カスミソウ。
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#11 [みや]
またぶっきらぼうに言い放つと花に水をやり始めた。
…よかった…
おばあさん平気なんだ…
『…あなた誰?』
「水島 巧次。ばあさんの孫」
『……………はい!?』
いやいやいや、冗談でしょ。
孫がいるとは聞いてたけど…
おばあさん…可愛いって言ってましたけど??????
ど・こ・が?
“可愛らしくてねぇ”
そりゃかっこいくないって言ったら嘘だけど…
“大人しくてねぇ”
それは単に無口だからじゃないですかね?
:08/05/05 08:49
:W53T
:☆☆☆
#12 [みや]
“優しくてねぇ”
…もう何も言うまい。
「何つったってんだよ。買うものあんだったらさっさとしろ」
カチンッ
『…結構です!!!!』
そう言って来た道を戻る。
なんだアイツ。
おばあさん絶対勘違いしてる。
全っ然可愛げないし、優しくない。
足音をドンドンとならしながら怒りを地面にぶつける。
ぐいっ
『ひゃっ…』
何かに腕を掴まれて引っ張られた。
:08/05/05 08:53
:W53T
:☆☆☆
#13 [みや]
『…何ですか?』
こっちもぶっきらぼうに言ってやる。
「…ん。」
彼の手からぶら下がってるモノを見上げる。
『え…』
「お前の好きな花。これだろ」
そう言って一束渡してきた。
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#14 [みや]
…新聞紙にくらい包んでよ。
『何で…?』
私…好きな花言ってないよ?
買うとも言ってないよ?
おばあさんに聞いたの?
「ばあさんがお前に似てる花をお前にやれっつったんだよ」
……………え?
「それがお前の好きな花だっつってたから」
『…この花…私に似てる…?』
本当に…?
「あ?知らねぇよ、なんとなくだ。似てるかなんて分かるわけねぇだろ」
:08/05/05 09:01
:W53T
:☆☆☆
#15 [みや]
素直に嬉しかった。
適当に言ったのだとしても
ただ自分の近くにあったからだとしても
あなたに似てるって言われたから。
嬉しかった。
―…『ありがとう』
これがあなたが導いてくれた二つ目の出会い。
おばあさん
巧次君
…出会わせてくれてありがとう。
:08/05/05 09:04
:W53T
:☆☆☆
#16 [みや]
それを境に巧次君とは仲良くなった。
おばあさんが入院の間は私が来る土日はお花屋さんを朝早くから開けてくれている。
巧次君の仕事はやっぱり鳶。
朝から晩まで働いてるのに土曜の朝から欠かさず開けてくれてる。
おばあさん、やっぱりおばあさんは勘違いなんかじゃなかったよ。
少しぶっきらぼうで見た目は怖いけど、おばあさん想いで優しくて。
私が巧次君に惹かれるのに時間はかからなかった。
:08/05/05 09:19
:W53T
:☆☆☆
#17 [みや]
―――――――
巧次君と出会って一か月がたった。
『ね〜え〜。』
「あ?気持ちわりぃんだよ、ね〜え〜とか言うんじゃねぇ」
うざっ!
『うるさいよ。それよりおばあさんは具合どう?お見舞いはいつ行けるの?』
巧次君に病院の場所聞いても、大丈夫だからいいって言って教えてくれない。
すぐ退院できるからって言ってたのに、土日来ているのは一か月くらい巧次君。
:08/05/05 09:23
:W53T
:☆☆☆
#18 [みや]
「…来週には戻ってくんだろ」
そう言って畑の草むしりに行ってしまった。
私はお花屋さんから畑の方を見つめた。
正確には巧次君を。
…来週…か…。
やっとおばあさんに会える。
そう思うと嬉しいはずなのに。
巧次君の態度が変で…
なんとなくモヤモヤがとれなかった。
:08/05/05 09:24
:W53T
:☆☆☆
#19 [みや]
――――――――
『じゃあね♪来週おばあさんに会えるの楽しみにしてる』
両手いっぱいにカスミソウを抱えて巧次君を見上げる。
ちゃんと新聞紙もついてる。
「あぁ」
そう言って少し笑う。
あ…最初の頃は全然見せなかった顔だ。
すごい…嬉しい。
『巧次君も…来てね?』
「あ?…ばあさん来るなら必要ねぇだろ」
『そうだけど…』
:08/05/05 09:28
:W53T
:☆☆☆
#20 [みや]
そう言って顔を下に向ける。
ちょっと傷付いた…
逢いたいと思ってたのはやっぱり私だけか…
くしゃっ
突然巧次君が私の頭を撫でた。
上を見上げると苦笑いの巧次君。
でも嫌そうな顔じゃない。
「来るよ。…お前に逢いに」
『…え?何?』
最後の方がうまく聞こえなかった。
「んでもねぇよ。さっさと帰れ。暗くなる」
少しだけ顔が赤くなってるのがわかった。
:08/05/05 09:31
:W53T
:☆☆☆
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