よすが
最新 最初 全 
#107 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――あの時と同じだ。
あたしはあの時のまま……一人では何も出来ない、弱いままだ。
でもサトルは違う。
前を向いてずんずん進んでいくサトルの表情は見えないけれど、後ろ姿だけで解る。
サトルは……逞しくなった。
.
:08/04/08 23:14
:SH903i
:U9CTaOi2
#108 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あの時も強いと思ったけれど、今のサトルには“強い”よりも、“逞しい”という言葉が似合う。
こんな面倒なことに巻き込んだあたしを、サトルは気遣い、支え、信じてくれる。
それを無駄にはしたくない。
サトルが信じていてくれる間は、あたしは何も諦めない。
.
:08/04/08 23:14
:SH903i
:U9CTaOi2
#109 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――でも……サトルは今、何を考えているんだろう?
「ねえ、サトル」
駅から家に向かう道の途中で、あたしは声をかけた。
あたしの手を引いて前を歩いていたサトルが、立ち止まると同時にくるっと振り向いた。
.
:08/04/08 23:15
:SH903i
:U9CTaOi2
#110 [蜜月◆oycAM.aIfI]
振り向いたサトルの表情は、……笑顔だった。
いつもの、人懐っこい子犬のような笑顔。
「なあに?」
見慣れた笑顔が目の前にあった。
きっとサトルは、心配そうな、困ったような顔をしているんだろうと、あたしは思っていたのに。
.
:08/04/08 23:16
:SH903i
:U9CTaOi2
#111 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ふふっ、……あっはっははは!」
急におかしくなってきて、あたしは吹き出してしまった。
あたしは何を心配してたんだろう?
何も心配することなんか無いじゃない!
まだ笑っているあたしを、サトルは不思議そうな顔をして見ている。
.
:08/04/08 23:17
:SH903i
:U9CTaOi2
#112 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「何でもない!」
あたしはそう言って、今度は逆にサトルの手を引っ張って歩き出した。
「なにー? 一人で笑ってずるーい! 何が面白いの? 僕にも教えてよ!」
サトルがいつものようにギャーギャーと騒ぎ始めた。
あたしはそれがなんだか嬉しくて、「秘密だよ」とだけ言って歩き続けた。
.
:08/04/08 23:17
:SH903i
:U9CTaOi2
#113 [蜜月◆oycAM.aIfI]
家に着く頃には太陽は沈み切って、立ち並ぶ街灯や看板の明かりが道を照らしていた。
あたしは別れ際、帰り道の間に考えていたことをサトルに伝えた。
「明日ね、図書館に行こうと思ってるんだけど。……一緒に来てくれないかな?」
街灯の光で、二つの影が地面に伸びている。
.
:08/04/09 01:01
:SH903i
:APNEtQ/Q
#114 [蜜月◆oycAM.aIfI]
明日は土曜で学校は休みだ。
あたしは、記憶喪失の原因になった事件のことを調べようと思っていた。
「珍しいね!」
目を真ん丸にして、嬉しそうにサトルがそう言ったけれど、あたしは何のことか解らない。
「ユキが僕についてきてなんて、今まで言ったことないよね」
.
:08/04/09 01:01
:SH903i
:APNEtQ/Q
#115 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――そうか、あたしが頼まなくてもサトルがいつもついてきてくれるからだ。
気がつかなかった。
あたしが一緒に居て欲しい時、何も言わなくてもサトルは来てくれてたんだ。
サトルは、どうしてあたしの気持ちが解るんだろう?
.
:08/04/09 01:02
:SH903i
:APNEtQ/Q
#116 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「え、ユキ? ちょっとっ……どうしたの? ごめん、何か嫌だった?」
気がつくと、あたしの目から涙が一筋流れていた。
「ち、違うのっ……ごめんね、サトル。嫌なことなんか無いんだけど……」
自分でも驚きながら、溢れる涙を拭い、サトルに無理矢理作った笑顔を見せた。
.
:08/04/09 01:03
:SH903i
:APNEtQ/Q
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194