よすが
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#560 [○○&◆.x/9qDRof2]
「……」

「なんか寂しいなぁ。私だけ置いてきぼりかぁ」

当然孝からの返事はない。
太陽に雲が掛かった青空は、少し薄暗さを増していた。

「…ねぇ、何か言ってよ」

「……」

上半身を起こして孝を覗き込む。

「ねぇってば!」

無反応が続くと、溜め息をついて自嘲気味に笑う。

⏰:22/10/25 17:18 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#561 [○○&◆.x/9qDRof2]
馬鹿馬鹿しいことをしたな。
何を望んでいたんだろう。
私はもう死んでいるのに。
久しぶりに孝に話し掛けて、少し感情的になりすぎたのだろうか。
上半身を元の位置に戻していたら、隣から声が零れた。

「……今、俺が」

私は突然の孝の言葉に驚いて勢いよく顔をやった。

「俺が死んだら、千恵はまだその辺にいんのかな」

私は思わず吹き出してしまった。
というか、ここにいます。
孝は突然何を言うのかと思ったら、やはり私のことだった。

⏰:22/10/25 17:18 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#562 [○○&◆.x/9qDRof2]
概ね、やはり張り合う相手が突然いなくなったのでつまらないのだろう。
それとも事故死した当日も私をからかっていたから罪悪感でも感じているのだろうか。私の隣の男は、小さく息を吐いた。

「なんだか…つまらないな、今日は。からかう相手がいないと、こんなに調子出ないんだな」

「だからって、他の女子いじめないでよ?孝の悪ふざけは度が過ぎてるんだからね」

⏰:22/10/25 17:19 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#563 [○○&◆.x/9qDRof2]
私は懐かしい雰囲気に、思わず頬が緩んでしまった。これで孝の元気がない理由がわかった。孝自身は大丈夫だろう。楽観的だから、きっとすぐに男友達と元通りにふざけて生活していくに違いないだろう。しばらくの間、久々の雰囲気を味わっていた私は、昼休み終了のチャイムが鳴るまで青空の下、ずっと孝の隣にいたのだった。

⏰:22/10/25 17:19 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#564 [○○&◆.x/9qDRof2]
孝はチャイムが鳴ると焦ったように立ち上がり、片手で無造作にお尻を叩いた。紺色のズボンから細かい埃が舞い上がり、私の服を通り抜けて力無く地面に落ちていく。そのまま踵を返して足早に教室に戻っていく孝の後ろ姿を、私は虚ろに眺めていた。あれはいつのことだろうか。青空を見上げた私は記憶を辿る。小学校三学年の時、孝と私の関係は壊れた。その学年は、私が生まれて初めて男の子から告白を受けた歳だった。相手は、当時クラスで一番足が速くてムードメーカーだった中川君という男の子だ。

⏰:22/10/25 17:20 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#565 [○○&◆.x/9qDRof2]
中川君はやんちゃで、日焼けした肌にツンツンと尖った髪の毛が印象的なサッカー少年だった。それは、放課後に日直で残っていた私に対する突然の告白だった。あの頃は免疫もなく困惑したりもしたが、私はそれよりも初めての告白に恥ずかしさでいっぱいだった。

⏰:22/10/25 17:20 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#566 [○○&◆.x/9qDRof2]
頬を真っ赤に染めて呆然とする私の手から、赤いランドセルが滑り落ちた。
今思えば初々しい反応が子供だったなと微笑ましく感じる。彼は今こそ違う高校に通っているが、街中で偶然逢った時に、あの無邪気な子供っぽさは変わっていなかったと笑った記憶がある。

⏰:22/10/25 17:21 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#567 [○○&◆.x/9qDRof2]
結局その告白は私の恥ずかしさのために断ったのだが、次の日にはクラス中の噂になっていた。男子グループからは冷やかされ、女子からは質問攻めにされた。小学生では足の速さが好感度に繋がるのはよくある話で、中川君はモテる部類だったために女子からの質問には偽りなく答えた。

⏰:22/10/25 17:21 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#568 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、小学生だった私には今のように男子グループからの冷やかしに堪える精神は持ち合わせておらず、泣きながら帰って母に学校に行きたくないと困らせたりもした。その時の男子グループの中に、一番仲が良かった孝がいたのだ。

⏰:22/10/25 17:21 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#569 [○○&◆.x/9qDRof2]
それがきっかけだろうか。以来、孝は率先してグループのリーダーになり、事あるごとに私を冷やかした。初めは私もひどく裏切られた衝動に駆られて傷付いたが、孝を嫌いになっていくに連れて傷はみるみるうちに塞がっていった。

⏰:22/10/25 17:22 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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