カスミソウ。
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#8 [みや]
お花屋さんは車の通れない小さな橋の向こうにあるからね。
『よいしょ』
最近おばあさんの口癖が移ったみたい(苦笑
『おばあさんいるかな♪』
橋の真ん中で足を止める。
『…?』
誰かいる。
しかも若い。
『若い男の人なんて珍しいなぁ』
でもおばあさんの姿はない。
『…?畑かな?』
:08/05/05 08:32
:W53T
:☆☆☆
#9 [みや]
また足を動かしてお花屋さんに近付く。
そんな私に男の人は気付いた様でこっちを見た。
…うわっ…かっこいい…
なんて言うか…鳶とかやってそうで少し長い髪を後ろで束ねて…身長は180あると思う。
…小屋が小さく見えるもん。
「…あんた?かわさきなのかって」
ぶっきらぼうな言い方に少しカチンときた。
…ん?
『はい?あなた誰?』
:08/05/05 08:37
:W53T
:☆☆☆
#10 [みや]
ナゼワタシノナマエヲゴゾンジデ??
「ばあさんがあんた来るまで花片付けるなってうっせぇから」
『おばあさんが?何かあったの?』
そう言えば今日は畑にも姿がない。
「昨日倒れたから」
『…え?』
血の気が引いて行くのが分かった。
『…な…んで?』
男の人と上手く喋れないとか…この人の言い方がどーとか…そんなの今は考えなかった。
「歳のくせに働き過ぎだと。少し入院すれば戻ってくんじゃね?」
:08/05/05 08:46
:W53T
:☆☆☆
#11 [みや]
またぶっきらぼうに言い放つと花に水をやり始めた。
…よかった…
おばあさん平気なんだ…
『…あなた誰?』
「水島 巧次。ばあさんの孫」
『……………はい!?』
いやいやいや、冗談でしょ。
孫がいるとは聞いてたけど…
おばあさん…可愛いって言ってましたけど??????
ど・こ・が?
“可愛らしくてねぇ”
そりゃかっこいくないって言ったら嘘だけど…
“大人しくてねぇ”
それは単に無口だからじゃないですかね?
:08/05/05 08:49
:W53T
:☆☆☆
#12 [みや]
“優しくてねぇ”
…もう何も言うまい。
「何つったってんだよ。買うものあんだったらさっさとしろ」
カチンッ
『…結構です!!!!』
そう言って来た道を戻る。
なんだアイツ。
おばあさん絶対勘違いしてる。
全っ然可愛げないし、優しくない。
足音をドンドンとならしながら怒りを地面にぶつける。
ぐいっ
『ひゃっ…』
何かに腕を掴まれて引っ張られた。
:08/05/05 08:53
:W53T
:☆☆☆
#13 [みや]
『…何ですか?』
こっちもぶっきらぼうに言ってやる。
「…ん。」
彼の手からぶら下がってるモノを見上げる。
『え…』
「お前の好きな花。これだろ」
そう言って一束渡してきた。
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#14 [みや]
…新聞紙にくらい包んでよ。
『何で…?』
私…好きな花言ってないよ?
買うとも言ってないよ?
おばあさんに聞いたの?
「ばあさんがお前に似てる花をお前にやれっつったんだよ」
……………え?
「それがお前の好きな花だっつってたから」
『…この花…私に似てる…?』
本当に…?
「あ?知らねぇよ、なんとなくだ。似てるかなんて分かるわけねぇだろ」
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#15 [みや]
素直に嬉しかった。
適当に言ったのだとしても
ただ自分の近くにあったからだとしても
あなたに似てるって言われたから。
嬉しかった。
―…『ありがとう』
これがあなたが導いてくれた二つ目の出会い。
おばあさん
巧次君
…出会わせてくれてありがとう。
:08/05/05 09:04
:W53T
:☆☆☆
#16 [みや]
それを境に巧次君とは仲良くなった。
おばあさんが入院の間は私が来る土日はお花屋さんを朝早くから開けてくれている。
巧次君の仕事はやっぱり鳶。
朝から晩まで働いてるのに土曜の朝から欠かさず開けてくれてる。
おばあさん、やっぱりおばあさんは勘違いなんかじゃなかったよ。
少しぶっきらぼうで見た目は怖いけど、おばあさん想いで優しくて。
私が巧次君に惹かれるのに時間はかからなかった。
:08/05/05 09:19
:W53T
:☆☆☆
#17 [みや]
―――――――
巧次君と出会って一か月がたった。
『ね〜え〜。』
「あ?気持ちわりぃんだよ、ね〜え〜とか言うんじゃねぇ」
うざっ!
『うるさいよ。それよりおばあさんは具合どう?お見舞いはいつ行けるの?』
巧次君に病院の場所聞いても、大丈夫だからいいって言って教えてくれない。
すぐ退院できるからって言ってたのに、土日来ているのは一か月くらい巧次君。
:08/05/05 09:23
:W53T
:☆☆☆
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