よすが
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#596 [○○&◆.x/9qDRof2]
これは…、と父が眉をしかめた。私は不審に思い、父の凝視する携帯を覗き込んだ。

「良枝、確か孝君って男の子が千恵の友達にいたよな?」

そう言う父の横で驚く私。
着信履歴のディスプレイに映し出されていたのは、孝の名前だった。

「ええ、いますけど.......」

それが?と疑問を含ませた母の声。

「どうやら、その彼からだ」

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#597 [○○&◆.x/9qDRof2]
ちょうど料理を終えた母は炒飯を両手に抱えてリビングに姿を現した。皿をテーブルに並べ終わると母も父の横から携帯を覗く。

「孝君から?あら本当。珍しいわね。千恵の口から孝の名前を聞いたのは小学校以来だから、何だか久しぶりね」

エプロンで手を拭いながら懐かしそうに目を細める母に、父は小さく笑いを落とす。

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#598 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そういえば、そんな悪ガキもいたな。何だ良枝、ダメとか言いながら結局おまえも千恵の携帯を見てるじゃないか」

依然として笑いながら言う父に、母はむっとしながら眉を潜めた。

「私はいいんですよ。千恵とはとても仲が良かったですもの。そんなことより、ご飯出来ましたよ。早くテーブルについてください」

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#599 [○○&◆.x/9qDRof2]
はいはい、と苦笑しながら携帯電話をソファに置くと、父はテーブルに歩いて行った。わたしの脳裏に孝の姿が過ぎった。どうしたんだろう。私の葬式があった日から、孝のことばかりだ。柄にもなく昔のことを思い出すときも、孝とのことばかり。

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#600 [○○&◆.x/9qDRof2]
走馬灯にしては長すぎるし、内容が孝中心すぎる。私は自分に苛々してきた。死んだ時にひどく頭でも打ったのだろうか。人のことでこんな風に悩むなんてこれまでになかった。ましてや相手はあの孝ときた。

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#601 [○○&◆.x/9qDRof2]
生前は無視を決め込んでいたような孝に何故今頃?そもそも何に悩んでいるのかすら明確でない。何故か孝中心に物事を考え、ようやく忘れたと思ったらすぐに孝が頭に浮かぶ。この繰り返しだ。原因不明のもどかしさは私の苛々を募らせるばかりだった。どうにも気が治まらない私は、外に出た。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#602 [○○&◆.x/9qDRof2]
孝に直接会うためだ。会って原因を確かめる。聞くことは叶わなくても、糸口くらいはわかるかもしれないと考えたのだ。しかし、何故孝は電話をしてきたのだろうか。私の携帯電話に掛けても誰も出ないのはわかっているだろうに。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#603 [○○&◆.x/9qDRof2]
間違い電話?いや…間違いだったらあんなに長くコールしていないだろうし、さすがに間違いに気付くだろう。では何故?何の目的で?

「……駄目だ」

いくら考えても答えは出て来なかった。久しぶりの孝の家に緊張しているのだろうか。割と近所にあるため、家の位置は忘れていない。不思議な感覚だ。九年ぶりの孝の家。あの頃はよく遊びに行ったものだ。今では曖昧な古い記憶でしかない。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#604 [○○&◆.x/9qDRof2]
「わ、懐かしい…」

私は思わず立ち止まってしまう。白い壁に茶色の屋根。二階建ての西山家は孝と弟、そして両親の四人家族だ。緊張感が沸いて来るのがわかる。玄関をくぐれば記憶にある廊下や家具が迎えていた。お邪魔します、と土足のまま室内へ上がる。全然変わっていない。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#605 [○○&◆.x/9qDRof2]
九年ぶりの孝の家はあまり覚えておらず、玄関から二階の孝の部屋までだけが特に鮮明だった。二階に上がって見覚えのある部屋の前に立つ。懐かしさからか、家にお邪魔してから終始私の頬は緩んでいた。ノックも出来ない私は、するりと部屋に入った。

「…いないじゃん」

⏰:22/10/25 17:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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