よすが
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#331 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「友達……ユウコの……」

「そうだよ、もう帰らないといけないの」

涙が血を洗い、少しずつ周りの様子が見えてくる。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#332 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
暮れ始めた薄赤い空の下に男が立っていて、その顔は向こう側に向けられている。
男の視線の先には、ハナが立っていた。拳を握りしめ、強張った表情でじっと男を見つめている。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#333 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは体を支えようと腕に力を入れた。
ズキン、と右肩が痛む。
それでも歯を食いしばり、なんとか上半身を起こした。
まだハナと男は見つめ合っている。
あたしの荒い呼吸だけが、静かな森の中に響いていた。
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⏰:08/05/13 21:49 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#334 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……友達?」

男が同じ言葉を繰り返す。今度はあたしの方をチラリと見た。

「そう、友達」

ハナは男から目を離さない。ほとんど睨みつけるようにしながら震える声で呟いた。
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⏰:08/05/13 21:50 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#335 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「帰らなきゃいけない……?」

焦点の合わない目で男はあたしを見る。
あたしは祈るような気持ちで男を見上げていた。

――お願い……お願い!

あたしの呼吸が冷たい空気に響く。

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⏰:08/05/14 01:38 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#336 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……そうか。じゃあ近くまで送ってあげなさい、ユウコ」

男の目があたしからハナに移る。
それを追ってあたしもハナの方を見遣ったけれど、何だか視界がぼやけている。でも赤くはない。
安堵からか、痛みからか。意識が遠のく。
体を支えていた腕の力が抜けていく。
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⏰:08/05/14 01:39 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#337 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
倒れる――その瞬間、細い腕があたしの体を抱いた。
ハナだ。

「帰ろう?」

――うん。

あたしは小さく頷いた。
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⏰:08/05/14 01:40 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#338 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの細く白い腕があたしの体を持ち上げる。
力を入れているのに、入らない。自分の体じゃないように感じる。
ハナの腕の力だけであたしは立ち上がった。

「早く帰ってくるんだよ」

男の声がした。感情を失ってしまったように抑揚の無い声が。
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⏰:08/05/14 01:41 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#339 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「必ず戻るから……待ってて、パパ」

そう言ったハナの声に、男への憐れみを感じた。

ハナの肩に腕を回し体重を乗せ、足を引きずるようにしてあたしは進む。
あの忌ま忌ましいコンクリートの箱から離れられる。男の呪縛から逃れられる。
その想いがあたしの足を動かしていた。
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⏰:08/05/14 01:41 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#340 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
コンクリートの箱に背を向け、あたしたちはゆっくりと土の道を歩む。
はっきりしない意識の中で、木々の向こうから背中に虚しい視線を感じていた。


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⏰:08/05/14 01:42 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


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