*柴日記*
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#706 [向日葵]
「遅かれ早かれ、すると分かってんだったらいつしても同じだと思うんだけど」

「ちょ、ちょっと待て。ちょっと待てっ!」

勝手に話を進めていくものだから祐子は片手を突き出して一朗を黙らせる。

進路で迷ってるから結婚!?
いくらなんでもあり得なさすぎる。そして極端すぎる。

一朗は不思議そうに祐子を見る。まるで、今言った事に何か問題でも?とさえ思っていそうな顔だ。

どうして最終結論が結婚なんだ。

「あのな、あたし達まだ若い。そういう一時の情熱に身を任せれば、後で痛い目みるぞ」

⏰:08/11/08 00:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#707 [向日葵]
「大丈夫だよ。僕の情熱は冷めないだろうから」

いやだから。

「経験つむのは大切だ。進学はしなくても……と言うか出来るかわからないけど、ともかく!少しは働いて社会を知っておきたい」

「じゃあ僕のプロポーズは断るってわけか……。残念だな」

とか言いながら微笑むのは、祐子がそう言うだろう事を予想していたからだろうか。

本気ではなかった?
じゃあ本気で悩んだ自分は馬鹿ではないか。

祐子は苛立ちを覚える。

「もう帰る」

⏰:08/11/08 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#708 [向日葵]
不機嫌になりながら立ち上がる。

正直、祐子は一朗の事があまり分からない。
彼はいつも楽しそうに、そして余裕そうに微笑んでいるだけだ。
例えば必死な顔や、本気の怒りだって見た事がない。

好きなのは自分だけなのか?と時々不安にもなる。

それでも優しく祐子に触れる指先は、祐子が好きだと語っている気もするから独りよがりではないと信じたいし、信じている。

「僕も一緒に考えるから、焦らずゆっくり考えよう」

なだめるように言う一朗に結局負けてしまう。
柔らかく髪の毛を撫でられれば一瞬で不機嫌な気分は消えてしまう。

⏰:08/11/08 01:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#709 [向日葵]
いつものように、下駄箱で靴を履きかえる。
自転車置き場に行こうとした時だった。

「一朗ーっ!」

その声に祐子が振り向けば、数歩離れて歩いていた一朗に、誰か抱きついていた。

祐子は目を見開く。
一朗は抱きつかれた勢いに耐えれず倒れこんだ。

「久しぶりねっ!元気だった!?杏は超ー元気だったよーぅ!」

肩まである黒い髪の毛は外側に愛らしく跳ねているその少女は、祐子達と同じくらいに見える。
祐子は口を変な形にして2人を凝視している。

⏰:08/11/08 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#710 [向日葵]
「杏……っ、アメリカじゃなかったの?」

「1人暮らしの許しを得たのっ!これからはどんな時も一緒よ一朗っ!」

無邪気に微笑んで彼の頬にキスするものだから、さすがの祐子も我に返り2人を引き剥がす。
やっと祐子の存在に気づいた杏と名乗る少女は、つり目がちの目を更につり上げると祐子を睨む。

「勝手にベタベタすんのやめろよな」

「なぁにあなた。ベタベタするのは当たり前よ。私は一朗のお嫁さん候補なんだから」

「は?」と声を上げた祐子は一朗を見る。
一朗は額に手を当ててため息を吐く。

⏰:08/11/08 01:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#711 [向日葵]
「それは小さい頃の約束だろ?僕には大切な人がもういる」

と言って祐子を引き寄せる。
杏は眉を寄せて目を見開く。

「小さい頃の約束でも約束は約束よ!おじ様達だって、杏ならいいって言ってたもの!杏だって一朗の立場をちゃんと支えてあげられる、いいお嫁さんになるわ!」

言ってから祐子を睨む。
売られた喧嘩は倍額で買う主義の祐子は当然睨み返す。

「こんな……男まさりな人がいいの?前はあんっなに女の子らしくて可愛らしい人が好きだなんて言ってたくせにっ!」

「いつまでも夢見てんじゃねえよタコがっ!」

いい加減我慢出来なかった祐子が言う。

⏰:08/11/08 01:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#712 [向日葵]
腕組みをして、祐子は杏に詰め寄る。
身長は祐子の方が高いので見下したように杏を見る。

「あたしも大概、世間知らずだけど、アンタはあたしを上回るみたいだね」

「一朗があなたみたいな庶民と結婚していいと思ってるの?一朗は病院の跡取りなの!あなたが一緒にいていい相手じゃないのが分からない?」

馬鹿にされたので、祐子の中で何かが切れた。
その音を自分で聞いていながら、少し冷静な部分で一朗の事を考えていた。

彼は本気かどうかは分からないが、自分の事は何も言わず自分と結婚するなどと言う。
果たしてそれでいいのかが分からない。

⏰:08/11/08 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#713 [向日葵]
一朗と通じあった日、その前まで自分はもう邪魔をしたくないから諦めると思っていた。
それを打ち砕くように一朗が自分を求めてくれたから、我慢出来ず自分も求めてしまった。

本当にこれで良かったのか、祐子は再度迷い始めた。

「跡継ぎなら弟がするよ。第一、僕はもともと継ぐ気はない。それは父さん達も前々から知ってる」

「一朗分かってないわね。おじ様達は、本当はあなたに継いでもらいたいのよ。」

「僕は普通に働きたい」

「普通を求めるのは、この人がいるからじゃないの?」

⏰:08/11/08 01:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#714 [向日葵]
そう言って、また祐子を睨む。
祐子はちらりと一朗を見た。
一朗は困ったように顔をしかめていた。

どうして「違う」と言わない?
まさか本当に自分は邪魔者なのか?

教室から考えていた事や、今つきつけられた現実の迷いに、祐子は怒りの薪に着火してしまう。

「ばかばかしいっ!身内問題なら勝手にテメェらでやれ!」

足早に自転車を取りに行き、一朗が追いかけてくる前に祐子は家へと帰ってしまった。

―――――――――…………

「まぁまぁ!祐子ちゃんどうしたの?そんな恐い顔しちゃって」

⏰:08/11/08 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#715 [向日葵]
玄関にある全身鏡を見れば、確かに酷い顔をしていた。

八つ当たりはみっともないから嫌なのに、緊張感のない翠の声に苛立ちを隠せない。

「もともとだよ!悪かったね!」

翠の前を通り過ぎ、自分の部屋がある2階へと向かう。

「一朗くんと何かあったの?」

こわごわと聞いてくる。
足を止め、握りこぶしを作る。

「そんなんじゃない……」

低く呟いてから、また足を進めた。

ドアを閉めて、ズルズルと床に座り込む。

⏰:08/11/08 01:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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