よすが
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#57 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「先生、久しぶりに会っていきなりこんな話するのおかしいんですけど、あたしの昔の話聞かせて欲しいんです」

あたしがそう言い切ると、先生は驚く訳でもなく、あたしの眼をじっと見つめた。
その顔には、悲しみなのか哀(あわ)れみなのか、それとももっと別のものか……あたしには区別が付かない感情が表れている。
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⏰:08/04/04 00:10 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#58 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしも何も言わず、先生の眼をじっと見つめ返す。
ここで拒否されれば、もう過去につながる道は無いかもしれない。
けれどここは、先生の判断に委ねたかった。

永遠にも思えた一瞬の後、先生の口から予想外の言葉が発せられた。

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⏰:08/04/04 02:07 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#59 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「待っていたわ、ユキちゃん」

――え……?

「あなたがいつか来るだろうと思っていたの。ユキちゃんの聞きたいこと……私が話さなきゃいけないと思っていたことと同じはずよ」

――そうか。先生は知っていたんだ。
あたしの知らないあたしの過去を。

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⏰:08/04/04 02:08 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#60 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

遂にこの時が来てしまった。
思っていたよりも随分と早い。ここで昔の自分との対面を迎えてしまうのか?

正直、あたしはまだ完全に腹をくくり切っていなかった。


――待って、本当にいいの?

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⏰:08/04/04 02:09 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#61 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

ああ、また揺らぎ始めた。

揺れる……揺れる心……ほどける決意……あたし……

頭の中で幾つもの感情がぐるぐると巡る。

ふと目線を上げると、先生の優しい眼差しとぶつかった。
あたしを急かすこともなく、ただその優しい瞳で見つめてくれている。
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⏰:08/04/04 02:10 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#62 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
顔を横に向けると、サトルもあたしを見ていた。
サトルの瞳は先生のそれとは違い、不安、心配、疑問、のようなものが入り混じっているかに見えた。

それぞれの顔はもちろん違うが、その表情にはひとつ共通するものがあった。
それは、あたしへの愛情。

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⏰:08/04/04 02:11 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#63 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
愛されてると言い切るなんて、自意識過剰だと自分でも思う。
けれど二人の目からは、溢れるくらいの愛が、あたしに向けて注がれていた。

なんて幸せなことだろう。

二人だけじゃない、あたしには両親もいる。
無償の愛を、見返りを求めることのない愛情をくれる人が、こんなにもいるのだ。
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⏰:08/04/04 02:14 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#64 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
きっと彼らは、どんなあたしも受け入れてくれるに違いない。
守られている……そう感じた。

――もう大丈夫。


「先生。……教えてください」

あたしの答えを聞くと、先生は穏やかに微笑み、あたしたちを校舎の中へと案内してくれた。


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⏰:08/04/04 02:15 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#65 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

通されたのは、社会科準備室。
普段あまり使われていないのだろう、そこら中に散乱している大きな地図やプリントの束には埃が積もっている。
真ん中の机だけは、辛うじてきれいに掃除されているようだ。

先生は、あたしとサトルに折りたたみ式のパイプ椅子に座るように勧め、お茶を煎れてくれた。
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⏰:08/04/04 02:20 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


#66 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その間、あたしとサトルは言葉を交わさなかった。
椅子に座ってもサトルはキョロキョロと室内を見回していたが、あたしに気を遣ってくれているのか話し掛けてくることは無かった。
あたしはというと、先生の口から何が話されるのかという不安で頭がいっぱいだった。

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⏰:08/04/04 02:21 📱:SH903i 🆔:h9h3B4Yg


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