カスミソウ。
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#1 [みや]
――――白くて
ふわふわして
小さくて
みんなと一緒じゃないと
ダメな様な
そんな守ってあげたくなるような
女の子に憧れてた―――
【カスミソウ】
:08/05/05 07:59
:W53T
:☆☆☆
#2 [みや]
家から車で15分の所にある本当に小さなお花屋さん。
可愛らしいおばあさんが店員さん。
って言っても小屋みたいな所に花をおいて、自分の畑の世話をしながらやってるから店員さんって言うか分からないけど。
ここにおいてある花達は、みんなキレイ。
おばあさんに愛情をたっぷりもらっているから。
優しい笑顔。
優しい声。
全部がお花の肥料になってるんだなっていつも思う。
:08/05/05 08:04
:W53T
:☆☆☆
#3 [みや]
そんな中にね、私が一番目を奪われた花(娘)がいるんだ。
――…カスミソウ。
高校の時。
辛い事が重なって
何も考えたくないと
迎えにくる母を待ちながら
近くを散歩していた私。
あなたを見て、一瞬で“憧れ”たんだよ。
あなたが私の目標。
これが私たちの出会い。
それから何度もあなたを見に行った。
高校を卒業しても
暇があれば、
あのお花屋さんに。
:08/05/05 08:10
:W53T
:☆☆☆
#4 [みや]
そして…あなたが導いてくれた
“おばあさん”との出会い。
“彼”との出会い。
“少女”との出会い。
そして…別れ。
あなたはたくさん教えてくれて与えてくれた。
やっぱりあなたは私の“憧れ”。
――…ねぇ?
少しはあなたに
近付いた…?
:08/05/05 08:13
:W53T
:☆☆☆
#5 [みや]
━━━━━━━━
『いってきまーす!』
玄関で叫び、一気に自分の車に飛び乗る。
…これでも、21才なんだけどね;
私は川崎 菜之華(カワサキ ナノカ)21才。
普通に工場で働いてる。
彼氏は一応いるけど、いないと一緒。
性格はよくバカとか元気って言われる。
そのくせ人見知りはするわ、男の人とは喋れないわで損な性格って言われる。
:08/05/05 08:19
:W53T
:☆☆☆
#6 [みや]
外見?
う〜…ん。
友達からは黙ってれば可愛いって言われる。
小さいからそう見えるだけなんだけど。
「…か!なのか!」
ん?
『なぁに?お母さん』
車のエンジンをつけたと同時に走り寄って来た母を窓を開け見上げる。
「花屋さん行くの?」
『…そうだけど』
よく御存じで。
「近くのスーパーで卵と牛乳買って来て」
そう言って千円くれた。
子供じゃないけどおつりがでるのは嬉しいと考える。
「お釣は返してね。社会人」
『…』
ちくしょうめ。
:08/05/05 08:24
:W53T
:☆☆☆
#7 [みや]
『…いってきます』
ちょっとだけテンションが低くなったけど、これから行く場所を考えるとテンションは上がる。
車を走らせる事、15分。
田舎独特の中道を入って少し山に入る。
狭くて運転しづらいけど慣れた。
お花屋さんから少しだけ離れた所の道のくぼみに車を止める。
:08/05/05 08:31
:W53T
:☆☆☆
#8 [みや]
お花屋さんは車の通れない小さな橋の向こうにあるからね。
『よいしょ』
最近おばあさんの口癖が移ったみたい(苦笑
『おばあさんいるかな♪』
橋の真ん中で足を止める。
『…?』
誰かいる。
しかも若い。
『若い男の人なんて珍しいなぁ』
でもおばあさんの姿はない。
『…?畑かな?』
:08/05/05 08:32
:W53T
:☆☆☆
#9 [みや]
また足を動かしてお花屋さんに近付く。
そんな私に男の人は気付いた様でこっちを見た。
…うわっ…かっこいい…
なんて言うか…鳶とかやってそうで少し長い髪を後ろで束ねて…身長は180あると思う。
…小屋が小さく見えるもん。
「…あんた?かわさきなのかって」
ぶっきらぼうな言い方に少しカチンときた。
…ん?
『はい?あなた誰?』
:08/05/05 08:37
:W53T
:☆☆☆
#10 [みや]
ナゼワタシノナマエヲゴゾンジデ??
