ギンリョウソウ
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#1 [向日葵]
:08/06/03 21:00
:SO903i
:☆☆☆
#2 [向日葵]
「お嬢様、次の連休はどこにお出かけしますか?」
「やはり花の都、パリなどはいかがですか?」
「もうすぐ涼しくなりますし、ここは1つ暑い所はどうでしょう」
「じゃあ、ハワイなんて素敵じゃありません?」
勝手に騒ぎだすメイド達。
そんな彼女達に静かに微笑みかけ、着替えを手伝おうとする手を制するは、この館の主の娘だ。
「いいえ。私はどこにも行きませんわ……」
彼女の名は野々垣 椿(ノノガキ ツバキ)。
:08/06/03 21:08
:SO903i
:☆☆☆
#3 [向日葵]
椿は17歳になる高校生だ。
ファッションデザイナーとして世界的に有名な椿の父は、男手1つで椿を育てた。
父は常に椿の意見を尊重し、椿もそんな父が喜んでくれるならと父の為に最善の道を選ぶ。
そんな野々垣家にも、決まりがあった。
“17歳になれば、婚約者を見つけること”
「椿、そんな相手いるの?」
幼なじみで親友の美嘉が、学校へ行く車の中で聞いてきた。
:08/06/03 21:15
:SO903i
:☆☆☆
#4 [向日葵]
椿は微笑みながらも少し困ったのかうつ向いた。
「いると……言いますか……。立候補して下さった方がいて……」
と言いながらその人物を思い出す。
初めてあったのは椿の誕生日パーティーだった。
元々体が弱い彼女は、パーティーに疲れ、隅の方の椅子に座っていたのだった。
父は心配しながらも、来てくれた客に挨拶をしなければと椿をおいて人混みに紛れていった。
それを見送り、うつ向いてからため息をそっと吐く。
:08/06/03 21:22
:SO903i
:☆☆☆
#5 [向日葵]
[君が椿お嬢さん?]
爽やかな声だった。
ゆっくりと顔をあげれば、同い年か1つ上くらいの男性がにこりと笑って椿を見下ろしている。
青っぽい黒髪が印象的で、椿はぼんやりとしながらも立ち上がり1つ礼をした。
[初めまして。僕は葵 要(アオイ カナメ)って言います]
[野々垣 椿です。本日は足を運んで頂きありがとうございます……]
葵 要と名乗る男性はにこにこしながら椿に握手を求める。
:08/06/03 21:26
:SO903i
:☆☆☆
#6 [向日葵]
差し出された手を遠慮しがちに出せば、しっかりと手を掴まれる。
父以外の男性に手を握られるのに慣れていない椿は困りながら顔を赤らめた。
[良ければお話でもどうでしょう。君とは1度ゆっくりと話してみたいと思ったんだ]
そこで彼はどこで聞いたのか、自分が婚約者になりたいと名乗りでたのだ。
父も彼を気に入っている様子で、椿も、ならばと彼を婚約者としようと考えていたのだ。
「でも……」と椿は思う。
:08/06/03 21:32
:SO903i
:☆☆☆
#7 [向日葵]
「美嘉ちゃん……ギンリョウソウって……ご存知ですか……?」
椿の話の続きを待っていた美嘉は眉を寄せた。
「ギンリョウソウ?初めて聞いたよ」
パーティーの後の事だった。
たまたま葵 要が携帯で話している所に居あわせた椿は話を聞いてはいけないと踵(キビス)をかえそうとした。
[まるでギンリョウソウのような女の子だったよ]
葵 要は確かにそう言った。
耳慣れないその単語に、椿は思わず足を止めた。
:08/06/03 21:37
:SO903i
:☆☆☆
#8 [向日葵]
ギンリョウソウ……?
その単語を調べたくて、辞書を開いた。
意味は<山奥の陰にしか咲かない半透明の白い花>などの意味か書かれていた。
あまり良くない意味だというのは分かった。
しかし分からない。
そんな少女を何故彼は婚約者として名乗りをあげたのだろうか……。
それとも……何か別の意味が……?
