よすが
最新 最初 🆕
#50 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ありがとう、サトル。行こう」

サトルは、何故感謝されたのか解らない、という様子で首を傾げている。
そんなサトルの手を引いて、あたしは探している何かがあるはずの場所に向かった。


.

⏰:08/04/03 19:52 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#51 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
T小学校に一番近い駅まで、あたしたちは電車で約一時間かけてやってきた。
サトルは終始ニコニコしっぱなしで、中山先生との思い出話をたくさんしてくれた。

駅から小学校まで歩いている今も、早く会いたいのだろう、今にも走り出しそうなくらいだ。

「サトルは中山先生がほんとに好きなんだね」
.

⏰:08/04/03 19:53 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#52 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルは、あたしがほとんど呆れ気味に発した言葉への返事の代わりに、いきなり走り出した。

「ちょっと、どうしたの?」

慌てて追いかけると、サトルは『T町立T小学校』と書かれた門の前で手を振っている。

――ここが、あたしの通った小学校……?
.

⏰:08/04/03 19:53 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#53 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
見たことがあるはずの建物を前にしても、やはりあたしの頭は何の反応も起こさなかった。

「あれ? あそこにいるの、中山先生だよ! ねえ、ユキ!」

あたしがサトルの立っている場所に近づくと、彼はまた走り出した。

「せんせえーーっ! 中山先生! 久しぶりー!」

.

⏰:08/04/03 19:54 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#54 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルの走っていく先には、花壇の花に水をやる手を止めてこちらを振り返った人物がいた。
白髪混じりの長い髪を頭の後ろでひっつめて、ベージュのロングスカートをはいたふくよかな女性……中山先生だ。

先生はこちらから走ってくるのがサトルだと気付いたのか、手にしていたホースを地面に置いてあたしたちの方に近づいて来た。
.

⏰:08/04/03 23:57 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#55 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「サトルくん……?」

「サトルだよおー! 先生久しぶり! 元気!? ユキも一緒なんだよ、ほら!」

サトルのテンションは最高潮に達してしまったようだった。
身振り手振り全開で、普段から高い声のトーンも一層高くなり、うるさいくらいだ。
.

⏰:08/04/03 23:58 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#56 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「中山先生、お久しぶりです」

とあたしがお辞儀すると先生は、驚いた、と言わんばかりにあたしとサトルへ交互に目を向けた。

「サトルくんに、ユキちゃんも……、久しぶりねえ。二人は相変わらず仲良しなのね」

そう言って笑う先生は、昔と変わらず優しい雰囲気をまとっている。
あたしは先生を前にしてなぜか焦ってしまい、普通なら昔の思い出話をしたりするはずなのに、唐突に用件を切り出してしまった。
.

⏰:08/04/04 00:06 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#57 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「先生、久しぶりに会っていきなりこんな話するのおかしいんですけど、あたしの昔の話聞かせて欲しいんです」

あたしがそう言い切ると、先生は驚く訳でもなく、あたしの眼をじっと見つめた。
その顔には、悲しみなのか哀(あわ)れみなのか、それとももっと別のものか……あたしには区別が付かない感情が表れている。
.

⏰:08/04/04 00:10 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#58 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしも何も言わず、先生の眼をじっと見つめ返す。
ここで拒否されれば、もう過去につながる道は無いかもしれない。
けれどここは、先生の判断に委ねたかった。

永遠にも思えた一瞬の後、先生の口から予想外の言葉が発せられた。

.

⏰:08/04/04 02:07 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#59 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「待っていたわ、ユキちゃん」

――え……?

「あなたがいつか来るだろうと思っていたの。ユキちゃんの聞きたいこと……私が話さなきゃいけないと思っていたことと同じはずよ」

――そうか。先生は知っていたんだ。
あたしの知らないあたしの過去を。

.

⏰:08/04/04 02:08 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194