「ばあさんがあんた来るまで花片付けるなってうっせぇから」
『おばあさんが?何かあったの?』
そう言えば今日は畑にも姿がない。
「昨日倒れたから」
『…え?』
血の気が引いて行くのが分かった。
『…な…んで?』
男の人と上手く喋れないとか…この人の言い方がどーとか…そんなの今は考えなかった。
「歳のくせに働き過ぎだと。少し入院すれば戻ってくんじゃね?」
:08/05/05 08:46
:W53T
:☆☆☆
#11 [みや]
またぶっきらぼうに言い放つと花に水をやり始めた。
…よかった…
おばあさん平気なんだ…
『…あなた誰?』
「水島 巧次。ばあさんの孫」
『……………はい!?』
いやいやいや、冗談でしょ。
孫がいるとは聞いてたけど…
おばあさん…可愛いって言ってましたけど??????
ど・こ・が?
“可愛らしくてねぇ”
そりゃかっこいくないって言ったら嘘だけど…
“大人しくてねぇ”
それは単に無口だからじゃないですかね?
:08/05/05 08:49
:W53T
:☆☆☆
#12 [みや]
“優しくてねぇ”
…もう何も言うまい。
「何つったってんだよ。買うものあんだったらさっさとしろ」
カチンッ
『…結構です!!!!』
そう言って来た道を戻る。
なんだアイツ。
おばあさん絶対勘違いしてる。
全っ然可愛げないし、優しくない。
足音をドンドンとならしながら怒りを地面にぶつける。
ぐいっ
『ひゃっ…』
何かに腕を掴まれて引っ張られた。
:08/05/05 08:53
:W53T
:☆☆☆
#13 [みや]
『…何ですか?』
こっちもぶっきらぼうに言ってやる。
「…ん。」
彼の手からぶら下がってるモノを見上げる。
『え…』
「お前の好きな花。これだろ」
そう言って一束渡してきた。
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#14 [みや]
…新聞紙にくらい包んでよ。
『何で…?』
私…好きな花言ってないよ?
買うとも言ってないよ?
おばあさんに聞いたの?
「ばあさんがお前に似てる花をお前にやれっつったんだよ」
……………え?
「それがお前の好きな花だっつってたから」
『…この花…私に似てる…?』
本当に…?
「あ?知らねぇよ、なんとなくだ。似てるかなんて分かるわけねぇだろ」
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#15 [みや]
素直に嬉しかった。
適当に言ったのだとしても
ただ自分の近くにあったからだとしても
あなたに似てるって言われたから。
嬉しかった。
―…『ありがとう』
これがあなたが導いてくれた二つ目の出会い。
おばあさん
巧次君
…出会わせてくれてありがとう。
:08/05/05 09:04
:W53T
:☆☆☆
#16 [みや]
それを境に巧次君とは仲良くなった。
おばあさんが入院の間は私が来る土日はお花屋さんを朝早くから開けてくれている。
巧次君の仕事はやっぱり鳶。
朝から晩まで働いてるのに土曜の朝から欠かさず開けてくれてる。
おばあさん、やっぱりおばあさんは勘違いなんかじゃなかったよ。
少しぶっきらぼうで見た目は怖いけど、おばあさん想いで優しくて。
私が巧次君に惹かれるのに時間はかからなかった。
:08/05/05 09:19
:W53T
:☆☆☆
#17 [みや]
―――――――
巧次君と出会って一か月がたった。
『ね〜え〜。』
「あ?気持ちわりぃんだよ、ね〜え〜とか言うんじゃねぇ」
うざっ!
『うるさいよ。それよりおばあさんは具合どう?お見舞いはいつ行けるの?』
巧次君に病院の場所聞いても、大丈夫だからいいって言って教えてくれない。
すぐ退院できるからって言ってたのに、土日来ているのは一か月くらい巧次君。
:08/05/05 09:23
:W53T
:☆☆☆
#18 [みや]
「…来週には戻ってくんだろ」
そう言って畑の草むしりに行ってしまった。
私はお花屋さんから畑の方を見つめた。
正確には巧次君を。
…来週…か…。
やっとおばあさんに会える。
そう思うと嬉しいはずなのに。
巧次君の態度が変で…
なんとなくモヤモヤがとれなかった。
:08/05/05 09:24
:W53T
:☆☆☆
#19 [みや]
――――――――
『じゃあね♪来週おばあさんに会えるの楽しみにしてる』
両手いっぱいにカスミソウを抱えて巧次君を見上げる。
ちゃんと新聞紙もついてる。
「あぁ」
そう言って少し笑う。
あ…最初の頃は全然見せなかった顔だ。
すごい…嬉しい。
『巧次君も…来てね?』
「あ?…ばあさん来るなら必要ねぇだろ」
『そうだけど…』
:08/05/05 09:28
:W53T
:☆☆☆
#20 [みや]
そう言って顔を下に向ける。
ちょっと傷付いた…
逢いたいと思ってたのはやっぱり私だけか…
くしゃっ
突然巧次君が私の頭を撫でた。
上を見上げると苦笑いの巧次君。
でも嫌そうな顔じゃない。
「来るよ。…お前に逢いに」
『…え?何?』
最後の方がうまく聞こえなかった。
「んでもねぇよ。さっさと帰れ。暗くなる」
少しだけ顔が赤くなってるのがわかった。
:08/05/05 09:31
:W53T
:☆☆☆
#21 [みや]
『…うん!』
来てくれるのは確かだし!
