よすが
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#566 [○○&◆.x/9qDRof2]
頬を真っ赤に染めて呆然とする私の手から、赤いランドセルが滑り落ちた。
今思えば初々しい反応が子供だったなと微笑ましく感じる。彼は今こそ違う高校に通っているが、街中で偶然逢った時に、あの無邪気な子供っぽさは変わっていなかったと笑った記憶がある。
:22/10/25 17:21
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#567 [○○&◆.x/9qDRof2]
結局その告白は私の恥ずかしさのために断ったのだが、次の日にはクラス中の噂になっていた。男子グループからは冷やかされ、女子からは質問攻めにされた。小学生では足の速さが好感度に繋がるのはよくある話で、中川君はモテる部類だったために女子からの質問には偽りなく答えた。
:22/10/25 17:21
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#568 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、小学生だった私には今のように男子グループからの冷やかしに堪える精神は持ち合わせておらず、泣きながら帰って母に学校に行きたくないと困らせたりもした。その時の男子グループの中に、一番仲が良かった孝がいたのだ。
:22/10/25 17:21
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#569 [○○&◆.x/9qDRof2]
それがきっかけだろうか。以来、孝は率先してグループのリーダーになり、事あるごとに私を冷やかした。初めは私もひどく裏切られた衝動に駆られて傷付いたが、孝を嫌いになっていくに連れて傷はみるみるうちに塞がっていった。
:22/10/25 17:22
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#570 [○○&◆.x/9qDRof2]
時間と比例して塞がる傷は、私の心も一緒に閉ざしてしまったのだろう。ひと月もしないうちに私と孝はお互い嫌いになっていた。そのまま時は流れ、気が付けば高校生になっていた。
時間が進んでも私と孝の関係は変わることはなく、時計はあの小学生時代で止まったまま卒業と入学を二回ずつ繰り返して今に至る。
:22/10/25 17:22
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#571 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうして私たちの関係は拗れてしまったのだろう。仲が良かった日々の時計はあの日に止まってしまい、新しい時計が刻み始めたのだろうか。なら、今度の新しい時計もいつか止まるのだろうか。次に動き出す時計にはどんな日々が待っているのだろう。
止まった時計が、もう一度動くことはあるのだろうか。
:22/10/25 17:23
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#572 [○○&◆.x/9qDRof2]
空を見上げる私は不意に込み上げてきた哀しさに胸を押さえ付けられた。
同時に、新しい時計はもう止まっているのだと気付いた。
そして、次の時計はないのだということも。
:22/10/25 17:23
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#573 [○○&◆.x/9qDRof2]
あまりに色々なことが頭に蘇りすぎて、忘れていた。私は、死んだのだ。
あの日の時計は止まったまま、私自身の時計は停止してしまったのだ。家に帰ろう…。私は曇り空を見上げた。
閉められた玄関をくぐると孤独感の波に苛まれた。
:22/10/25 17:23
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#574 [○○&◆.x/9qDRof2]
家には人の気配がなかった。その無人の静けさだけが私の孤独感を増していく。家を歩き回っていると、私はあることに気付いた。私の抜け殻がない。
安置されていた場所に敷かれていた布団も綺麗に片付けられていた。
「火葬場かな」
:22/10/25 17:24
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#575 [○○&◆.x/9qDRof2]
ぼうっと遺体があった場所を見つめる私の口から自然と出た答えに、何故か全身が脱力した。これからどうするかなど、見当も付かない。道標が欲しい。私は壁に寄り掛かると、体育座りで小さく縮こまった。…そういえば。
:22/10/25 17:24
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