ギンリョウソウ
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#64 [向日葵]
今日初めて彼女を抱き締めた。
驚く程の細さだった。
モデルをいつも相手にしているし、彼女達だって体のラインを気にしているから細く見えるし実際に細い。
でも椿はそれ以上だった。
触れた所はすぐに骨が当たる。
柔らかい感触はもちろんあるが、とにかく細かったのだ。
きっと彼女の病弱な体のせいだろう。
そう思えば体の事を悪く言ってしまっただろうかと気になる。
誰よりも病弱な事を気にしているのは彼女だろう。
なのに酷な事を言った。
:08/06/17 00:18
:SO903i
:☆☆☆
#65 [向日葵]
でも……、と要は考え直す。
何を言われてもヘラヘラしている彼女だ。
さほど気にしてもいないだろう。
そう思ってしまえば、要の頭から“悪かった”などと言う言葉は消えていくのだった。
*****************
昼近くになれば気温もあがり日差しもきつくなりはじめてきた。
なんとか倒れずにいれるのは風が少なからず吹いてくれているからだろうと椿は思う。
:08/06/17 00:21
:SO903i
:☆☆☆
#66 [向日葵]
だが彼女の体調は少しずつ崩れていってるのもまた事実だ。
周りの生徒が熱気に顔を赤くしているのに対し、椿の顔は青白くさえ見える。
「椿、大丈夫?さっきから水飲んでないみたいだけど」
心配そうに美嘉が覗き込む。
笑顔で答える事すら、そろそろ難しくなってきた。
「日傘まだかなー」
越のタオルではさすがに限度があった。
日にさらされたタオルは段々と熱を含む。
「大丈夫です……。……それより応援合戦そろそろですね……頑張って下さい」
:08/06/17 00:28
:SO903i
:☆☆☆
#67 [向日葵]
そう言うと、美嘉と越は頷いて、離れた場所で円陣を組み始める。
気合いの入った掛け声を耳にしながら椿はうつむく。
暑い……。
タオルをパタパタ揺らして熱を逃がすも上手くいかない。
水を飲めばいいのだけれど飲む元気もわかない。
こんな事では駄目だ。
椿は自分を奮い起こす。
じゃなきゃ美嘉にまで言われてしまう。
[つまんないね]
:08/06/17 00:32
:SO903i
:☆☆☆
#68 [向日葵]
ホラ、顔をあげて……。
しっかり前を向かなきゃ……。
言い聞かすも、体は言うことを聞いてくれない。
それでも椿は必死に顔を上げる。
周りの景色がスローモーションのようにゆっくり動いているように感じた。
目を何度こすってもそれは変わらない。
それでも、椅子にちゃんと座り、倒れる事なく背筋を伸ばして前を向けているならいいんだと思い、スローモーションの世界をそのままに、強さを増す日差しに堪えた。
そうしている間に、応援合戦は終わった。
:08/06/22 23:44
:SO903i
:☆☆☆
#69 [向日葵]
「つ、ばきー!次お昼休みだって!教室行こっか!」
美嘉が爽やかに汗を流して椿に微笑みかける。
しかし椿にはその笑顔さえぐにゃぐにゃにしか見えていなかった。
それでも微笑み返し、頷いて立ち上がる。
人混みの中から、越が「委員会の仕事あるから」と叫び、先に行ってしまった。
「午後からも楽しみだねっ」
「そうですね……」
やっと日陰に入れる。
椿はホッした。
:08/06/22 23:48
:SO903i
:☆☆☆
#70 [向日葵]
しかしホッとしたのもつかの間。
次の瞬間、椿の体がぐらりと傾いた。
「椿!?」
美嘉の驚いた声をはっきりと聞きながらも、椿には答える元気がもうなかった。
そして徐々に、意識は遠のいていくのだった。
********************
昼休みだと聞いた要はどこかで昼食をとろうと歩き出したところだった。
すると背後からやけにザワついた声が広がるのを耳にした。
:08/06/22 23:52
:SO903i
:☆☆☆
#71 [向日葵]
何かあったのかと振り向けば、遠く離れた所で人だかりが出来ていた。
「要さま、昼食の方はどちらで」
従者が要に問う。
「ちょっとここで待ってて。何があったか興味あるから」
野次馬精神で要はその場所へと向かう。
「……ばきっ!」
聞いた事がある声だ。
と思えば先日自分をひっぱたいてくれた奴じゃないか。
要は眉を寄せる。
:08/06/22 23:55
:SO903i
:☆☆☆
#72 [向日葵]
「椿っ!」
「椿……?」
要が呟く。
やがて見えたのは、担架に乗せられてぐったりとしている椿の姿だった。
思わず目を見開く。
椿について行こうとする美嘉に駆け寄り、その腕を掴んだ。
「アンタ……!」
「椿はどうしたんだ?」
美嘉は要をキッと睨んで腕を振りほどく。
「アンタなんかに関係な……、ちょっと……なんでアンタがそれ持ってるの……」
:08/06/22 23:59
:SO903i
:☆☆☆
#73 [向日葵]
美嘉が見つけたのは要が椿からぶんどった日傘だ。
今はたたんで彼が左手に持っている。
「だって椿は壊れたって……」
「……え?」
自分が取った事を言わなかったのかと要は驚く。
全てを察した美嘉は歯を食い縛って要の胸ぐらを掴んだ。
「なんなのアンタ!椿イジメてそんなに楽しいの!?なんでこんな事するのよ!!」
まさか彼女はこの暑い中、誰にも何も言わず堪え続けていたのか?
そう思えば要の頭は混乱した。
どうしてそこまでして……?
:08/06/23 00:05
:SO903i
:☆☆☆
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