よすが
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#315 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナの表情に悲しみと戸惑いが見えた。
薄々は気付いていた。ハナの傷があまり多くないこと。
やっぱりハナの方が亡くなった娘に似ているから……。
あたしは手をついて体を起こした。
「でも……やっぱりハナを置いていけないよ。あたしが逃げたってわかったら、ハナ……何されるかわからないじゃない」
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:08/05/08 20:47
:SH903i
:hl2laBBQ
#316 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「お母さんとお父さんが心配なんだよ。ユキが帰れば二人も少しは安心すると思う」
ハナは頑として譲らなかった。
でも、でも、とあたしは反論したけれどハナの意志は強かった。
結局、あたしだけが逃げると二人で決めた。
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:08/05/08 20:47
:SH903i
:hl2laBBQ
#317 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――あの時どうにかしてハナを説得出来ていれば……あたしが逃げないと言い張れば……
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:08/05/08 20:48
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#318 [蜜月◆oycAM.aIfI]
どうやってあたしを逃がすつもりなのかハナに問うと、ハナはゆっくりと説明を始めた。
懐中電灯を二つ点し、あたしたちは慎重に作戦を練る。
成功するかどうかは賭けだ。男の反応に全てがかかっていた。
ハナは必ず成功すると信じていたから、あたしもハナを信じることにした。
――今日、男が来た時が勝負だ。
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:08/05/10 01:36
:SH903i
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#319 [蜜月◆oycAM.aIfI]
鉄製のドアにガチャガチャと鎖のぶつかる音がして、それが聞こえなくなると暗闇の中に一筋光が射した。
――来た。
ドアに繋がれていた鎖とスーパーの袋を手に持って、男が部屋に入ってくる。いつもの光景だ。
無表情な男は惣菜やパンが詰められた袋を床にドサッと置いてその隣に鎖を投げた。
金属とコンクリートがぶつかり合う嫌な音が響いて、あたしは体を強張らせた。ひどく緊張している。
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:08/05/10 01:37
:SH903i
:c20X8gQs
#320 [蜜月◆oycAM.aIfI]
男が部屋を出てドアを閉めたのを確認してハナがこちらを向いた。大丈夫か、とその目が問い掛けていた。
あたしはハナの目を見つめたまま頷く。
――大丈夫。
袋の中から昼に食べる分だけを取り出し、残りは夜に取っておく。今日の夜にはあたしはいないけれど。
そう思うとまた少し不安になった。
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:08/05/10 01:37
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#321 [蜜月◆oycAM.aIfI]
食事を終え、あたしはドアの前に立つ。ハナは部屋の隅で毛布に包まっていた。
緊張と不安が増してきて、心臓の音が聞こえる。自分の息遣いが荒いのがわかる。
目線は丸いドアノブに集中していた。
銀色のノブがゆっくりと回った。あたしは瞬時に振り向いてハナを見たけれど、彼女の顔は毛布に埋(うず)められていた。
それだけ確認するとすぐにドアに目線を戻す。向こう側のノブにかけられた男の腕が見えた。
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:08/05/10 23:39
:SH903i
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#322 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――上手くいきますように……。
そう願いながら、光のある外へと足を踏み出す。雨は止んでいた。
男が優しく微笑んであたしを見下ろしていた。自然とその大きな手を握る。
繋いだ手から緊張が伝わらないだろうか、そう心配になったけれど男はいつも通りだった。
あたしたちはいつものコースに向けて歩き出した。
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:08/05/10 23:40
:SH903i
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#323 [蜜月◆oycAM.aIfI]
はずだった。
けれど何時間か歩いた後、男はあたしの手を放した。いつもなら絶対に逃がさないあたしの手を、その日は何故か自由にさせた。
「パパちょっと疲れたから、向こうで遊んでおいで」
男は体を屈め目線をあたしに合わせてそう言った。その顔は本当に疲れているように見えた。
やつれているし、目の下のクマが濃い。
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:08/05/10 23:41
:SH903i
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#324 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしとハナの企みがバレているのだろうかと不安になったけれど、男の目に怒りや憎しみは見えなかった。
むしろ寂しそうな、悲しそうな感じがして、あたしは男が可哀相に思えて言葉をかけた。
「パパ? ……大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。行っておいで……」
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:08/05/10 23:41
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