*柴日記*
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#686 [向日葵]
そんな自分を認めたくはなかった。

翠は立ち上がる。
窓の外を見て、ふわりと笑う。

「今日はいいお天気ね……」

そう言って部屋から出て行った。
祐子も外を見てみる。
確かに気持ち良さそうな天気だった。
そろそろ気持ちの切り替えをしなければいけない。
窓の鍵を開けて、ガラガラと開ける。
爽やかな風が入ってくれば、心の乱れも落ち着いてくる。

と、思っていたが、それは次の瞬間見事に打ち砕かれる。

「祐子さんっ!」

⏰:08/10/15 23:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#687 [向日葵]
息が止まった。
目を見開き、祐子はゆっくりと下を見る。

門に、息を切らせた誰かがいる。
肩を揺らし、泣きそうな顔をしながらこちらを見ている。

それは紛れもなく、一朗だった。

「祐子さん……話をしよう。坂上が言った事を全部忘れて」

彼の必死の姿に、祐子も泣きそうになった。
奥歯を噛み締め、口を真一文字に結ぶと、強く首を振る。

「あたしは、もうアンタに近づかない。そう決めたんだ……」

なんとか一朗に聞こえる声でそう言う。
一朗は険しく苦しそうな顔をする。

⏰:08/10/16 00:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#688 [向日葵]
笑ってくれたらいい。
もう辛い思いさせるのは嫌だ。

彼女がいるなら尚更……。

目をギュッと瞑って、祐子は一朗に背を向けた。
話をするつもりはない。
そう意思表示する為に。
次に振り向いた瞬間、一朗が諦めていなくなってて欲しいと願う。

数秒してから祐子は振り返った。さっき一朗がいた場所に、彼の姿はなかった。

さよなら。

別れを口の中で告げれば、悲しくなった。
本当は離れて欲しくないのに。
うつむいて、祐子は涙を流した。

⏰:08/10/16 00:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#689 [向日葵]
ガザガサと、耳障りな音が聞こえる。
なんだと思い顔を上げれば、祐子の部屋の窓近くの木から、一朗が現れた。
驚いた祐子は口を開いたまま固まる。
そんなのお構いなしに、一朗は窓下にある僅かな足場に移動し、祐子の方にのり出して微笑む。

「祐子さんが僕に近づくのがダメなら、僕から祐子さんに近づくよ」

そういう問題じゃない。

そんな事を言っても一朗には通用しないのだが、祐子の頭は混乱しかけていた。

「まるでロミオとジュリエットみたいじゃない?」

⏰:08/10/16 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#690 [向日葵]
「あ、アホか!早くこっちに来い!危ないだろっ」

一朗の襟を掴み、土足だという事も忘れ引っ張る。
祐子の上に、一朗が被さるようにして2人は倒れこんだ。

色々疲れて息づかいが荒い祐子に一朗は微笑む。
ハタと祐子が今の格好に気づけば恥ずかしくなって急いで離れようとすれば、それを押さえこむように一朗が祐子を抱き締めた。

どうしていいかわからない祐子は硬直する。
思っていたよりもしっかりとした腕は、父以外の男を初めて感じた。

「は……離せ……」

「離したら祐子さん逃げるもん。だから嫌」

⏰:08/10/16 00:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
「い、言ってる場合か……っ!」

「言ってる場合だよ。勘違いされたまま離れるだなんて僕は許さないからね」

鼓動がうるさい。
一生分の心臓の動きを終えてしまうんじゃないかと心配になるぐらいドキドキしているのが分かった。
間近に彼の肩と髪の毛。耳には吐息と低いなめらかさのある声。
少し当たる彼のメガネのフチが冷たくてぞくぞくする。

顔は熱いし、かと思えば彼のブレザーは冷たい。
この温度差にさえ緊張してしまう。

「話、聞いてくれるなら離してあげる」

しばらくして、一朗が言った。

⏰:08/10/16 00:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
「ただし条件がある。それでもいいなら解放するよ」

「じょ、条件って……?」

「今は言わない」

「な、なんだよそれ……っ!」

「じゃあこのままがいい?」

それは嫌だ。

この状況からは早く逃れたい。

祐子は首を振る。
「じゃあいいね?」と一朗が問うので、仕方なく頷いた。
一朗は、最後にギュッとしてから祐子を解放する。
赤い顔を見られたくなくて、起きて一朗少し離れるとそっぽを向く。

⏰:08/10/16 00:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
「坂上がごめんね……」

「別に。……本当の事だし」

「じゃあ僕から離れていくの?」

祐子は黙ってしまう。
さっき強くそう決心した筈なのに、本人を目の前にしたら一気に揺らいでしまった。
せっかく引っ込んでくれた涙も、また出てきそうになる。

そんな思いを抱えているから、彼の方をまっすぐに見れないのかもしれなかった。

スカートをギュッと掴み、なんとか泣きそうになる衝動を抑える。

「アンタ……には、彼女がいるんでしょ?」

「えぇっ?」

⏰:08/10/22 00:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
一朗がすっとんきょうな声を出す。少し怒っているようにも聞こえた。

「それも坂上から?」

祐子は頷く。
一朗は長いため息をついた後、「しょうがないなアイツは……」と呟く。

「とりあえず、祐子さん、こっち向いてくれないかな?」

こちらを見ない祐子に、一朗は覗き込む。が、祐子は更にそっぽを向く。
一朗は眉を寄せる。
祐子は困る。
一朗に力づくで彼の方へ向かされてしまえば、自分の今の感情を抑えれる自信がないからだ。

無言の祐子に、一朗は困惑する。

「僕には祐子さんだけだよ。信じてくれないの?」

⏰:08/10/22 00:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
「そういう訳じゃ……」

「じゃあ顔見せて?」

祐子は頑なに彼の方を向かない。
一朗は困り果てるが、ゆっくりと手を伸ばし、彼女の頬に触れる。
祐子はビクリと震える。
彼女が何に怯えているのか、一朗にはよく分からないが、とにかく話さなければと、こちらに向くように誘導する。

顔はこちらに向いたが、うつむいたまま口をキュッと結んでいる。
下唇を少し噛んでいる姿は、拗ねた子供みたいで可愛いなどと不謹慎な事を考えてしまう。

違う、違うと、頭を軽く振った一朗は、祐子と額をくっつける。

⏰:08/10/22 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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