ギンリョウソウ
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#194 [向日葵]
そして椿は要を追った。
要は門までまっすぐ続く道を歩いている。
「か、要さま……っ!」
どうして追ってるか分からない。
ただ足が進むままに、椿は要の元まで走る。
「要さま……っ!」
さっきより少し大きな声で要を呼ぶと、要は足を止めてこちらを見た。
「……何……?」
少し冷たい要の言葉が、椿の胸に突き刺さる。
切なげに彼を見れば、彼も椿を見る目が切なく変化した。
:08/08/10 00:46
:SO906i
:☆☆☆
#195 [向日葵]
「私……私……」
「……椿は、さっきの人が好き?」
「え……?ち、違っ……!」
すると要がふわりと椿を抱き締める。
空気を抱くように抱き締められてると、その力は段々と強くなり、細い椿の体は少し痛みを感じた。
けれど椿は戸惑う事なく、要を受け入れていた。
「例えそうでも、争う事をやめろなんて言わないで。僕は戦う。そして完璧に君を僕のものにする」
「要……さま……」
:08/08/10 00:51
:SO906i
:☆☆☆
#196 [向日葵]
要は椿を放すと、近くで見つめる。
椿は胸が高鳴る。
「僕は…………。なんでもない……。とにかく僕は勝つつもりだから」
椿はどちらを応援するなんて考えていない。
ただ少し、ほんの少し、揺れ動いている自分の心が、聖史を好きになったらどうしようと思っている。
……でも、その方がいいのかもしれないとも思っている。
―――――ユイコ……。
切なげな声で、呼ばれたその名……。
まだ頭から離れない……。
:08/08/10 00:55
:SO906i
:☆☆☆
#197 [向日葵]
「……じゃあ、また明日……」
椿はゆっくりと頷く。
しかしそう言いながらも、要は動こうとしない。
どうしてだろうと要を見つめれば、要もじっと椿を見つめていた。
そしてゆっくりとこちらに身を乗り出し、椿の頬に唇を寄せた。
そうして踵をかえして、要はまた歩き出した。
椿はその後ろ姿を見つめながら、さっき唇が触れた場所にそっと触れる。
好きになっても、仕方ないのに…………。
:08/08/10 00:59
:SO906i
:☆☆☆
#198 [向日葵]
[第5話]
「おはよう椿」
朝食にと、部屋へ来た椿に、聖史は笑いかけた。
一方椿は、そこに聖史がいると知らなかったので、出かけた欠伸を止めた。
「お、おはようございま……。聖史さま、如何なさったんですか?」
「今日は僕が君を学校まで送ろうと思って」
昨日から椿を争う戦いは始まっているのだ。
どうやら聖史は先制攻撃を仕掛けてきたらしい。
しかし、椿の頭は要の事で一杯だった。
それはきっと、遠慮がちに触れた彼の唇のせいだろう。
:08/08/10 01:05
:SO906i
:☆☆☆
#199 [向日葵]
「椿、早く座りなよ」
「あ、ハイ……」
席に座り、椿は聖史と一緒に朝食を取り始めた。
―――――――――…………
「椿っ!聖史兄ちゃん帰って来たって!?」
学校に着くと、美嘉が椿に言った。
「ハイ、昨日から……」
「ひっさしぶりじゃぁん!美嘉も会いたい!!今日会いに行っちゃダメ!?」
「いいえ、いいですよ」
「聖史さんって?」
聖史を知らない越はまったく話についていけない。
:08/08/10 01:09
:SO906i
:☆☆☆
#200 [向日葵]
なので美嘉が越の方を向いて説明しだす。
「椿のお兄ちゃんみたいなので、財閥の跡取りなんだけど、めちゃくちゃ優しくていい人なんだ!美嘉にも優しくしてくれて、まさに理想の旦那さまって感じ!」
“旦那さま”というワードに、椿は密かにビクリとしていた。
今日も要はきっと来るだろう。
昨日の、あの要の悲しそうな顔……。
あんな顔にさせたのは自分だ。
……けれど、椿にはあの「ユイコ」という呟きがどうしても気になり、要に悪い事をしたと思う一方、要を責めている自分がどこかにいた。
「そういえば椿、アイツこの頃大人しく感じるけど、何もされてない!?」
:08/08/10 01:15
:SO906i
:☆☆☆
#201 [向日葵]
そう言われて、ポンと昨日頬にキスされたのを思い出した椿は、ほのかに顔を桃色に変えた。
それにショックを受けた美嘉は、逆に青い顔をした。
「ア、アイツ……っ!美嘉の椿にぃぃぃっ!!」
「ち、違います……っ!えと、そんな、美嘉ちゃんが思ってるような事は……っ」
「じゃあ、どうしたの?」
今度は越が訊いてきた。
椿は昨日触れられた場所に指先を触れながら、更に顔を赤くさせた。
「ほ……頬に……キ、キ、キスをされまして……」
:08/08/10 01:20
:SO906i
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#202 [向日葵]
「越……美嘉保健室行って来る……」
「え?なんで」
「消毒液……」
「何考えてんの美嘉……」
とりあえず美嘉を止める越を見つつ、椿は帰ってからの事を考えていた。
一触即発なあの2人だ。
椿はどちらかと言えば要の機嫌が損なわないかが不安だった。
聖史はどこか冷静な部分があるが、要は血がのぼってしまえば殴りそうな気がするからだ。
でも……。
殴るほど、自分の事で怒るだろうか?とも椿は思った。
:08/08/12 00:11
:SO906i
:☆☆☆
#203 [向日葵]
――――――……
椿宅に来た要は、学校から帰って来たら横から婚約者を立候補するという非常識な奴と認識している聖史よりも早く椿を迎えようと思っていた。
―――が。
来てそうそう見たのは、その非常識な奴だった。
「やぁ要くん。こんなに早く来ても椿はいないよ」
言外で「ばーか」とでも言われてる気がした要は不機嫌に目を半目にする。
そして椿の部屋へ足を進める。
「待ってよ。少し話をしない?君が椿をどう思っているかちゃんと知りたい」
:08/08/12 00:17
:SO906i
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