よすが
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#355 [蜜月◆oycAM.aIfI]
でもハナはいつもいい子だった。両親の言うことをよく聞く真面目な子どもだった。
おもちゃが欲しくてあたしが駄々をこねても、ハナは何も言わずに下を向いていた。
結局父や母が折れておもちゃを買ってくれることになり、ハナに何がいいかと聞いてもハナは首を横に降って「あたし、いらない」と言うのだった。
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:08/05/17 23:07
:SH903i
:r2FaV5hA
#356 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしはそれがハナだと思っていた。普段から真面目で親に迷惑をかけることのない、しっかりした妹だと。そう思っていた。
それにあたしはハナが羨ましかった。あたしより成績もよかったし、親戚が集まった時なんかに褒められるのは決まってハナだったから。
父や母が親戚からハナを褒められて嬉しそうにしているのがすごく羨ましかった。
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:08/05/17 23:08
:SH903i
:r2FaV5hA
#357 [蜜月◆oycAM.aIfI]
でもハナは、親戚から褒められることよりも父と母の愛情を欲していたのだ。
両親がハナよりもあたしに多くの愛を注いでいたとは思わない。
けれどハナにはそう思えてしまったのか。
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:08/05/18 22:09
:SH903i
:eMAjbdcw
#358 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「家族四人でいても、真ん中にはいつもユキがいた。あたしが何か言っても、すぐユキの話になっちゃうでしょ?
お父さんもお母さんもユキの話に夢中だったしあたしの話なんていつも聞いてくれなかった。
あたしがテストで毎回百点とるより、ユキがとった一回の八十点の方がお母さんは喜んでた」
ハナの微笑みは消えない。でもあたしの顔は崩れる一方だった。
呼吸はさらに激しくなり、胸の上下運動は速度を増していく。
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:08/05/18 22:10
:SH903i
:eMAjbdcw
#359 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「あの人にここへ連れてこられるまで気付かなかったの……あたしはあの家にいても独りぼっちだった。誰も必要としてくれなかった」
――違う、そんなことない!
そう言おうとしたけどあたしの声は出なかった。寒さと痛みで唇が動かない。
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:08/05/19 23:06
:SH903i
:t3uEDHYM
#360 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「……でもあの人は、あたしのことだけ考えてくれる。あたしを必要としてくれてる。
あたしがいなくなっちゃうとあの人死んじゃいそうなの」
辺りは真っ暗で、駐車場を照らす街灯が遠くにいくつか見える。
その光はここまで届かず、ハナの表情はよくわからなかった。
でも一定の間隔を置いてあたしの頬に落ちる雫が、ハナが泣いているということを教えてくれる。
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:08/05/19 23:06
:SH903i
:t3uEDHYM
#361 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「……ハ……ナ……」
あたしの喉がやっと音を出した。
「……ハナ……お父……さんも……お母さん……も……あたしも……ハナ……の……こと……大好き……だよ……」
「わかってる」
暗闇の中に、今までの微笑みとは違う、ニッコリ笑った顔が見えた気がした。
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:08/05/19 23:07
:SH903i
:t3uEDHYM
#362 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「でもね、あたし、あの人のこと心配で仕方ないの……ごめんね、ユキ。……あたしのこと、許してね」
何も、言えなかった。
顔の温度が高まるのを感じ、あたしの目にも涙が溢れ出す。
ハナの涙とあたしの涙が頬の上で同化する。
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:08/05/20 23:34
:SH903i
:p18Ru3ZA
#363 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの体は泣くことでさらに体力を失い、息は乱れ、喉が鳴る。目を開くのも億劫になり、耳の中には自分の呼吸の音だけが響く。
体の表面に澱んだ液体で膜を張られたように全ての感覚が鈍る。
「……、……。……」
ハナの声が聞こえる、けれどくぐもって何を言ってるかわからない。あたしの耳は息の音しかとらえない。
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:08/05/20 23:35
:SH903i
:p18Ru3ZA
#364 [蜜月◆oycAM.aIfI]
急に、あたしの体に力が加わる。
ハナがあたしを起こそうとしているようだ。
あたしは抗うでもなく力を入れるでもなく、されるがままだった。
ハナの肩に手を回され背中を抱えられ、再び歩く体勢に戻る。
ハナが歩き出すと、引きずられるようにしてあたしの足は動く。あたしの意思じゃない、ただ体重を支えようとする反射運動だけで進んでゆく。
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:08/05/20 23:36
:SH903i
:p18Ru3ZA
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