――――――――――
―ギンリョウソウ―
――――――――――
:08/06/03 21:41
:SO903i
:☆☆☆
#9 [向日葵]
[第1話]
椿が通う学校はお嬢様が行くような学校ではない。
美嘉と一緒の一般の学校だ。
これは椿の希望で、父も快く許してくれた。
むしろ美嘉がいてくれた方がありがたいと喜んでくれたのだった。
「あ、美嘉、椿。おはよう」
教室に入って、にっこり笑いながら挨拶したのは友人の神田 越(カンダ エツ)だ。優しくいつも前向きな女の子だ。
「おはようございます……」
椿も微笑みかえす。
:08/06/03 21:51
:SO903i
:☆☆☆
#10 [向日葵]
しかし椿の頭の中は、葵 要の事でいっぱいだった。
葵 要。
彼はデザイナー界の期待の新人なのだ。
椿と同い年にも関わらず既に社長業を勤め、彼のデザインした服はパリコレなんかにも出される有名ブランドとなっている。
その名もAKAと言うらしい。
自分の名前がアオイ、だから逆のアカでブランド名をつけたらしい。
容姿も爽やかで、人なつっこい笑顔が人を寄せ付ける。
:08/06/03 21:58
:SO903i
:☆☆☆
#11 [向日葵]
そんな女性にも困らなさそうな彼が、「ギンリョウソウ」と称している自分を好んだのか、椿はやっぱり分からないでいた。
しかし、椿には薄々気づいている事もあったのだ。
――――――――……
「ただいま戻りました」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
迎えてくれるメイドや執事達に会釈して、椿は自室へと向かった。
ベッドに腰掛け、深呼吸をする。
なんだか熱っぽい気がしますね……。
:08/06/03 22:02
:SO903i
:☆☆☆
#12 [向日葵]
体のだるさを感じていると、ドアを誰かがノックした。
返事をすると、ノックした人物が入ってきた。
「あ、父様……。イタリアから帰ってらしたんですか……。お帰りなさいませ」
「たたいま椿。すまないがまた出かけなければならないのだ。その前に顔を見ておきたくてな」
柔らかく笑いながら、父は椿の髪を撫でる。
椿はいつも自分を大事にしてくれる父が大好きだった。
「それと、もうじき要君がくるらしいから、仲良くするんだよ」
:08/06/03 22:06
:SO903i
:☆☆☆
#13 [向日葵]
そう言われて、椿は静かに微笑んで頷いた。
そんな椿に、父は少し困った顔をした。
「椿、本当に要君が婚約者でいいのか?椿は私が彼を気に入ってるからそれでも良いと思ってるんじゃないのか?いいか椿。一生一緒にいる人は、自分の心で決めなきゃならないよ?」
真剣な顔で心配して言ってくれる父に、やはり椿は微笑んだ。
「大丈夫ですよ……父様……」
「失礼します」
凛とした声が椿の部屋に響いた。
:08/06/03 22:11
:SO903i
:☆☆☆
#14 [向日葵]
:08/06/03 22:21
:SO903i
:☆☆☆
#15 [向日葵]
↑も間違いました

×などの意味か書かれて
○などの意味が書かれて
:08/06/03 22:22
:SO903i
:☆☆☆
#16 [向日葵]
>>12×たたいま
○ただいま
しょっぱなから間違いだらけですいません


:08/06/03 22:24
:SO903i
:☆☆☆
#17 [向日葵]
入口を見れば、スーツ姿の要がいた。
要はにこっと笑うと部屋の扉を閉め、こちらに歩いてくる。
父はそんな要に向き直り笑いかける。
「やあ要君。久しぶりだね。フランスはどうだった?」
「行く度に勉強させられますよ。僕はまだまだ未熟ですね」
「そうかい。向上心があって実にいい。では、邪魔者は退散しようかな」
そう言って、要を信じきっているのか、父は2人を残して出て行ってしまった。父が出て行く際に一礼して見送った要は椿に向き直る。
