よすが
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#7 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
昨日の夜、夢を見た。
あたしは、小さな女の子と一緒にいた。

長い長い坂道を、あたしたちは手を繋いで登っていた。
登っても登っても、終わらない登り坂。

あたしの口が言葉を発した。

「あなたは……だあれ?」

「私は……」


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⏰:08/04/03 00:14 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#8 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
目が覚めた時には、女の子の顔は忘れてしまっていた。

けれど、あたしはあの子を知っている。
そんな気がする。


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⏰:08/04/03 00:15 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#9 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

八年間。

あたしには、八歳までの記憶が無い。

病院のベッドで目を覚まし、父と母が泣きながらあたしを抱きしめているのが、一番古い記憶。

八年間をどこかに落としたまま、あたしは十八歳になってしまった。

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⏰:08/04/03 00:17 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#10 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
何があったのか思い出そうとしても、何一つ思い出せない。
父や母に何度も聞いてみたけれど、答えは毎回同じ。

「あなたは知らなくていいの。これからは普通に暮らしていこうね」

あたしたちに、何か普通でないことが起きたのだろう。

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⏰:08/04/03 00:20 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#11 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父や母がその問いに答える時の顔には決まっていつも、悲しみが浮かんでいた。
しかし同時に、あたしへの愛情に満ちていた。

だからあたしは、過去を捨てて今を生きることにした。

父と、母とともに。


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⏰:08/04/03 00:21 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#12 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれど昨日の夢は、あたしに過去を取り戻させようとしている気がした。

今まで考えないようにしてきたけれど、やはりいつかは向き合わなければいけないことをあたしは知っていたのだと思う。

そのいつかが今だと、昨日の夢があたしに知らせていた。

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⏰:08/04/03 00:23 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#13 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そしてあたしは、落としてしまった自分の八年間を、あたしの頭の中に閉じ込められた記憶を、探し出す。そう決心した。



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⏰:08/04/03 00:24 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#14 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

屋上で冷たい風に吹かれながら、十年前のことを考えてみる。

病院で目を覚ました時、あたしの頭や腕には包帯がぐるぐるに巻かれていた。
父と母はその体を抱きしめながら、あたしの名前を呼んでいた。

「ユキ、ユキ! ああ、良かった……ユキ」

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⏰:08/04/03 00:25 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#15 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
それが一番古い記憶。
何度頭を痛めても、やはりそれ以前のことは思い出せない。

しかし八歳のあたしは、意識が戻ってもすぐには退院出来なかった。
体の傷がかなりひどかったらしく、目を覚ますまでにかなり回復していたけれど、それでもその後三ヶ月は治療が続いた。

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⏰:08/04/03 00:26 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#16 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
病院では、いつも父か母が一緒にいてくれた。
一度、偶然二人とも傍にいない時に、他の入院患者に聞いてみたことがある。

「あたし、いつからここにいるの?」

「半年くらい前からかしらね。あなたのお父さんとお母さんは、その間毎日来てらっしゃったのよ。感謝しなくちゃね」

同じ病室のおばさんは、穏やかな笑顔でそう教えてくれた。


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⏰:08/04/03 00:31 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


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