*柴日記*
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#693 [向日葵]
「坂上がごめんね……」

「別に。……本当の事だし」

「じゃあ僕から離れていくの?」

祐子は黙ってしまう。
さっき強くそう決心した筈なのに、本人を目の前にしたら一気に揺らいでしまった。
せっかく引っ込んでくれた涙も、また出てきそうになる。

そんな思いを抱えているから、彼の方をまっすぐに見れないのかもしれなかった。

スカートをギュッと掴み、なんとか泣きそうになる衝動を抑える。

「アンタ……には、彼女がいるんでしょ?」

「えぇっ?」

⏰:08/10/22 00:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
一朗がすっとんきょうな声を出す。少し怒っているようにも聞こえた。

「それも坂上から?」

祐子は頷く。
一朗は長いため息をついた後、「しょうがないなアイツは……」と呟く。

「とりあえず、祐子さん、こっち向いてくれないかな?」

こちらを見ない祐子に、一朗は覗き込む。が、祐子は更にそっぽを向く。
一朗は眉を寄せる。
祐子は困る。
一朗に力づくで彼の方へ向かされてしまえば、自分の今の感情を抑えれる自信がないからだ。

無言の祐子に、一朗は困惑する。

「僕には祐子さんだけだよ。信じてくれないの?」

⏰:08/10/22 00:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
「そういう訳じゃ……」

「じゃあ顔見せて?」

祐子は頑なに彼の方を向かない。
一朗は困り果てるが、ゆっくりと手を伸ばし、彼女の頬に触れる。
祐子はビクリと震える。
彼女が何に怯えているのか、一朗にはよく分からないが、とにかく話さなければと、こちらに向くように誘導する。

顔はこちらに向いたが、うつむいたまま口をキュッと結んでいる。
下唇を少し噛んでいる姿は、拗ねた子供みたいで可愛いなどと不謹慎な事を考えてしまう。

違う、違うと、頭を軽く振った一朗は、祐子と額をくっつける。

⏰:08/10/22 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#696 [向日葵]
「祐子さん……」

柔らかく呼ばれてしまえば、何故か逆らえず、祐子は彼に目線を合わせてしまう。
眼鏡の奥の、たれがちな優しい目からは逃れられなくなる。

祐子は涙を流した。

だから嫌だったんだ。

きっと目を合わせてしまえば、決心も何もかも崩れ去って、目の前にいる彼を自分のものにしたいと求めてしまうから、そうなる前に彼には帰って欲しかった。

急に泣き出した祐子に、一朗は戸惑う。
どうしたらいいか分からなくて、あたふたするも、とりあえず頭を撫でる。

「ご、ごめんね、僕が……何かしたかな……?」

⏰:08/10/22 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#697 [向日葵]
祐子は髪を優しく丁寧に撫でる指を感じながら、涙で滲む視界を必死にクリアにしようと手で拭う。

「もう……お前には、振り回されてばっか……」

「うん、ごめんね。でも、祐子さんが僕に関心をもってほしいから」

「こっちの気も知らないで……」
どれだけドキドキさせれば気が済むんだ……。
あぁどうしよう……すごく、言いたい。

涙を拭くのを止めて、祐子はまっすぐに一朗を見た。

人と話す時、しっかりと目を見て祐子は話す。

⏰:08/10/22 00:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#698 [向日葵]
それが例え一朗でもそうだ。

でも一朗は、初めてまっすぐ真剣な目をして見つめられたような気がして、その涙に濡れる目に心臓が高鳴った。

「神田が……好きみたいだ……あたし……」

一朗は驚いて目を見張る。

言ってから祐子はまた涙を1粒2粒と流し始める。
一朗はぽかんとして言葉を失った。
そんな一朗に祐子は眉を寄せる。

「おい、いつもの饒舌ぶりはどこいったよ……。この場合お前なら「だと思ったよ。やっと僕の溢れんばかりの気持ちを分かって頂けましたか」とか言うんじゃないの?」

⏰:08/10/22 00:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
*アンカー*
>>613

感想板
>>682

⏰:08/10/22 00:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
祐子の言葉にふきだした一朗は祐子の手を握ると自分の胸に押し当てた。
何事かとうろたえて赤くなる祐子に、一朗は静かに微笑む。

「分かる?僕の心臓……」

言われて掌に神経をすませば、脈を打つ感触が伝わってきた。
ドクドク鳴っている。

それがどうしたのかと、祐子は一朗を見上げた。

「祐子さんの一言で、僕はこんなにもドキドキするんだ。これがどういう意味か、分かる……?」

その言葉は、恋愛経験がない祐子にも分かった。
赤くなる祐子を柔らかく抱き寄せる。

⏰:08/10/26 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#701 [向日葵]
髪の毛を撫でられれば、ホッとして硬直していた体から力が抜けた。

「好きだよ……。祐子さん」

誰かの為に変わる事は、悪くない。

祐子は初めてそう思えたのだった。

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―――――――――――――

「お母さん、まだ寝ないの?」

戸口から顔を出した越は椅子に座っている祐子に話かける。

現在夜の11時。
空や苺はもう寝てしまい、越は今お風呂から出たみたいだった。
柴はおそらく越の部屋にでもいるのだろう。

⏰:08/10/26 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#702 [向日葵]
「一朗さんがまだ帰ってこないからね。晩御飯用意しなきゃだし。アンタは明日も学校なんだから、柴にあんまかまってないで早く寝なさいよ」

「べ、別にかまってる訳じゃなくて、柴がくっ……ついて……」

お風呂上がりの熱気ではない越の赤面に、祐子は自分もこんなのだったのかと若かりし頃を思い出す。
そして2人がもう“家族”という間柄ではない事も知っている。

「柴に変な事されそうになったらちゃんと拒むのよー」

祐子がからかうと、越は更に顔を赤くさせた。

「そ、そんな事されませんっ!おやすみっ!」

⏰:08/10/26 00:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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