:08/06/05 23:50
:SO903i
:☆☆☆
#18 [向日葵]
笑いかけられた椿はベッドから立ち上がり要に頭を下げた。
「お仕事ご苦労さまです、葵さま」
「葵さまだなんてよそよそしい。要と呼んでくれて構わないんだよ」
挨拶とでも言うように、要は椿の頬に軽くキスをした。
戸惑いながらも微笑む椿。
「まだ、旦那さまではないので……」
「でもなるのは決まってるんだ。別にいいじゃないか」
:08/06/05 23:53
:SO903i
:☆☆☆
#19 [向日葵]
そう言われても、なかなか呼べない椿だ。
やはり微笑むしか出来ない椿の額に、要は手を当てる。
「君、熱がある?」
「……さあ。分かりません。平熱は高い方なので……」
「でも休んだ方がいいね。メイドさんを呼んでこよう」
スタスタと歩き、彼は部屋を出ていった。
その姿を見ながら椿はふと思った。
恋人が体調を崩したなら、まず自分自身がそばにいるものじゃないのだろうかと。
:08/06/05 23:57
:SO903i
:☆☆☆
#20 [向日葵]
しかしすぐに、いいや、と首をふる。
心配なら尚更誰かに言って医者を呼ぶのが先か……と思い直す。
残念ながら椿は付き合った事がない。
なので当然ながら、彼女は恋人同士はどのように接するものかなんて言うのは分からないのだ。
仕方なく、寝巻きに着替える。
するとまた扉をノックされた。
入ってきたのはメイドと要だ。
「椿さま、担当医を呼びましょうか?」
「いえ、寝れば治ります。なので佐々木さんも葵さまも、うつらない内にお帰りなさいませ……」
:08/06/06 00:02
:SO903i
:☆☆☆
#21 [向日葵]
ちなみに佐々木とはメイドの名前である。
「君がそう言うなら言う事を聞こう。明日また来させてもらうよ。ではね」
爽やかな笑みを浮かべ、あっさりと要は帰ってしまった。
そんな要にメイドである佐々木は戸惑い、椿を見るが、何も気にしてないように優しく佐々木に言った。
「佐々木さんも、ね……」
「では、またお時間になりましたら、夕食とお薬を運ばせて頂きます」
メイドは頭を下げてから、出ていく際に部屋の明かりを消した。
:08/06/06 00:06
:SO903i
:☆☆☆
#22 [向日葵]
ベッドに身を沈め、天井を見つめながら椿は1人考える。
こんな、お荷物の自分を婚約者扱いしてくれるのは嬉しい。
優しくだってしてくれるし、こうやって顔も見に来てくれる。
でも彼は心配してるような言葉を椿に向けながらも、その言葉に込もっている気持ちは空っぽのような気がしてならない。
彼の目的は……?
椿は思い当たっている事がある。
だがそれが本当なのかどうか、彼女にはまだ分からないのだった。
―――――――――……
:08/06/06 00:11
:SO903i
:☆☆☆
#23 [向日葵]
「椿、今日椿ん家寄っていい?」
学校で掃除をしている時、美嘉が言った。
椿は箒で床を掃く手を止めて、頷く。
「ハイ。ちょうど今、綺麗な薔薇が咲いているので、是非美嘉ちゃんに見てもらいたいです……」
「本当?椿ん家はいつも綺麗にしてるからなー。椿ん家の庭すっごい好き!」
無邪気に笑う美嘉を見て、どこかホッとする椿。
こんな風に、美嘉はいつも椿に優しさと元気をくれる。
椿は自分にはもったいないとさえ感じる。
:08/06/06 00:16
:SO903i
:☆☆☆
#24 [向日葵]
だから美嘉が何かで悲しんだりしたら、自分が元気を与える事が出来ればいいなと考える。
「あ、越」
美嘉が越を呼び止める。
「今日椿ん家行くんだけど行かない?」
越は一瞬パッと表情を明るくさせるが、しばらく考えてから「あ!」と声をあげた。
「ごめん!今日はお米の特売あるから帰る!」
