*柴日記*
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#678 [向日葵]
「森下祐子に言ってやったぞ。お前に付きまとうなって。迷惑してたんだろお前も」
一朗は何も答えず、机に置いたお弁当を見つめる。
坂上は自分の武勇伝を聞いてくれと一朗の前の席に座り語り出す。
「俺はお前の為に……まぁ少々キツイ事も言ったけど、ズバーンと言い聞かせてやったのよ。そしたらアイツってば何をキレたかしんねぇけど殴りかかって」
バァンッ!と音が鳴る。
一朗は机を拳で思いきり殴った。
それまで祐子の噂であろう話し声が一気に止む。
そして皆、一朗と坂上に注目する。
:08/10/12 01:50
:SO906i
:☆☆☆
#679 [向日葵]
坂上はすごく驚いたのか、目を見開いて口を半開きにして一朗を見つめている。
「僕の為……?」
ものすごく低い、唸り声のようにも取れる声は、一朗のものだと数秒してから坂上は分かった。
うつむいてる彼の表情は分からない。
だが机を殴った拳は小刻みに震えていた。
坂上は、一朗の逆鱗に触れてしまった事を瞬時に理解した。
「僕の為に祐子さんを傷つけたのか……?迷惑?僕がいつ……君にそんな事を頼んだっ!」
坂上はびくりとして席を立つ。
それでも、鋭く冷たい一朗の眼光からは逃れる事は出来ない。
:08/10/12 01:56
:SO906i
:☆☆☆
#680 [向日葵]
「僕の為って一体なんなんだ!僕は迷惑だと思った事はないっ!僕は祐子さんが好きだ。つきまとっていたのは彼女じゃなくむしろ僕だ。当たり前だろ好きになってほしいんだから」
強い言葉に、クラス一同圧倒される。
黙って一朗の言葉に耳を傾けた。
「彼女を傷つけたなんて許さない……。絶対にね。君は僕の友達なんかじゃないよ」
一朗は鞄とお弁当を持つと、立ち上がり教室を出ていく。
その途中、担任が教室に入って来て、どこかへ行ってしまう一朗を呼び止めた。
「神田、どこへ行くんだ?ホームルームやるぞ」
:08/10/12 02:01
:SO906i
:☆☆☆
#681 [向日葵]
「ホームルームよりも大切な事があります」
そう言って出ていこうとする一朗を再び止めようとした担任だが、今度はクラス全員から担任が止められた。
「先生行かせてあげて!」
「俺達はちゃんとホームルーム出るから!」
「神田って優秀じゃん?たまには息抜きさせてやってくれよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家へ帰ってきた祐子はぼんやりとベッドに横たわっていた。
いつもと変わらない天井を見上げて思うわ一朗の事だ。
:08/10/12 02:04
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:☆☆☆
#682 [向日葵]
:08/10/13 10:27
:SO906i
:☆☆☆
#683 [向日葵]
彼はまた自分の元へやって来て、また無邪気に笑うのだろうか。
いや、その前に、さっきボコボコにした奴が止めるかもしれない。
それに、彼女だって……。
信じたくないのに、不安の方が勝って、最悪な結果の方へと思考が導いていく。
何も考えたくなくて、目を瞑った。
目を瞑って見える瞼の裏のチラチラしたものでさえ、今はうっとおしく思わせた。
「祐子ちゃん」
ドアの外から翠が声をかけてくる。
そのままの体勢で「何?」と答えた。
:08/10/13 20:07
:SO906i
:☆☆☆
#684 [向日葵]
カチャリとドアを開けて入ってきた翠は穏やかな微笑みを浮かべていた。
起き上がった祐子は床上にちょこんと正座した翠を見る。
「祐子ちゃん、貴方は間違ってなんかないわ。自分を貫き通すってとっても難しくて、流される人が大概だもの」
いつもの花が舞ってそうな平和な空気はなく、翠は凛としていた。だから不思議と祐子の背筋もピンと伸びる。
「流された人はなんらかの後悔をするわ。だから翠はね、祐子ちゃんには自分を貫いて後悔のないように生きて欲しいわ」
「それが……誰かの迷惑になっても……?」
:08/10/13 20:13
:SO906i
:☆☆☆
#685 [向日葵]
思い浮かべたのは、一朗の事だった。
「そうねぇ……。殴っちゃうのは正直いけないと思うわ。売られたなら買うしかないけれど」
にっこり笑って言うから思わず吹き出してしまう。
翠が喧嘩を売られて買う姿を描くのは無理だ。
「迷惑になりたくないと思う人には、少々自分を変えてもいいの。でもそれは流される事とは違うわ。自分でそうなりたいと願っているのだから」
一朗に出会って、自分の何かが変わるのを祐子は恐れていた。
自分らしくなくなって、弱くなってしまったように感じたからだ。
:08/10/13 20:17
:SO906i
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#686 [向日葵]
そんな自分を認めたくはなかった。
翠は立ち上がる。
窓の外を見て、ふわりと笑う。
「今日はいいお天気ね……」
そう言って部屋から出て行った。
祐子も外を見てみる。
確かに気持ち良さそうな天気だった。
そろそろ気持ちの切り替えをしなければいけない。
窓の鍵を開けて、ガラガラと開ける。
爽やかな風が入ってくれば、心の乱れも落ち着いてくる。
と、思っていたが、それは次の瞬間見事に打ち砕かれる。
「祐子さんっ!」
:08/10/15 23:57
:SO906i
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#687 [向日葵]
息が止まった。
目を見開き、祐子はゆっくりと下を見る。
門に、息を切らせた誰かがいる。
肩を揺らし、泣きそうな顔をしながらこちらを見ている。
それは紛れもなく、一朗だった。
「祐子さん……話をしよう。坂上が言った事を全部忘れて」
彼の必死の姿に、祐子も泣きそうになった。
奥歯を噛み締め、口を真一文字に結ぶと、強く首を振る。
「あたしは、もうアンタに近づかない。そう決めたんだ……」
なんとか一朗に聞こえる声でそう言う。
一朗は険しく苦しそうな顔をする。
:08/10/16 00:01
:SO906i
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