よすが
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#201 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんなことを考えながらコンクリートの箱を観察していたが、何の動きもない。
腕に付けていた時計を見てみると、時刻はもうしばらくで夕方の四時になるところだった。

さっきまで汗だくになって歩いていたので、熱が引いた今、汗で濡れた体が冷えてきた。
雲に遮られたせいで太陽の光が全く届かなくなったのもあって、あたしの体はカタカタと震える。
同じように震えているサトルの呟きが聞こえた。
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⏰:08/04/18 22:29 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#202 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ううー、寒いよぅ……」


次の瞬間、トン、という音がしたかと思うと、それは連続した雨音に変わっていた。
あたしとサトルの上を覆い尽くす木の葉は、傘の代わりにはならなかった。
視界は一気に明るさを無くし、大量の水滴があたしの体から更に熱を奪ってゆく。
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⏰:08/04/18 22:30 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#203 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――寒い……暗い……冷たい……

あたしは寒さで朦朧としながら、なんとなく妹のことを考えていた。


――あたしの妹……。
どんな子だったんだろう。あたしと似てたのかな……性格はどんなだったの?
あたしと仲良しだったのかな。
何をして遊んでたのかな……。

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⏰:08/04/18 22:31 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#204 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
考えれば考える程、悲しくなり、寂しくなった。
妹がいないという事実。十年前から変わらないはずのそれは、ここ何日かで大きな悲しみをまとうようになっていた。

――でも……妹はもっと暗くて寂しくて、もっと冷たい世界に逝ってしまったんだ。
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⏰:08/04/18 22:32 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#205 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
胸が詰まり、目の中の水分が一気に増えた。
収まりきらなくなった涙は、雨と混じり合いながらあたしの頬を滑り落ちていく。
鳴咽を漏らすこともなく、声を上げるでもなく。
ただ、ひたすら流れ落ちてゆく涙。
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⏰:08/04/18 22:32 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#206 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしたちの視線の先にあるコンクリートの箱は、雨に濡れて濃い灰色になっていた。
あたしは潤んだ目でその壁の一点を見つめたまま、あの病室から始まった自分の人生に想いを馳せた。

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⏰:08/04/18 22:34 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#207 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ(・ω・*)

>>149


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⏰:08/04/18 23:26 📱:SH903i 🆔:gqbjt9BM


#208 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
毎日毎日病院に通ってくれた両親。
母は朝から晩まであたしに付きっきりで世話をしてくれた。
面会時間の許す限り、母はあたしの隣にいてくれた。
睡眠も充分に取っていなかったのだろう、母の顔はいつも疲れていた。
けれどあたしの前では、いつも笑顔だった。いつも優しかった。
傷が痛いとうめけば、体をさすってくれた。
一人で寝るのが怖いと言えば、宿泊許可をとって隣で眠ってくれた。
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⏰:08/04/19 22:32 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#209 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その優しさは今もずっと変わっていないけれど、一度だけ、母に叱られたことがある。

高校生になってすぐの頃、あたしは仲良くなった友達と遊びに出かけ、帰りが遅くなったのだ。
いつもなら連絡するのだが、その日はたまたま携帯電話の充電が切れていた。
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⏰:08/04/19 22:33 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#210 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは母がどれだけ心配するかなんて少しも考えず、連絡しないままにしてしまった。
友達と別れた後、怒られるかな、なんてのんきに考えながら帰りの電車に乗った。

家に着いて、なぜかあたしは出来るだけ音を立てずにリビングに向かった。
これだけ遅くなったのだから、もう怒られるのは避けられない。
だから、出来るだけ刺激したくないという無意識がそうさせたのだろう。
ドアを開けると、父と母が目を赤くして待っていた。
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⏰:08/04/19 22:34 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


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