と言うなりカバンを掴んで、猛スピードで教室から出て行ってしまった。
その姿を見てから、椿と美嘉は顔を合わせる。
:08/06/07 20:11
:SO903i
:☆☆☆
#25 [向日葵]
「越ちゃんも大変ですね……」
「ある意味あの子が母親代わりみたいなとこあるからね」
最近彼女の家に変化があったのか、忙しく動き回るもか楽しそうに毎日を過ごしている。
そんな越に、椿は拍手したい気分だった。
自分は恵まれていると思えば尚更に……。
「じゃそろそろ行こっか」
・・・・・・・・・・・・・・・・
いつも通り、まっすぐ自宅へ帰る。
扉を開ければやはり大勢のメイド達が椿だけでなく美嘉にも挨拶をする。
:08/06/07 20:15
:SO903i
:☆☆☆
#26 [向日葵]
それも昔から知ってるので、美嘉はカラカラ笑って「たっだいまー」と気軽に返事をする。
「お嬢様」
1人のメイドが椿を呼ぶ。
「要さまが来てらっしゃいます。お仕事を持ち込んでらっしゃいますので、お嬢様の挨拶はそれを済んでからの方がいいかと思われたんですが、ご本人はいつでも……とおっしゃってました」
今日も来たのかと椿はぼんやり思った。
しかし仕事をしているなら別に早く挨拶に行かなくてもいいだろう。
こちらだって、美嘉がいるのだし。
:08/06/07 20:19
:SO903i
:☆☆☆
#27 [向日葵]
「わかりました……。ありがとうございます」
しばらくの間は庭にいようと思い、自室に美嘉とカバンを置きに行ってからまた外へと出た。
きちんと切り揃えられている植え込みや、青々とした芝生はいつみても美嘉に「すごい」と言わせるのであった。
「こちらです」
薔薇が咲いている場所に美嘉を案内する。
たどり着いた場所には、様々な形、色をした薔薇が無数に咲いていた。
その周りを、2人は歩く。
:08/06/07 20:23
:SO903i
:☆☆☆
#28 [向日葵]
「婚約者、本当にいたんだ。なんか信じられないや。いい人?」
「ええ、もちろんです。だって私なんかの婚約者になって下さるんですもの」
心底そう思ってるらしく、椿は笑顔で美嘉にそう告げる。
しかし美嘉は、椿をじっと見つめると、蔦が絡まったアーチの下で足を止めた。
「椿……美嘉は椿みたいな令嬢のしきたりとかは分からないけど、椿が嫌なら嫌って言っていいと思うよ。」
椿は首を傾げてから、小さく頷きほのかに微笑む。
:08/06/07 23:56
:SO903i
:☆☆☆
#29 [向日葵]
嫌だなんて思ってない。
美嘉や父のように心配してくれる人がいるのは、どれだけ有難い事かと彼女は思う。
要も悪い人ではない。
もしかしたら今日来たのだって昨日熱を出したから心配してくれたのかもしれないのだ。
そう感じれば、嫌だなんて失礼な事を言う筈がないのだ。
美嘉はまだ気にしたように椿を見るが、彼女は微笑み続けているのでそれ以上は何も言わなかった。
ただ、そんな彼女だからこそ、ひそかにしらない所で、その小さな胸を痛めているのではないかと思えば、美嘉は悲しくなったのだった。
:08/06/08 00:01
:SO903i
:☆☆☆
#30 [向日葵]
庭を歩き回り、疲れただろうと美嘉に言い、椿は休憩を取るため部屋へと戻ってきた。
メイドがお茶を運ぶと言ったが、自分ですると言い、今から取りにいく。
出来る事はなるべくしておきたいのだ。
椿1人では重たいティーセットを持てないと思い、美嘉もついてくる。
「あ、セイロンだ。美嘉これ好きなんだー」
「そうだと思って用意してもらったんです」
ほのぼのと会話しながら部屋へ戻る途中、ある部屋の扉が少しだけ開いていたのに気づく。
:08/06/08 00:06
:SO903i
:☆☆☆
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