よすが
最新 最初 🆕
#388 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
首を動かして光の元へと視線を落とすと、寝かされているあたしの右側に懐中電灯らしきものが立てられていて、そのすぐ横にはサトルが座り込んでいた。
あたしが目覚めたのに気付いて、光に薄く照らされたサトルの横顔が笑顔に変わった。
子犬みたいな、無邪気な笑顔。

「あぁ、よかったぁ! ユキ、大丈夫? 体辛くない? すごい熱だったんだよー! あ、ちょっとみせてね」
.

⏰:08/05/26 01:40 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#389 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
まだ頭がぼーっとしていて、サトルのたたみかけるような問いかけに一つも答えられないままあたしは口をパクパクさせていた。
そんなことはお構いなしにサトルの手の平があたしの額にピタッとくっつく。
冷たくて気持ちいい。
と思ったらすぐに離れていった。

「まだちょっと熱いけど、さっきよりは下がったみたいだね。よかった! あ、お腹空いてる? なんか食べる?」
.

⏰:08/05/26 01:40 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#390 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ん……大丈夫、ありがと」

やっと返事できた、と思いながらあたしは体を起こした。
闇に慣れてきた目で部屋の中をぐるりと見回してみて気付いた。
何か物がたくさん置かれて雰囲気は変わっているけれど、間違いない、ここはあたしとハナが監禁されていたコンクリートの箱の中だ。
辺りに置かれているものはよく見えないけれど生活用品――ティッシュペーパーや小さな鍋、ごみ箱などのようだ。ここで人が生活している気配がする。
それに気付いてしまったあたしは心が大きく揺れた。
.

⏰:08/05/26 01:41 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#391 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――あの犯人の男が今もここで……?


あたしの横にいたサトルが自分のリュックの中をがさごそとかきまわして何かを取り出すと、あたしの手をとって小さな包みを握らせた。

「レモンキャンディ、ユキの好きなやつだよ!」

――サトル……。
.

⏰:08/05/26 01:42 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#392 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
昔から好きだったレモンキャンディ。どれでもいい訳じゃなくて、あたしは袋に特徴のある顔をした大きなレモンが描かれたものが一番好きなのだ。
ほっとした。
サトルがついていてくれるならどんな状況でも大丈夫だと思える。

あたしはサトルに謝らなければいけないことがあったのを思い出した。
.

⏰:08/05/26 01:42 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#393 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「サトル、あたし……忘れててごめんね」

手にレモンキャンディを握りしめたままあたしはサトルの瞳を見つめた。
あたしは物心つく前から同じ時間を過ごした友達を記憶から消していたのだ。
あたしがサトルの立場なら……ショックを受けるに違いない。

「思い出したんだ?」
.

⏰:08/05/26 01:44 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#394 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「思い出した。……ずっと近くにいてくれたのに、あたし……本当にごめん」

あたしは頭を下げた。
どうしてサトルは自分のことを忘れてしまったあたしの近くにいてくれたのかはわからない。
でも十年もそばにいてくれたのにちっとも思い出してあげられなかったことが申し訳無かった。

「いいんだ、僕のことは。ユキが笑っててくれたら、それでいいんだ」
.

⏰:08/05/26 01:45 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#395 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう言いながらあたしの顔を上げさせたサトルは、やっぱり笑顔だった。
いつもの笑顔。まぶしく輝く、とびっきりの笑顔。

「飴、食べなよ」
.

⏰:08/05/26 01:46 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#396 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
優しく促されて、あたしはコクリと頷くと包みを破ってレモンキャンディを口に含ませた。
舌の上で転がすと、レモンの酸味と飴の甘味が口いっぱいに広がる。
口の奥の方がキュッと縮こまる感じがした。これが大好きなのだ。

サトルが穏やかな表情で見守ってくれていたので、あたしは小さく笑い声を零してしまった。

「おいしいよ」
.

⏰:08/05/26 01:47 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#397 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ほんとに好きだねぇ。持ってきてよかった!」

へへ、と笑ったサトルにあたしは心の底から感謝した。口では言い表せないくらいだった。

「ありがと、サトル!」

と、気持ちが抑え切れずにあたしは自然とサトルの体に抱きついていた。
サトルは驚いたような短い声をあげたけれど、嫌がることもなくあたしの肩をポンポンと優しく叩いてくれる。
.

⏰:08/05/26 01:47 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194