よすが
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#511 [○○&◆.x/9qDRof2]
私の声は喉から出てくることはなく、心の中で虚しく響いて消えた。声が、出ない。身体も動かない。母と、その他のいくつかの泣き声とお経だけが耳に届く。

「千恵、」

母が私を呼んでいる。どうしたの?お母さん。答えは返ってこなかった。私の意識は一気に覚醒してきた。先程からずっと続いている奇妙な感覚。

⏰:22/10/25 15:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#512 [○○&◆.x/9qDRof2]
身体を取り巻く違和感に、生きた心地がしなかった。言うならば、呼吸しないで生きているような感覚。息苦しい。体は質量を失い、ふわふわとしながらも心臓だけがずっしりと重い。経験したことのない感覚。お母さん。これは夢だよね?現実味がありすぎて、頭が困惑してしまった。

⏰:22/10/25 15:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#513 [○○&◆.x/9qDRof2]
夢には思えない、でも夢だと信じたい。私は怖くなった。早く覚めろ早く覚めろ。声が出ない、何故?


早く、早く!
これは夢だ!
身体もっ!

動いて、動いてっ、

動いて!!

⏰:22/10/25 15:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#514 [○○&◆.x/9qDRof2]
「千恵…どうして死んでしまったの?」

 母の声と共に、私の体は下から弾かれたような強い衝撃を受けた。驚く間もなく、気付いたら動けるようになっていた。あの感覚は消えないものの、いつもと何ら変わりない目覚め。

⏰:22/10/25 15:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#515 [○○&◆.x/9qDRof2]
ただ違うのは、目の前に広がる光景だった。目に映ったのは、綺麗に正座しながら泣く、全身真っ黒の知り合いたち。友達から親戚まで、どうやら外にもまだいるようだ。壁には白と黒の幕が垂れ下がり、目の前にはお坊さんがお経を読んでいる。

⏰:22/10/25 15:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#516 [○○&◆.x/9qDRof2]
.......ほらね、やっぱり夢だった。現実的すぎるけど、これは夢だ。夢じゃないなら何なのか、教えて欲しいくらいだ。辺りを見渡せば、暗い雰囲気は葬式そのものだった。ちらりと振り向けば自分の遺影が目に入る。一ヶ月前に家族で遊園地に行った時のものだ。

⏰:22/10/25 15:51 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#517 [○○&◆.x/9qDRof2]
写真の中の私は恥ずかしそうにしながらも笑顔を作っている。あぁ、もう。せめて使うならこの写真じゃなくて生徒手帳とかの写真を使って欲しかった。カメラに向けて笑うのが苦手な私は、小さい頃から写真が嫌いだった。自分の照れ臭そうに笑う写真を葬式に使うとは、恐らく父の考えだろう。

⏰:22/10/25 15:51 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#518 [○○&◆.x/9qDRof2]
目が覚めたら「葬式には無表情の写真を使ってくれ」と頼もうと決めた。ふとそんな考えを巡らせていた時、何気なく目をやった私の友達の列の中で、一人の人物に目が止まった。友達の列の最後尾にいる男。見覚えのあるなんてものじゃない。

名前は、西山 孝。

⏰:22/10/25 15:51 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#519 [○○&◆.x/9qDRof2]
同じクラスで私の大嫌いな男で、私のことが大嫌いな男だ。保育園から一緒の幼なじみではあるし、周りからは悪友と言われることもあった。だけど孝の悪ふざけは私からしたら嫌なものでしかない。昔から何かしら頻繁に茶々を入れ、しつこくからかってくる行為の数々には悪意を感じずにはいられなかった。

⏰:22/10/25 15:52 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#520 [○○&◆.x/9qDRof2]
基本無視をする私を見て仲の悪さを悟ってか、最近では悪友呼ばわりも減ってきた。とにかく大嫌いなのだ。それは向こうも認めていた。それなのに、今の孝の表情は何なのか。流石に泣いてはいないものの、すっかり気の抜けた顔をしている。

⏰:22/10/25 15:52 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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