ギンリョウソウ
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#550 [向日葵]
それが珍しい。
大抵は、そんな扱いしてもらえない。
だからか、不思議な気持ちになってしまう。
名前、なんだっけ……。
未だに思い出せない。
彼は自分を名前で呼んでくれるのに。
「あなたは、そんな相手がいた事がありますか?」
何気なく訊いてみる。
深い意味はない……つもりだと、美嘉は自分でもわからなくなっていた。
大久保は人差し指を唇にあてる。
「内緒です」
:08/11/26 23:29
:SO906i
:☆☆☆
#551 [向日葵]
優しい筈なのに、どこか意地悪な雰囲気を漂わすから思わずドキリとしてしまう。
そんな事を思っていると、ガサガサと木の葉を踏む音が聞こえた。
「あれ?美嘉と大久保じゃないか」
現れたのは、仲良く手を繋いで散歩していた要と椿だった。要はしばらく二人と少し下の場所を交互に見て、ニヤリと微笑む。
「もしかして、邪魔だった?」
なんの事か分からない当の二人は顔を見合わせてからまた要に目を向け、首を傾ける。
要の言った事が分かった椿は目を輝かせながら二人を見つめていた。
:08/12/11 00:34
:SO906i
:☆☆☆
#552 [向日葵]
分からない二人に、要はまた口を開く。
「さっきから、ずいぶん親しげに手を繋いでるじゃないか」
二人はノロノロと自分の手を見る。
美嘉の手は優しく大久保に包まれているし、大久保の手は大きな手で美嘉の手を柔らかく握っている。
さっき要が見ていたのは、二人の手らしかった。
二人同時にパッと手を引っ込める。
「すいませんっ。私とした事が……とんだご無礼を……」
「あ、あなたは何も悪くは……。美嘉が、弱音吐いたからであって……」
:08/12/11 00:39
:SO906i
:☆☆☆
#553 [向日葵]
ほのぼのと二人の間に温かい空気が流れる。
美嘉は顔が熱いのか、手を団扇がわりに軽く振っている。
そんな美嘉を見るのが初めてな椿は、静かに微笑む。
「皆様お揃いになりましたし、お茶にでもいたしましょうか」
大久保はいつも通りに戻っている。
要は大久保に何か話ながら椿たちの少し前を歩く。
その後ろからは椿と美嘉が並んで歩く。
「楽しかったですか?大久保さんとのお散歩は」
微笑みながら訊いてくる椿に口を尖らせてみせて美嘉は「あっ」と声を小さくてあげて気づく。
:08/12/11 00:45
:SO906i
:☆☆☆
#554 [向日葵]
×小さくて
○小さく
:08/12/21 23:48
:SO906i
:☆☆☆
#555 [向日葵]
「そっか、あの人大久保さんって言うのか」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
「いや、聞いてたけど忘れてた」
口の中で、何度も繰り返し、ふと前にいる今覚えたての従者を見る。
要と何やら話してはいるが、内容は聞こえない。
「あの人は、何でも受け止めてくれるから、容赦なく甘えちゃいそうで怖いね」
大久保を見つめながら呟く。
そんな美嘉に、椿は静かに微笑む。
「それでも、美嘉ちゃんが甘えたかったら、甘えるのもいいかと思いますよ」
:08/12/21 23:52
:SO906i
:☆☆☆
#556 [向日葵]
美嘉は椿をまた睨むように見る。
椿はそんな視線を送られるとは思ってなかったので目をパチパチさせて、きょとんとする。
「なによ……なによなによなによ!ちょっと経験積んだからって上から目線でぇーっ!」
「えっ!?いえ、あの、そんなつもりは……っ!」
別に今、自分の中にくすぶる気持ちをどうこうするとは美嘉は思っていない。
その気持ちも、まだはっきりとどういうものかは分からない。
ただ、弱音も何もかも包んで、女の子扱いをしてくれる大久保に、少しだけ近づいて、もう少しだけ彼について知りたい、そう思っただけだ。
:08/12/21 23:57
:SO906i
:☆☆☆
#557 [向日葵]
美嘉の気持ちが発展していくのは、まだ先の話のようだ……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「美嘉が気に入ったの?」
少し前を歩く要と大久保は、後ろに歩く椿と美嘉の会話は聞こえないが、さっきから美嘉が騒いでいるのに気がつきながら話している。
要の質問に、大久保は少し首を傾げる。
「何故です?」
「仕事至上主義のお前が、のんびり手を繋いで散歩だなんて珍しいじゃないか」
「折角のお誘いを拒否する訳にはいかないと思ったからですよ」
:08/12/22 00:03
:SO906i
:☆☆☆
#558 [向日葵]
そう言いながらも、ふと握った彼女の手を思い出す。
握ってあげなければ、駄目だと何故か思った。
女の子だという自覚があまりない彼女は、ちゃんと女の子で、友人思いで。
だからこそ、自分を犠牲にする事すら惜しまない気がした。
潰れてしまう前に、助けなければと。
大久保もまた胸の中の気持ちが未だ理解出来ないでいる。
どうやらこの二人の話は、延長してしまうらしい。
:08/12/22 00:09
:SO906i
:☆☆☆
#559 [向日葵]
[第13話]
要がデザイナーが集まるという催し物に旅立ってから一週間が経つ。
連絡は時折とってるし、声が聞ければ嬉しいが、やっぱりそばにいなければ寂しさは埋めれないのだと椿はため息をつく日々をおくっている。
そんな中、珍しい人が訪ねに来た。
「こんにちわ、椿さま」
「唯子さま……!」
唯子は要の妹だ。
心臓を患っている彼女は、長い間海外にて治療を受け、今はほぼ回復しているので帰国している。
前と変わらぬ柔らかな笑顔は、要とはあまり似てないような気がする。
:08/12/22 00:14
:SO906i
:☆☆☆
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