・・悪魔なキミ・・
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#648 [みい]
だが、ここで引き下がるわけにもいかない。
いくら憎まれていようと、こいつにあの日の真実を伝えることが、俺の役目なんだと思うから。
「…何とでも言え。俺を嫌うのも構わない。…ただ、これだけは聞いてほしい」
俺の言葉に、淕は迷うように少し瞳を揺らした後、俺の襟元を放し、力無く椅子に腰を下ろした。
:08/08/26 00:32
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#649 [みい]
すーっ、と息を大きく吸い込みゆっくりと口を開き、一気に言う。
「親父はお前を捨てたわけじゃない」
これがあの日、俺達双子が離れ離れになった日の、真実。
俯いた淕の肩が、びくんと動く。
淕の様子を確認したあと、俺は話を続けた。
:08/08/26 00:33
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#650 [みい]
「あの日の夜、親父は俺に言った。『もうお母さんとは一緒に住めないんだ』。俺はガキながらにあのババアが狂ってたのは分かってたし、親父の苦労もなんとなく感じてた」
あの時の親父の悲しそうな顔や、泣きそうな声は、今でも鮮明に思い出せる。
「親父は俺達を連れて出ていくつもりだった。でも、淕。お前はあの時、寝ていたんだ」
淕が訝しげな顔を俺に向けた。
:08/08/26 00:33
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#651 [みい]
寝ていたから何なんだ、とでも言いたげだ。
「あのババアは、寝ているお前を離さなかった。気違いみたいに物を破壊し、俺や親父に投げ付けてさ」
あの女も、本能的に悟ったのだろう。俺達が自分から離れていく、自分が一人にされてしまう、ということを。
だから、せめて淕だけでも自分の傍に置いておきたい。そう思ったのだろう。
:08/08/26 00:34
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#652 [みい]
しかし、そこに親としての愛情があったかというと、甚だ疑わしいが。
「身の危険を感じた親父は、一旦俺を新しい家まで連れていき、自分は急いで家に戻ったんだ。お前を迎えにな」
『お前はここで待ってろ、すぐに淕と戻ってくるから。』親父は俺の肩を掴んで、確かにそう言った。
「でも…親父は一人で俺のとこに戻ってきた」
:08/08/26 00:35
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#653 [みい]
「親父と俺が家を離れたわずかな隙に、あの女はお前を連れて行方をくらませたんだ」
あの時親父は涙を流しながら、俺にそう説明した。
「俺達は、お前の居場所を捜し続けた。でも、親父の転勤が決まって…」
淕は、俯いたまま静かに俺の話を聞いている。涙をこらえているのか、はたまた怒りに震えているのかはわからないが、小刻みに肩が揺れている。
:08/08/26 00:36
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#654 [みい]
「悪かった。俺達は結局、お前のことを諦めた」
淕がいきなり立ち上がり、再び俺の胸倉を掴む。目は赤く充血していた。
「…殴れよ。気が済むまで、俺を殴れ」
俺は淕の顔を見据えた。俺と、全く同じ顔を。
「……そんなんで、済むかよ」
:08/08/26 00:37
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#655 [みい]
淕の震える小さな声が、病室中に響く。
「…淕?」
俺が淕の肩に触れると、淕の目から、ぽろっと涙が一粒落ちた。
「俺はっ…!兄さんが嫌いだ!」
「…ああ」
淕が俺から離れ、泣きながら怒鳴る。顔を真っ赤にして。
:08/08/26 00:37
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#656 [みい]
「昔から何でも出来て、いつも落ち着き払ってすかしたような顔しやがって…」
「……」
淕の握りしめた拳が震え、しばしの沈黙のあと。
「……羨ましかった」
拳と同様に震えた淕の声が、ぽつりと宙をさ迷った。
「俺の欲しいもの全部、兄さんが持ってた。父さんの愛情も、親戚からの称賛も…全部」
:08/08/26 00:38
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#657 [みい]
「兄さんを見てると、俺は駄目なんだ。双子のうち、出来の悪いほうなんだ、っていつも思い知らされて…」
そこまで言うと、淕は嗚咽して言葉を詰まらせる。
「…淕、それは違う。俺だってお前を羨んでいた」
俺の言葉に、淕がえ、と掠れた声を漏らす。
:08/08/26 00:39
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