よすが
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#251 [蜜月◆oycAM.aIfI]
しかし眼に映る光景は、さっきと変わらなかった。
真っ白な世界の真ん中で、小さなあたしは“あたし”を見上げていた。
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:08/04/25 22:09
:SH903i
:ZORuxzbU
#252 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは何も言わず、向かい合っている“あたし”の黒い瞳を見つめる。向こうもただ黙って、あたしの瞳を見つめ返す。
彼女の瞳は幸せに満ちていて、とても優しい笑顔であたしを包み込んだ。
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:08/04/25 22:09
:SH903i
:ZORuxzbU
#253 [蜜月◆oycAM.aIfI]
光以外に何も無い沈黙の空間で、あたしと“あたし”はただ見つめ合う。
お互いの瞳を見つめるのに、どのくらいの時間を費やしただろうか。
“あたし”がまず口を開いた。
「あたし、幸せだよ」
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:08/04/25 22:10
:SH903i
:ZORuxzbU
#254 [蜜月◆oycAM.aIfI]
“あたし”は本当に幸せそうに小さく呟く。優しい笑顔。
その顔を見ればわかる、とあたしは思った。でも口をついたのは別の言葉だった。
「どうしてこんな夢を見せるの?」
夢に出てくるってことは伝えたいことがあるからに違いない。
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:08/04/25 22:11
:SH903i
:ZORuxzbU
#255 [蜜月◆oycAM.aIfI]
……いや、それは死者にだけ許された行為かもしれない。もしくは生き霊?
しかし、もはやあたしは死んでいるのだ。
幼いあたし。記憶として十八歳のあたしの中で生きているはずのあたしは、そこにいないのだから。
「そう、あたしはあなたを殺してしまった。そしてあなたの復活を望んだ」
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:08/04/26 22:26
:SH903i
:PBcoUI3k
#256 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしが口に出さなかった言葉に、“あたし”は答える。
「あたし、幸せなんだよ」
再びそう言う“あたし”は、さっきと違い悲痛な表情を見せる。
「あたしだけ、幸せなの。記憶から、幼いあたしを消して。妹も消して。
どうして消してしまったの? あたしは……あなたと妹を犠牲にしたの?」
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:08/04/26 22:27
:SH903i
:PBcoUI3k
#257 [蜜月◆oycAM.aIfI]
逆に問い返す“あたし”は顔を歪め、今にも泣き出しそうだった。
“あたし”の疑問と悲しみを消すように、あたしは答える。
「それでいいんだよ。あたしたちはそれを望んだの。あなたに殺されることを望んだ。
あなたの幸せの為なら、あたしたちは消えてしまうことさえ喜んだよ」
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:08/04/26 22:28
:SH903i
:PBcoUI3k
#258 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの満足気な言葉を聞いて、“あたし”はより一層顔を歪め、泣いた。息を吸い、吐き、しゃくり上げた。
人の犠牲の上に生かされた“あたし”。
その犠牲さえも忘れ去った“あたし”。
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:08/04/26 22:29
:SH903i
:PBcoUI3k
#259 [蜜月◆oycAM.aIfI]
その罪の意識と感謝の念が、幼いあたしに伝わる。
「泣かないで、ユキ? こうしてここで会えたんだから。あなたはあたしを甦らせてくれた。あたしはそれがすごく嬉しい。
……ありがとう」
朗らかな笑顔でそう言うと、幼いあたしは“あたし”の前まで来て、“あたし”の両手を握った。
“あたし”の涙はもう止まっていて、眩しい白さが目に痛い。
手と手を繋いで、幼いあたしを見下ろす。
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:08/04/26 22:30
:SH903i
:PBcoUI3k
#260 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「もう、全部、思い出したでしょ?」
――うん。思い出した。
“あたし”は幼いあたしの言葉通り、八年間の全てを取り戻した。
まるでこの繋いだ両手を伝わって、幼いあたしが大切に守っていた記憶が“あたし”に流れ込んでくるようだ。激しい勢いをもって、一気に。
頭の中に、鮮明に蘇る過去の記憶。流れるように八年分の断片が通り過ぎてゆく。
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:08/04/27 23:23
:SH903i
:0Tdrl5r6
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