そう思ってカスミソウを抱えながら車にはしる。
後ろを一度振り返り
『ばいばい!』
と手を振ると、少し笑って手をふりかえしてくれた。
…―そんなあなたが
やっぱり
大好きです。
:08/05/05 09:34
:W53T
:☆☆☆
#22 [みや]
次の週―
巧次君が言っていた通りおばあさんが畑にいた。
『おばあさん!!』
私は嬉しくて走って畑まで言った。
おばあさんは私に気付くとすごく嬉しそうな顔をしてくれた。
ゆっくり桑を隅に降ろすとこちらに向かって来た。
「おーおー、久し振りだねぇ」
おばあさんの優しい笑顔が一か月ぶりに見れた。
『はい!大丈夫なんですか??』
:08/05/05 13:14
:W53T
:☆☆☆
#23 [みや]
嬉しくて飛び付きそうになったけど…やめたんだ。
笑顔は一か月前のまま。
なのに…おばあさんはすごく痩せた様に思えた。
動作も前より遅く、喋り方も少し遅くなっていた。
「あー…大丈夫だよ。少し心臓に負担がかかっていたみたいだから薬をもらってきたんだよ」
そう言って私の右手を握って
心配かけてごめんね
と、言った。
:08/05/05 13:16
:W53T
:☆☆☆
#24 [みや]
『ううん!元気そうでよかった』
そう言っておばあさんの手を握り返してあげた。
………―嘘。
本当は元気そうには見えなかった。
握ってくれた手も弱々しくて。
でもおばあさんの笑顔に私はすごく安心したんだ。
『でも、心臓は一番大切なんだからあんまり無理しちゃだめだよ』
ほらっとお花屋さんの所まで連れて行き、椅子に座らせた。
:08/05/05 13:20
:W53T
:☆☆☆
#25 [みや]
おばあさんの横で花達が静かに揺れた。
…カスミソウも。
みんな嬉しそうに揺れている。
やっぱりみんなにはおばあさんが必要なんだね。
自然に笑みがこぼれた。
「なのかちゃん、巧次には会ったのかい?」
あ…。そういえば今日見当たらないな?
『うん!逢ったよ♪おばあさんが言っていた通りの人でした』
そう言ってニコッとしてあげれば、おばあさんはそうだねぇと嬉しそうに頷いた。
:08/05/05 13:23
:W53T
:☆☆☆
#26 [みや]
『あ、カスミソウも頂きました♪お金は直接渡そうかと思って今日持ってきました』
バックの中をあさって、茶色の紙封筒を出す。
「なのかちゃん、あれは私からの御礼だからいいんだよ」
え?
『御礼…?』
「これからも毎週来ておくれ。カスミソウが咲く季節は毎週。そうしたら帰りにカスミソウをあげるからね」
『本当ですか!?』
…でも、嬉しいけど…何で?
:08/05/05 13:27
:W53T
:☆☆☆
#27 [みや]
「花もなのかちゃんにもらってもらえたら、最高だよ」
今までで一番キレイで…悲しい笑顔だった。
しばらくその笑顔を見つめていると誰かに頭を殴られた。
『いった!』
「何ぼけっとしてんだよ、さっさと畑耕せ」
後ろを振り向いたら
いつの間にかいた
巧次君。
『叩かなくても呼んでくれれば分かるよ!』
「るせぇ。お前の頭が叩きやすい所にあったんだよ」
そう言うとふんっと畑の方に行ってしまった。
:08/05/05 16:45
:W53T
:☆☆☆
#28 [みや]
「ごめんね、なのかちゃん。いつもはあんなじゃないんだけどねぇ」
おばあさんは難しそうな顔をしながら私の頭を撫でてくれた。
いや、おばあさん?
巧次君は、いつもあんなですけど?
