よすが
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#41 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

家に帰ると、母が夕飯を用意しているところだった。

「おかえり、ユキ。遅かったじゃない」

「ただいま。サトルとちょっと話してたんだ。着替えたら手伝うね」

あたしはなるべくいつも通りに振る舞おうとした。
でも、母の顔を真っ直ぐ見られない。
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⏰:08/04/03 16:38 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#42 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――ごめん、お母さん。あたし、過去を知りたいんだ。

けれどそれは、今が大切じゃないということではない。
今あるこの家族や友達は何があろうとなくしたくない。

――でもあたしは、あたし自身をもっと理解したい。全てを知りたいんだ。
あたしには、その権利があるはず。

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⏰:08/04/03 16:40 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#43 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「いいわよ、もう出来上がってるから。手洗ってきなさい」

その優しい母の声に、決意がほどけそうになる。
うん、とだけ答えて、自分の部屋へ向かう。

――決めたんだから。決めたんでしょ。

自分に言い聞かせる。

――迷わないって決めたんだから。
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⏰:08/04/03 16:41 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#44 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしのために、父と母は二人で創ってきた人生の一部を捨ててくれた。
大切な思い出や、毎年祝いたい記念日もあっただろう。
それを、あたしは潰してしまったのだ。

そんな二人に逆らうように、あたしは過去に縋(すが)りつく。
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⏰:08/04/03 16:42 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#45 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれど、あたしが八年間の記憶を思い出せば、父と母の八年間も取り戻せるのだ。
二人には、人生に影をつくって欲しくない。最初から最後まで、輝くほど幸せな人生を送って欲しい。

そのためにも、あたしはどんなに無様(ぶざま)だろうと、どれだけ辛い思いをしようと、なりふり構わず過去に縋りつこう。

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⏰:08/04/03 16:44 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#46 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
着替えながら、ほどけそうになった決意をきつく結び直していると、父の声がした。

「あれ、ユキは? まだ帰ってないのか?」

部屋を出て父に声をかける。

「いるよー! おかえり、お父さん」

父と母、二人の顔を見て、改めて思った。
絶対に二人には、心配も迷惑もかけない。

自分で自分の過去にけりをつけるんだ。


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⏰:08/04/03 16:45 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#47 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
―U―


次の日、全ての授業が終わると、あたしは走って屋上に向かった。

昨日の夜は、あの女の子の夢を見なかった。
もしかしたら、夢が何か過去につながるヒントを示してくれるかもしれないと期待していたけれど、現実はそう上手くいかないものだ。

屋上に来たのは、自分を戒めるため。
最初に過去と向き合うと決めた場所に来れば、心を強く持てると思ったから。
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⏰:08/04/03 16:48 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#48 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
マフラーもコートも教室に置いてきてしまったから、屋上に出た途端体が震えた。

それでもあたしは足を進め、柵の手前に立った。
あたしが過去を置いてきてしまった、あの町の方を眺めてみる。

――あの女の子は誰? あたしはどうして記憶を閉じ込めたの?

「……絶対に思い出してやる」

一人そう呟いて、あたしは屋上を後にした。


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⏰:08/04/03 16:49 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#49 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
教室に戻ると、昨日と同じようにサトルが待っていた。

「ユキ、行こう」

サトルはあたしの心が読めるのだろうか?
なんて、非現実的なことを考えてしまうほど、サトルはいつでもあたしの求めている言葉をくれる。
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⏰:08/04/03 19:51 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#50 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ありがとう、サトル。行こう」

サトルは、何故感謝されたのか解らない、という様子で首を傾げている。
そんなサトルの手を引いて、あたしは探している何かがあるはずの場所に向かった。


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⏰:08/04/03 19:52 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


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