よすが
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#340 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
コンクリートの箱に背を向け、あたしたちはゆっくりと土の道を歩む。
はっきりしない意識の中で、木々の向こうから背中に虚しい視線を感じていた。


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⏰:08/05/14 01:42 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#341 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
途中何度か転びながらも、あたしたちは歩みを止めなかった。
コンクリートの箱から離れるに連れて、後ろから男が追ってくるんじゃないかという恐怖に襲われた。

覚束ない足取りで歩くあたしの意識はかなり前から朦朧とし始めていて、体を密着させているハナの温かみだけが頼りだ。
頭の中は空っぽで、あたしはただ足を動かすことだけに集中していた。
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⏰:08/05/15 00:13 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#342 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
気がつけば頭の上に覆いかぶさる木の葉はなく、一面オレンジの空が拡がっていた。
歩みを止めてしまうと立っていることが辛くなってきて、あたしはハナの肩から滑り落ちた。

「ユキ!」
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⏰:08/05/15 00:14 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#343 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ユキがあたしの腕を掴んで、そのままゆっくり降ろしてくれる。
ここは、二週間前に連れて来られた駐車場だ。
あたしは黒い地面に体重を預け、空を見上げていた。
休まず歩いてきたせいかあたしの呼吸はさらに早くなり、体中が脈打っている。

「ハナ……ありがと……」
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⏰:08/05/15 00:14 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#344 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ハナ……ありがと……」

呼吸の隙間に呟いた。

「ユキ、大丈夫? しっかりして、もう少し下まで行かないと――」

「ちょっとだけ……休憩……させて……」

ハナの言葉を遮ってそう言うと、彼女は「うん」とだけ答えてあたしの左手を握りしめた。

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⏰:08/05/16 03:36 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#345 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
冷たい北風があたしの頬を撫でる。頭から流れていた血は止まったけれど、涙と混じって顔中にこびりついていた。
脇腹と左腕が激しい痛みとともに熱を帯びて痺れている。
けれどそんな体の状態に反してあたしの気持ちは晴々としていた。
たった一つの悲しみを除いては。

「ねぇ……ハナ」
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⏰:08/05/16 03:36 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#346 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「なあに?」

「一緒に……帰れない……かな? ……このまま……逃げられないかな……?」

声を出すのも辛いけれど、どうしてもハナを置き去りにしたくなかった。
あたしの言葉を聞いたハナは悲しげに目を伏せて黙り込んでしまった。
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⏰:08/05/16 03:37 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#347 [蜜月◆oycAM.aIfI]


>>344
コピペミスです
レス頭の

「ハナ……ありがと……」

↑この部分スルーして下さい(;´д`)

⏰:08/05/16 04:35 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#348 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……ハナは……帰りたくない……?」

弾かれたように彼女はブンブンと首を横に振る。

「じゃ……帰ろう? ……一緒に……お父さんと……お母さんのとこに……」

俯いたハナの目に迷いが浮かぶ。けれどすぐには頷いてくれなかった。
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⏰:08/05/16 23:12 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#349 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
下から見上げたハナの頭の向こうに広がる空は、オレンジと紺色が混じり合ってところどころ紫色を滲ませていた。
あたしはどんどん増してくる痛みに耐えながら、ハナの答えを待つ。

沈黙が寒さを募らせる。
あたしが口を開こうとした時、一瞬早くハナが言葉を発した。

「あたし帰らない」
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⏰:08/05/16 23:12 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


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