苦笑いしながらおばあさんに御礼をいって、肥料を担いだ。
『おばあさん、まだ退院したばっかなんだからそこでお花と待っててね』
悪いねぇと呟いたおばあさんに笑い掛け、巧次君の所に走って行った。
:08/05/05 16:54
:W53T
:☆☆☆
#29 [みや]
「おせぇよ」
私を睨みつけてくる巧次君。
そんな顔もかっこいいと思ってしまう私は相当なバカ女だと思う。
『うるさいなぁ…』
カスミソウの元に向かうと花達の向こう側に一人の女の子が立っていた。
年齢は、多分私と一緒くらい。
服装は可愛らしいとゆーか…今の子達が着ないような白いワンピース。
…………可愛い。
まるで。
カスミソウの中でも一際目立つ―…
“カスミソウ”
彼女は一瞬で私の第2の“憧れ”になった。
:08/05/05 17:09
:W53T
:☆☆☆
#30 [みや]
「おい、なの…」
巧次君も彼女に気付いたらしく、私を呼ぶ声が止まった。
私は振り返らなかったが巧次君がいつの間にか隣りにきていた。
「こんにちわ」
彼女は言った。
すごく綺麗で
それでいて優しくて
可愛くて
透き通った声だった。
彼女の名前は、“倉本 亜夏葉(クラモト アゲハ)”
これがあなが導いてくれた三つ目の出会い。
おばあさん
巧次君
あげはちゃん
…出会わせてくれてありがとう。
:08/05/06 09:04
:W53T
:☆☆☆
#31 [みや]
━━━━━━━
あげはちゃんは、22歳で少し天然の入ってる優しい子。
すぐ仲良くなって、女の子同士でお花屋さんの机でお洒落の話や、おばあさんとお茶タイムしたり恋バナしたり…
いろいろした。
ガンッ
『った!!』
「てめぇはさっさと畑戻ってこい」
おばあさんが「これこれ」と少し慌てている。
いつもの事だし、上から睨まれて怖いが怯むわけにはいかない(笑)
だって…………
:08/05/06 09:30
:W53T
:☆☆☆
#32 [みや]
『何でいっつも私ばっかなのよ!』
別にあげはちゃんに畑仕事をしてほしいと思っているわけじゃない。
むしろ私が勝手におばあさんの役に立ちたくてしている事だ。
でも…巧次君はなんか…あげはちゃんばっかりかばっている感じがする。
この間だって私が橋の所でコケてたのみて笑ってたくせに、あげはちゃんが転んだら「大丈夫か?」だって。
本当にムカつく。
それ考えてたら少し涙が出そうになったが、
涙目でも睨んでやった。
:08/05/06 09:33
:W53T
:☆☆☆
#33 [みや]
「ッ…」
少し慌てているが、相変わらず怖い顔で私を見てる。
『…』
でも…よく考えたらただの私のヤキモチだし…
『ごめん…』
「は…」
おばあさんとあげはちゃんに行ってくるねと告げて走って行った。
二人供慌ててたけど、振り返れなかった。
:08/05/06 09:36
:W53T
:☆☆☆
#34 [みや]
―巧次side―
なんなんだよ、あいつ。
今まで普通だった事をやっても、いきなり怒りだしたり。
わけわかんねぇんだよ。
うぜぇ、イライラする。
畑に走って行ったアイツを目でおっているとあげはが睨みながら言った。
「巧次君…なのか泣かしたら怒るから」
ばあさんの前でも躊躇なく言えるこいつはすごいヤツだと思う。
普段考えられない睨みだし。
俺は何も言わずに畑に歩いて行った。
:08/05/06 09:42
:W53T
:☆☆☆
#35 [みや]
:08/05/06 09:48
:W53T
:☆☆☆
#36 [みや]
*━更新━*
それから私と巧次君は何もなかったかの様に過ごした。
何回目かの土曜の午後
畑の草むしりを終えて、あげはちゃんとおばあさんの元に戻りオレンジジュースをコップにもらった。
「なのか、おつかれさま♪」
笑顔で迎えてくれるあげはちゃん、そして悪いねぇ、大変だろうと心配そうに駆け寄ってくるおばあさん
『ありがとう。大丈夫だよ、おばあさん』
笑顔で答えてあげればおばあさんはお菓子を持ってきて食べてねと言ってきた。それを一つもらうと同時に私の携帯が鳴った。
♪〜♪〜
『…』
…優哉だ。
優哉ってゆーのは…一応私の彼氏。
:08/05/13 20:42
:W53T
:☆☆☆
#37 [みや]
一応って言うのは、好きじゃないから。
好きじゃないと言うか…愛していない?
好きじゃないと言えば嘘になるかもしれない。
優しくてとても思いやりのある人。
だけど…無理なんだ。
信じる事。
この人を愛する事。
いつまでも待ってるって優しい言葉に甘えてしまっている。
ごめんなさい。
だからあまり連絡をとらないようにしている。
――――
「…?なのか?電話?」
:08/05/13 20:47
:W53T
:☆☆☆
#38 [・]
がんばってテ
:08/05/13 20:55
:W52CA
:☆☆☆
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