よすが
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#471 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナがどんなに家族想いか、あたしは信じられない思いだった。
耐え切れず涙が浮かぶ。

どうしてこんなに優しいハナがあんな目に?

あたしは改めて神様を恨んだ。
膝の上で強くにぎりしめた拳に、ポタリと涙が落ちる。
唇を噛み締め、声を押し殺した。

――あたしが泣いてどうするの? ハナの方が辛いはずなのに……っ!
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⏰:08/06/12 05:23 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#472 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
涙を堪えようと下を向いて強く目をつむる。

と、ふわりという感触があたしのまぶたを撫でた。
力を抜いて目を開けると、ハナがティッシュペーパーを一枚手にして微笑んでいた。
あたしの涙を拭ってくれたようだ。

「泣かないで、ユキ。ユキが笑っててくれないとあたしもサトルも悲しいよ」
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⏰:08/06/12 05:23 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#473 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その言葉にサトルが頭をブンブンと振って頷く。
それがおかしくて、あたしは泣きながら笑ってしまった。

「んっ……大丈夫、ありがとう二人とも……。ハナ、続けて?」

あたしの目から未だ零れる涙をもう一度ティッシュで拭うと、ハナは続きを話し出した。

「えーと……そう、同級生だって電話して、お父さんが出て……それで、よくわからないままユキちゃんは元気ですかって言ったの。そしたら……記憶はまだ戻らないけど元気だよ、って……。それで、ユキがホントに約束守ってくれたんだってわかったの」
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⏰:08/06/12 05:24 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#474 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナはそこで一度言葉を切り、テーブルに置いていた紅茶に口をつける。
あたしやサトルに返事を求める様子もないので、あたしたちは無言でハナを見守った。

「お父さんの声が懐かしくて……会いたくなって……。でもユキがあたしのことを忘れているなら会いには行けないと思った。それでいろいろ考えてたら……『ユキをよろしくね、お父さん』って言っちゃったの。すぐに電話を切ったけど……それからは寂しくて、何回も電話したくなっては我慢して……」

ハナの口調は最初から最後まで淡々としている。けれどやはり表情は悲しげで、切ない微笑みが浮かんでいた。
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⏰:08/06/12 05:26 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#475 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんなハナの表情に気を取られる一方で、あたしはハナの話を聞いて何か頭に引っ掛かるものがあった。

「ハナ……それって、あたしが帰ってからどのくらい? 覚えてないかな?」

俯くハナの背中に手を当て、出来るだけ優しく尋ねる。
あたしの考えが当たっていれば、ハナの答えは、四年と半年――。
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⏰:08/06/12 05:27 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#476 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「四年と……半年くらいかな。……あの人が死んだのがそれくらいで、すぐに電話をかけたから」

――やっぱり。

「ハナ」

そう呟いて、あたしはハナの首に両腕を回して抱き寄せた。
ハナの手があたしの髪を撫でる。

「その日、……きっとハナが電話した日だよ。お父さん酔っ払って……すごくイライラしてた……いつものお父さんじゃなくて、何かずっと考えてて……それであたしに昔のことを少しだけ話したの」
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⏰:08/06/12 05:28 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#477 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父は、きっと葛藤していたのだ。

ハナが生きている。

それを知ってしまった。
けれどあたしは事件とハナのことをすっぽりと忘れ去っている。
ハナを探し出しても共に暮らせるかどうか……けれどハナを放ってはおけない。

そうして、苦悩していたに違いない。
そしてあたしに引っ越したという話をしてしまったのだろう。
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⏰:08/06/12 05:28 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#478 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その結果父がどう行動したのか、母には話したのか、それらは全くわからないけれどきっと父もそれから約五年半の間、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて来たのだと思う。

「あたしが電話で『お父さん』なんて言わなかったら……お父さんの苦しみを増やすこと無かったのに……」

ハナが苦しそうに小さく漏らした。

「そうじゃない、ハナは悪くない! 自分を責めないで、ハナのせいじゃないから。お父さんもきっとそう思ってるよ」
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⏰:08/06/12 05:29 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#479 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは抱きしめたハナの体をさらに強く抱きながら、ハナに語りかけた。

ハナが何をしたと言うのか。
ここまで自分を犠牲にしてきたのに、まだ自分を責めさせるの?

神様は残酷だ。

あたしはハナの体を抱いている手で撫で、目を閉じた。

神なんて……様付けで崇められているけれど、人間を弄んで喜ぶ変態だ。
あたしは神からもその他全ての悪からも、ハナを守る。
もう、二度と失いたくないから。
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⏰:08/06/12 05:30 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#480 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナがあたしの腕を抜けたのを感じた後に、チャリ、と言う音がした。

「これ……ちゃんと着けてくれてるんだね」

あたしは目を閉じたまま頷く。
ハナが手に取ったであろう物体は、あたしの首から提げられたリングだ。
チェーンを通して肌身離さず着けている。

「ずっと着けててね……あたしとユキはあの人を忘れないでいてあげないと……ダメだから……」
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⏰:08/06/12 05:31 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


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