ギンリョウソウ
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#227 [向日葵]
だから余計に涙が出てくる。

要さま……っ。

椿は心の中で、強く要を呼んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「傷の手当てはしなくていいのかい?」

帰ろうとしていた要を、聖史が呼び止める。

「君程、柔じゃないんだ。こんな傷、水で洗い流せばすぐに治る」

「ガラスは厄介だよ。ちゃんと医者に見てもらった方がいい」

聖史はにこにこ笑う。
何故彼がここまで上機嫌か、要は薄々気づいていた。

⏰:08/08/15 01:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#228 [向日葵]
「予定通り、事が進んで満足そうだね」

「そうでもないよ。君に理性が少しでもあった事が惜しい。あのまま椿を襲い、それを美嘉が見ていたら更に良かったのに」

「……君は、本当に椿が好きなのか……?好きな女の子に、そんな事されるよう仕向けるなんて、神経疑うね」

傷さえなければ、聖史をしたたか殴ってやりたいとさえ思う。
柔じゃないと言ったが、先程からズキズキ痛むし、熱も持ってきた。

「要くんが言ったんだよ?フェアで戦わないと。傷ついた椿を僕が慰めれば椿の心は僕に傾く」

それでもかんなやり方は許せない。
そして聖史の作戦にまんまとひっかかってしまった自分がもっと許せない。

⏰:08/08/15 01:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#229 [向日葵]
>>228

誤]かんな
正]こんな

⏰:08/08/15 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#230 [向日葵]
要は唇をかむ。

椿を傷つけるよう仕向けた聖史はムカつく。
でも実際傷つけてしまったのは要なのだ。
人の事、どうこう言える立場じゃない。

「帰る前に傷の手当てしようか?」

「結構だ」

靴を高らかに鳴らしながら、足早に要は椿宅を出ていった。

その背中を見送りって、しばらくすると、美嘉がこちらへ歩いてきた。

「あれ?美嘉も帰るのかい?」

「“も”って事は、アイツ本当に帰ったんだ……」

⏰:08/08/15 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#231 [向日葵]
怒っているが、どこか複雑な表情の美嘉を聖史が覗き込む。

「どうしたの?」

「椿が無理をしてものを言うのを聖史兄ちゃんは知ってるよね」

聖史は頷く。

昔から手がかからない、聞き分けのいい子だったと思い出す。

「椿がね、ずっと繰り返すの。要さまは悪くない、要さまを責めないで下さいって、泣きながら……」

長い付き合いの美嘉は分かる。
それは、偽って庇う言葉ではなくて、心から叫んでいるものだった。

だから、要に対する怒りが、半分減ってしまった美嘉は、複雑だった。

⏰:08/08/15 01:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#232 [向日葵]
悪いのは要なのに、責めるなと椿が、あの椿がそれも心から言ってしまっては、怒るにも怒れないではないか……。

「美嘉は、アイツの最低最悪な部分しか見た事ないからさ、まだ許す事は出来ないし、応援も出来ない。でも、美嘉が知らないアイツを椿が見てるなら、もしかしたら椿の為に色々してくれたんじゃないかと思うと、少し、許せる気もする……」

「あっ!」と思い出したように声を上げて、聖史に向き直る。

「でもでも、美嘉は聖史兄ちゃん派だからっ!聖史兄ちゃんファイトだよっ!」

拳を作り、エールを送る美嘉に笑いかけ、聖史は頭を撫でた。

⏰:08/08/15 01:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#233 [向日葵]
「ありがとう。美嘉の期待に答えれるよう、僕も頑張るよ」

美嘉は満面の笑みを浮かべ、帰って行こうとして、また聖史の方へ振り返る。

「そうだ。あのね、椿今1人になりたいみたいだから、そっとしといてあげてね」

「うん。分かったよ」

そして美嘉はまた歩き出して、帰って行った。

「さてと……」

そう行って聖史は歩き出した。

向かったのは、椿の部屋だ。

ドアの前に立ち、そっとドアに触れる。

⏰:08/08/15 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#234 [向日葵]
「椿……」

優しく名を呼ぶ。
返事はない。

もう1度呼ぶも、また返事はなかった。

しばらく考えて、ドアノブに触れる。
開けようとした時、椿のか細い声が聞こえた。

「開けないで下さい……」

「……どうして?椿」

「今は……少し、1人になりたくて……」

しかし聖史はドアを開ける。
ベッドで膝を抱くようにしながらうつむいている椿の元まで行って、抱き締める。

⏰:08/08/15 01:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#235 [向日葵]
「椿は……何も悪くない……」

椿は何も言わなかった。
それでも聖史は黙って抱き締め、あやすように頭を撫でた。

しばらくそうしていると、椿がやんわりとだが、聖史の腕を拒否した。
うつむいている彼女の表情は、やっばり分からない。

しかし聖史は、本当に今は1人になりたいんだと悟ると、最後に椿の頭をひと撫でし、部屋を出て行った。

椿の不安はただ1つ。

要がもう姿を現さないのではないかと言う事だった。

[その方が……椿は幸せかもね]

⏰:08/08/15 01:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#236 [向日葵]
もう、自分は用なしだと言っているような言葉。

勝つと言ったのに……諦めてしまったのではないだろうか。

それが嫌だと思ってしまうのはどうしてだろう。

心が無くてもいい。
どうでもいいと言いながら、椿を助けて、叱ってくれる要がいてくれるなら、それだけでいい。
誰も癒す事が出来ない寂しさを、癒してくれた要にいてほしい。

それは、甘えなのだろうか……。

「要さま……っ」

お願いだから諦めないでと、椿は願う。

あの嵐の日、ここで見た空より、今日の空は暗くて、寂しげだった。

⏰:08/08/15 02:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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