ギンリョウソウ
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#682 [向日葵]
母は、父との約束を守れなかった。
命にかえてもだなんて、冗談だっただろう。
誰よりも、父に笑顔になって欲しいと願っていただろう。
だからこそ、椿に願いをたくしたのかもしれない。
母は、椿を産んで亡くなった。
要はだからこそ、椿を心配した。
それが分かるから、椿は言いたかった。
私は母ではない。
私だ、と。
運命は、必ずしも同じじゃないから。
だから私は、必ず要の元へ戻ってくる。
椿はそう言いたかったのだ。
:09/03/29 04:08
:SO906i
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#683 [向日葵]
その意味を感じとったのか、要は全身の力を抜く。
かと思えば、涙がぽたりと一粒落ちる。
椿の言葉で、不安の鎖が取れたのだろう。
要だって、椿と同じくらい、いや、それ以上に悩んだ。
それは、椿も、椿の中に宿る命も、大切が故に。
要は椿とおでこを合わせて微笑む。
「うん。必ず、笑顔になる。それで、この子が誇れるような父親になるよ」
その言葉に、椿も涙を流した。
「……はい」
:09/03/29 04:12
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#684 [向日葵]
:09/03/29 04:18
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#685 [向日葵]
二人は産まれてくる事を楽しみに待った。
要が仕事が休みの時は、散歩に出掛けたし、椿は産まれてくる赤ちゃんの為に手編みで帽子や靴下を作る。
小さな小さなその靴下が出来れば、そっと手に取り、微笑む。
ある日、要が訊いた。
ちょうど、5ヶ月を向かえる頃。
「椿。そういえば、性別ってもう分かるはずだよね?きいてないの?」
赤ちゃん用の玩具を見ていた椿は、こくりと頷いた。
「楽しみは、とっておくタイプですから。要さまは、気になりますか?」
:09/04/03 02:27
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#686 [向日葵]
すっかり、母親の顔になっている椿を、要は眩しそうに目を細め、見つめた。
ゆっくりとした動作で、椿を抱き締める。
「いや、僕も楽しみにしておくよ」
毎日が幸せだった。
まるで、温かい光に包まれているように。
これは、母の力?
椿はそう思わずにはいられなかった。
そして、いよいよ、臨月になった。
初出産の椿より、何故か要の方が落ち着きがなかった。
:09/04/03 02:31
:SO906i
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#687 [向日葵]
「椿、何か変だと思ったらすぐに言うんだよ?ああそれと、明智にはちゃんと色々頼んでるから心配はいらないからね。それと……」
「要さま」
クスクスと笑っている椿は、大きくなったお腹を優しく撫でながら要の手を取る。
「そんなにすぐには産まれませんから。とりあえず座りましょう」
手を引かれる要は、少々情けなくなっていた。
自分がこういう落ち着いた態度でいなくちゃいけないのに、取り乱してばかりだ。
「この子に笑われちゃいますよ」
:09/04/03 02:35
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#688 [向日葵]
複雑な顔をする要に、また椿は笑う。
「いよいよ、会えますね。どんなに、待ち望んでいたか……」
椿がお腹を撫でるのにならって、要も撫でる。
「ん……男の子のような気がする」
「そうですか」
「椿はどっちがいい?」
「どちらでも」
「欲がないなあ」
「元気に産まれてくれたら、それだけでいいんです」
「そうだね」と呟いて、要は椿の肩を抱き寄せると、頬にキスをする。
:09/04/03 02:39
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#689 [向日葵]
「どちらにしても、可愛い僕らの子供だよ。世界一、いや宇宙一可愛いに違いない」
「はい……」
それからまた、数日間、何事もなく過ごした。
要は、とにかく椿に安静にするようにと、椿にあまり仕事を手伝わせなかった。
その間、椿は、花壇の世話をしたりするのだった。
「もうすぐで、この花の蕾が開きそうですわね」
椿についているメイドが言う。
:09/04/03 02:43
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#690 [向日葵]
淡いピンク色の花。
椿が前に種を植え、育ててきたのだ。
それに、じょうろで水をやる。
「花が開く瞬間が見れたらいいんですけど……。……っ?」
椿はお腹をおさえる。
確かに今、チクンと痛みがあった。
気のせいかと思えば、またチクンとくる。
それは段々と時間差がなくなり、痛みは、次第に増していく。
「椿さま……?椿さま!大丈夫ですかっ!?」
椿は顔をしかめる。
ああ、あなた、産まれてくるのね。
:09/04/03 02:48
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#691 [向日葵]
――――――――――…………
分娩室に椿が入って、30分が経った。
椅子に座っても落ち着いていられない要は、先ほどから立ったり座ったりを繰り返していた。
そこに、椿の父が、病院へ来た。
要は一礼する。
「椿は?」
「まだです。30分ほど前に入ったままです」
「そうか……」
父も落ち着かず、近くの窓から外を眺めたり、壁によっかかったりする。
:09/04/03 02:52
:SO906i
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