をついた。

「どうしてもとでも言いたいのか?弁当」

「祐子さんに任せるよ」

そう言うが、一朗は祐子が作ってくれるだろうと期待している。
そして祐子はそう思っている一朗が分かるもんだから余計に脱力する。

「……はよ帰れ……」

「うん」

頷きながら、一朗は祐子の両手を握る。
不意をつかれた祐子は激しく動揺する。

⏰:08/10/09 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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