*柴日記*
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#718 [向日葵]
難しい事を考えるのは嫌だから、目を伏せて風と空気だけを感じようとする。

すると耳に砂利を踏む音が届いた。
ゆっくりと目を開ければ、少し離れた所に一朗がいた。

「いた。良かった、探したんだ。翠さんは正解だったみたいだね」

1度帰っただろう彼は、ストライブのカッターにジーパンといった格好だった。
やはりと言うか、いつもと変わらない微笑みを祐子に向けている。

だから祐子はつい叫ぶ。

「近寄るな!」

⏰:08/11/08 01:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#719 [向日葵]
祐子の元へ行こうとのぼりだした一朗の動作が止まる。

「……どうして?」

「何をするか、分からないから……。何を言うか、分からないから……」

「それでもいいよ」

「あたしが嫌なんだ!頼むから……」

しばらく考えた彼は諦めたように祐子がいる真下に来て、ジャングルジムを背もたれにして立つ。

「綺麗だね」

祐子は答えない

「こんな場所があるなら教えてくれればいいのに」

⏰:08/11/08 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#720 [向日葵]
やっぱり祐子は答えない。

「……さっき否定しなかったのも、肯定しなかったのも、君が負い目を感じないようにだよ」

祐子は一朗に目を向ける。
一朗は夜景を眺めたままだ。

「病院を継ぐのは、僕には向いてないと幼い頃から感じていた。両親もそれは承知だった。もともと2人共、固まった考えを持っていない人だから、僕が普通の職に就きたいと中学の時に話せば快く応じてくれた」

淡々と話す一朗の話を、祐子は一生懸命聞く。

「でも申し訳ない気持ちはあるから、せめて成績だけは優秀であろうと思ってるんだ。だから特に医者になる家系だからって言うのはない」

⏰:08/11/08 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#721 [向日葵]
口を閉ざした彼は、祐子を見上げる。
口元だけで、薄く微笑む。

「そっちに行ってもいい?」

迷ったが、さっきまでの怒りは薄れていたので、頷く。
1歩1歩、着実にのぼってきた彼は祐子の隣に座る。

「普通に憧れている訳でも、普通を求めるのは祐子さんがいるせいでもなんでもない。ただ僕の意思で、僕の人生がそうなだけ。でも祐子さんは肯定しても否定しても、何かしら気にしそうだから答えに詰まっただけ」

風で揺れ、顔にかかる祐子の髪の毛を、長い指先ではらう。

「だって……アンタは分かりづらい……って言うか、本音を言ってるかすら、分からない時がある」

⏰:08/11/08 02:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#722 [向日葵]
一朗は優しく肩を抱く。
彼の肩に頭をもたれかかせれば、そのまま眠りたくなる程、居心地がいい一方で胸が高鳴る。

「嘘を言ってしまうのは必要がある時だけ。でも祐子さんには全て本音だよ……って言っても、信じてもらえない?」

「まぁ、言うわ簡単だよな」

クスクス笑う彼は、そっと祐子の頬を手で包むと、自分の方へ向かせて柔らかく微笑む。
そんな一朗に、祐子はいとおしさで溢れた眼差しを向ける。

「でもこれだけは絶対信じて。僕は君が好きだよ」

そう言うとゆっくりと唇を重ねた。
触れ合う唇は、いつもより熱く感じた。

⏰:08/11/08 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#723 [向日葵]
*アンカー*
>>613

*感想板*
>>682

⏰:08/11/08 02:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#724 [向日葵]
―――――――――…………

次の日。

早朝の爽やかな空気と友達との挨拶が交わされている教室に、どこからともなく騒がしい足音がやってくる。

「ゆ、祐子さんいるっ!?」

祐子のクラスメイトの1人だ。

丁度来て、机の中へ教科書を入れていた途中だった祐子は顔を上げる。

「なに?」

「大変よ!神田君のクラスに転校生……とにかく来て!」

説明するのもめんどくさくなったのか、女子は祐子の手を引っ張って一朗のクラスへと走って行く。

⏰:08/11/18 01:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#725 [向日葵]
息を軽く弾ませながら見たのは、一朗にべったりくっついてる女の子の姿。
しかも祐子は、その子を知っている。

昨日の、やたらうっとおしい奴だ。

祐子はズカズカと教室へ入っていく。
祐子に気づいた一朗のクラスメイトは、道をあけていく。

「オイ」

一朗の前に仁王立ちした祐子は、苛立っている元凶の杏を睨む。
一朗は明らかに焦っていた。

「祐子さん、これは違うからねっ……?」

「みりゃ分かるっ」

⏰:08/11/18 01:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#726 [向日葵]
と言いながらも、語気を荒げるのは仕方のない事。
いくら一朗が自分を好きと言ってくれていても、自分以外の女子がべったりくっついていては怒らずにはいられないだろう。

「あらあなた、まだこりてなかったの?」

「そりゃこっちのセリフだ。夢見がちの世間知らずのお嬢ちゃんよ」

杏は祐子の鋭い視線に負けそうになるも、なんとか頑張って睨み返す。
祐子は余裕しゃくしゃくで杏を見下す。
杏に睨まれても全然怖くはない。

「放れろ」

⏰:08/11/18 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#727 [向日葵]
杏はギュッと一朗の腕にしがみつく。
祐子は一歩前へ出て声を低くする。

「聞こえねぇのか。放れろっつってんだよ」

「い、嫌よ。あなたに指図される筋合いはないもの」

祐子の頭の中で、何かが派手に弾ける。
その音を聞く前に、祐子の手が出て、強制的に二人を引き剥がす。

小さく悲鳴を上げて、杏は尻餅をついた。

「いい加減にしやがれっ!いつまでもグチグチと諦めの悪い。アンタなんかお呼びじゃねぇんだよ!」

⏰:08/11/18 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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