よすが
最新 最初 全 
#231 [蜜月◆oycAM.aIfI]
***
綺麗なオレンジ色の夕焼け空の下。
あたしの目の前には、大きな木がある。
大きな、大きな大きな木。
見上げても、てっぺんが見えない。
枝や葉が、今にも襲い掛かってきそうな程繁っているのが見えるだけ。
こんな立派な木は見たことない。
.
:08/04/21 21:50
:SH903i
:BUaVqwCg
#232 [蜜月◆oycAM.aIfI]
足元に目をやると、地面がすぐ近くにあった。
落ちている葉のひとつひとつがとても大きい。
――この靴……懐かしい。
あたしが好きだった子供向けのキャラクター。
リボンをつけたうさぎが体ほどもある人参を抱えている絵がプリントされた、あたしのお気に入りの靴。
それを、どうして今、あたしは履いているんだろう。
.
:08/04/21 21:50
:SH903i
:BUaVqwCg
#233 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ふと自分の手や体を見て気付く。
――今、あたし……小さい頃の姿に戻ってる?
一瞬、タイムスリップしたのかと驚いたけど……。
多分、夢を見ているんだろう。
このぼんやりした感覚は、きっとそうだ。
.
:08/04/22 23:09
:SH903i
:.2zmGT5A
#234 [蜜月◆oycAM.aIfI]
身につけているものをひとつひとつよく見てみると、昔着ていたものばかりだった。
首に巻かれた毛糸の赤いマフラーも、ラインの入った白いセーターも、赤と緑のチェック模様のスカートも、白い水玉が編み込まれた黒いタイツも。
好きで毎日着たがったものもあれば、母に無理矢理着せられていたものもある。
懐かしさに浸っていると、誰かの長い影があたしの影に重なった。
.
:08/04/22 23:09
:SH903i
:.2zmGT5A
#235 [蜜月◆oycAM.aIfI]
『ユウコ、もう暗くなるよ』
振り返ると、見知らぬ大柄の男が立っていた。
今のは、あたしに向けられた言葉のようだ。
――ユウコ?
あたしはユウコじゃない、ユキだよ。
.
:08/04/22 23:10
:SH903i
:.2zmGT5A
#236 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そう思いながらもなぜか逆らうことが出来ず、あたしは自分を“ユウコ”と呼んだ男が差し出した手を取った。
夕日を背に立っている男の顔は、逆光のせいでよく見えない。
表情もわからないけれど、なんとなく微笑んでいるような雰囲気が感じられた。
そのかわり、差し出した左手の薬指に光る指輪に、あたしの視線は捕らえられた。
.
:08/04/22 23:10
:SH903i
:.2zmGT5A
#237 [蜜月◆oycAM.aIfI]
夕日を反射してキラキラ輝くそれは、今まで見たことが無いほど美しい。
男のゴツゴツとした手にはとても似合わない。
けれど、何の石も背負わないそのシルバーの細い輪っかは、男の指にしっかりとはまっていた。
男は、あたしの手をギュッと握りしめて歩き出した。
何も言わず男の行動に従うあたし。
.
:08/04/22 23:11
:SH903i
:.2zmGT5A
#238 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――今は大丈夫だ。
え?
……今は?
あたしは確かに今、そう思った。
けれど、全く意味が解らない。今のはあたしの意識ではない。
でもあたしじゃないなら一体誰の?
.
:08/04/22 23:12
:SH903i
:.2zmGT5A
#239 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そう思ったけど、あたしは考えるのをやめた。
これは夢だ。夢というのは有り得ないことが起きても良い世界なんだ。
そして夢というものは、しばしば現実とリンクする。現(げん)に今、あたしは過去のあたしを夢に見ている。
このまま夢に飲み込まれてしまえば、この世界で全ては明らかになるんじゃないか。
あたしはそれを期待し、夢の世界に潜っていく。
.
:08/04/23 13:04
:SH903i
:n.zKpr4g
#240 [蜜月◆oycAM.aIfI]
小さな体のあたしは、男の大きな手に引かれながら坂道を歩いている。
あたしの小さな影と男の大きな影が、足元から進む先に向かって長く延びていた。
あたしは自分の影の頭を踏もうと、出来る限り歩幅を広げてみたけれど爪先さえ届かない。
そうこうしている内に、ただの遊びにいつの間にか真剣になってしまっていた。
躍起になって、飛んだり走ったりして影を追う。
.
:08/04/23 13:05
:SH903i
:n.zKpr4g
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194