よすが
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#920 [ん◇◇]
「いいえ。わたしはどこにも行きませんわ.......」

 彼女の名は、野々宮 椿(ののみや つばき)。十七歳になる高校生だ。ファッションデザイナーとして世界的に有名な椿の父は、男手ひとつで椿を育てた。父は常に椿の意見を尊重し、椿もそんな父が喜んでくれるなら、と、父の為に最善の道を選ぶ。そんな野々宮家にも、決まりがあった。

⏰:22/10/26 10:11 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#921 [ん◇◇]
“十七歳になれば、婚約者を見つけること”

「.......椿、そんな相手いるの?」

 幼なじみで親友の美希が、学校へ行く車の中で聞いてきた。椿は微笑みながらも少し困ったのかうつ向いた。

「いると.......言いますか、立候補して下さった方がいて.......」

⏰:22/10/26 10:12 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#922 [ん◇◇]
と、言いながらその人物を思い出す。初めてあったのは椿の誕生日パーティーだった。元々、からだが弱い彼女は、パーティーに疲れ、隅の方の椅子に座っていたのだった。父は心配しながらも、来てくれた客に挨拶をしなければと、椿をおいて人混みに紛れていった。それを見送り、うつ向いてからため息をそっと吐く。

⏰:22/10/26 10:12 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#923 [ん◇◇]
『きみが、椿お嬢さん?』

 爽やかな、甘い声だった。ゆっくりと顔をあげれば、同い年か、ひとつ上くらいの男性がにこりと笑って椿を見下ろしている。青っぽい黒髪が印象的で、椿はぼんやりとしながらも立ち上がり、ひとつ礼をした。

⏰:22/10/26 10:12 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#924 [ん◇◇]
『初めまして。ぼくは蒼野 要(あおの かなめ)って言います』

『野々宮椿です。本日は足を運んで頂きありがとうございます.......』

 青野要と名乗る男性は、にこにこしながら椿に握手を求める。差し出された手を遠慮しがちに出せば、しっかりと手を掴まれる。父以外の男性に手を握られるのに慣れていない椿は、困りながら顔を赤らめた。

⏰:22/10/26 10:12 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#925 [ん◇◇]
『良ければお話でもどうでしょう。きみとは一度ゆっくりと話してみたいと思ったんだ』

 そこで。彼はどこで聞いたのか、自分が婚約者になりたいと名乗りでたのだ。父も彼を気に入っている様子で、椿も、ならばと彼を婚約者としようと考えていたのだ。「でも.......」と椿は思う。

⏰:22/10/26 10:12 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#926 [ん◇◇]
「美希ちゃん、ギンリョウソウって.......ご存知ですか?」

 椿の話の続きを待っていた美希は眉を寄せた。

「ギンリョウソウ?初めて聞いたよ」



 それは。パーティーの後の事だった。たまたま青野要が携帯で話している所に居あわせた椿は、話を聞いてはいけないと、踵(きびす)をかえそうとした。

⏰:22/10/26 10:13 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#927 [ん◇◇]
『まるでギンリョウソウのような女の子だったよ』


 青野要は確かにそう言った。耳慣れないその単語に、椿は思わず足を止めた。

 ギンリョウソウ?


その単語を調べたくて、辞書を開いた。意味は<山奥の陰にしか咲かない半透明の白い花>.......などの意味が書かれていた。あまり良くない意味だというのは分かった。

⏰:22/10/26 10:13 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#928 [ん◇◇]
しかし、分からない。そんな少女を、何故彼は婚約者として名乗りをあげたのだろうか。それとも、何か別の意味が.......?



ギンリョウソウ

 第一話

 椿が通う学校はお嬢様が行くような学校ではない。

⏰:22/10/26 10:13 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#929 [ん◇◇]
美嘉と一緒の一般の学校だ。これは椿の希望で、父も快く許してくれた。むしろ美嘉がいてくれた方がありがたいと喜んでくれたのだった。

「あ、美嘉、椿。おはよう」

教室に入って、にっこり笑いながら挨拶したのは友人の神野 絵子(かんだえつ)だ。優しくいつも前向きな女の子だ。

「おはようございます.......」

⏰:22/10/26 10:14 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


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