*柴日記*
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#698 [向日葵]
それが例え一朗でもそうだ。

でも一朗は、初めてまっすぐ真剣な目をして見つめられたような気がして、その涙に濡れる目に心臓が高鳴った。

「神田が……好きみたいだ……あたし……」

一朗は驚いて目を見張る。

言ってから祐子はまた涙を1粒2粒と流し始める。
一朗はぽかんとして言葉を失った。
そんな一朗に祐子は眉を寄せる。

「おい、いつもの饒舌ぶりはどこいったよ……。この場合お前なら「だと思ったよ。やっと僕の溢れんばかりの気持ちを分かって頂けましたか」とか言うんじゃないの?」

⏰:08/10/22 00:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
*アンカー*
>>613

感想板
>>682

⏰:08/10/22 00:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
祐子の言葉にふきだした一朗は祐子の手を握ると自分の胸に押し当てた。
何事かとうろたえて赤くなる祐子に、一朗は静かに微笑む。

「分かる?僕の心臓……」

言われて掌に神経をすませば、脈を打つ感触が伝わってきた。
ドクドク鳴っている。

それがどうしたのかと、祐子は一朗を見上げた。

「祐子さんの一言で、僕はこんなにもドキドキするんだ。これがどういう意味か、分かる……?」

その言葉は、恋愛経験がない祐子にも分かった。
赤くなる祐子を柔らかく抱き寄せる。

⏰:08/10/26 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#701 [向日葵]
髪の毛を撫でられれば、ホッとして硬直していた体から力が抜けた。

「好きだよ……。祐子さん」

誰かの為に変わる事は、悪くない。

祐子は初めてそう思えたのだった。

――――――――――
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「お母さん、まだ寝ないの?」

戸口から顔を出した越は椅子に座っている祐子に話かける。

現在夜の11時。
空や苺はもう寝てしまい、越は今お風呂から出たみたいだった。
柴はおそらく越の部屋にでもいるのだろう。

⏰:08/10/26 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#702 [向日葵]
「一朗さんがまだ帰ってこないからね。晩御飯用意しなきゃだし。アンタは明日も学校なんだから、柴にあんまかまってないで早く寝なさいよ」

「べ、別にかまってる訳じゃなくて、柴がくっ……ついて……」

お風呂上がりの熱気ではない越の赤面に、祐子は自分もこんなのだったのかと若かりし頃を思い出す。
そして2人がもう“家族”という間柄ではない事も知っている。

「柴に変な事されそうになったらちゃんと拒むのよー」

祐子がからかうと、越は更に顔を赤くさせた。

「そ、そんな事されませんっ!おやすみっ!」

⏰:08/10/26 00:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#703 [向日葵]
駆け足で階段を上がっていく越に、祐子は喉の奥でクククッと笑う。
からかいがいがある愛娘は面白くて仕方がない。

頬杖をつき、時計を見る。
規則正しく動く秒針は、祐子の眠気を誘う。

―――――――――
―――――――――――――

「進路……調査……っっ」

と言う紙を握り締めて睨みつける初夏のある日。

祐子は目の前にある紙にかいてあるものがこの世のものとは思えないという顔で見ていた。

「祐子さん、顔が恐い」

⏰:08/10/26 00:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#704 [向日葵]
祐子の前の席に座っていた一朗は彼女の眉間に指をあてほぐそうとする。
されるがままになりながら祐子はまだ紙をみつめている。

放課後、2人で喋るのは日課になっていた。
あの事件後、2人の仲は皆から容認され、“一朗彼女説”は、坂上が言った口から出任せだったと本人が自白。

それからは周りが羨む程の仲良い恋人同士となり、祐子も皆から更に慕われ、今では祐子は恋愛相談をよくされるようになった。

だからと言って、そこから何か将来の事に結びつけられるかと言ったらそうではないのだ。

「将来ねぇ……圭ちゃんの道場継ぎたいんだけどなぁ……」

⏰:08/10/26 00:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#705 [向日葵]
正直にそう言えば、思いきりダメだと言われた。

「じゃあさ、いっその事、僕のお嫁さんにならない?」

「は?」

あっさり言われたので空耳かと間違う。
言った本人はにっこりと笑う。
いつもと変わらない笑みだったので、やっぱり空耳なのかと首を軽く傾ける。

「僕、祐子さんと結婚するつもりでいるんだけど?」

「とうとう脳みそ溶け始めたのか……?」

結婚?と頭がはてなだらけになっていく。
一朗は別に気にしてない風に話を続ける。

⏰:08/11/08 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#706 [向日葵]
「遅かれ早かれ、すると分かってんだったらいつしても同じだと思うんだけど」

「ちょ、ちょっと待て。ちょっと待てっ!」

勝手に話を進めていくものだから祐子は片手を突き出して一朗を黙らせる。

進路で迷ってるから結婚!?
いくらなんでもあり得なさすぎる。そして極端すぎる。

一朗は不思議そうに祐子を見る。まるで、今言った事に何か問題でも?とさえ思っていそうな顔だ。

どうして最終結論が結婚なんだ。

「あのな、あたし達まだ若い。そういう一時の情熱に身を任せれば、後で痛い目みるぞ」

⏰:08/11/08 00:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#707 [向日葵]
「大丈夫だよ。僕の情熱は冷めないだろうから」

いやだから。

「経験つむのは大切だ。進学はしなくても……と言うか出来るかわからないけど、ともかく!少しは働いて社会を知っておきたい」

「じゃあ僕のプロポーズは断るってわけか……。残念だな」

とか言いながら微笑むのは、祐子がそう言うだろう事を予想していたからだろうか。

本気ではなかった?
じゃあ本気で悩んだ自分は馬鹿ではないか。

祐子は苛立ちを覚える。

「もう帰る」

⏰:08/11/08 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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